この世に生を受けた時から、私の人生が始まった。

 

高校一年生。春。吉沢春香。

 

大変だった高校受験が終わってやっと、念願だった第一志望の高校に入学出来た。

緊張とわくわくと色々な楽しみが私の気持ちをピンク色に染めていた。

高校生になったらやりたかった事、いっぱいある。でもその中でもたった一つ。それは、彼氏を作ること。

小学生の時に好きだった人と違う中学校になってしまった。その人とは連絡を取ることもなく、三年間が過ぎた。

でもほかに好きな人も特に出来ずに私は、何事もなく中学時代を過ごした。

周りの付き合ったとか、両思いだとか片思いだとかそういう話が少し羨ましかった。

 

『春香!おはよう今日からまたよろしくね。』

中学の時からの親友、瑞希が嬉しそうに私に駆け寄ってきた。

『よろしくね。クラス一緒だといいね。』

『本当、それ!うちの中学からあんまりいないもんね。』

『そうだよね。』

『よし、行こう!』

『うん!』

私たちはクラス表が貼られている教室までドキドキしながら歩いて行った。

 

『あっ・・・春香と一緒だ!』

一年B組のクラス表を見た瞬間に瑞希が声を上げて言った。

『本当?やった!』

『これで安心だね。』

『うんうん!・・・あれ?』

私はクラス表よくよく見ると、かつて好きだった彼と同姓同名の名前を見つけた。

『・・・ねぇ・・・今野俊介って・・・。』

『えっ・・・?今野?今野って小学生の時一緒だった?』

『同姓同名の別人かな・・・。』

私はドキドキしながら言った。

えっ・・・まさか、同じ高校で同じクラスになる確率なんて・・・そんな事ってあるの?

 

『とりあえず教室入ろうか?』

『うん・・・。』

私はピカピカの制服で教室に入った。

明るい日差しと、爽やかな風が教室を包み込んでいた。

私は黒板に書いてある席に着くと、辺りを見渡した。

今野・・・今野本当に今野かな・・・。

そして次の瞬間、今野俊介本人が教室にガラッと入ってきた。

私は息を飲んで、その瞬間、すべての時が止まったように感じた。

今野だ・・・。あの今野だ・・・。こんな偶然あるんだ・・・。

どうしよう・・・。嬉しい。嬉しすぎる。すっかり見た目は大人になったけど、今野だった。ずっと隠していたけど・・・誰にも言えなかったけど・・・好きだった人。

今野は私に気が付くことなく、席に着くと、カバンをガザガザと漁っていた。

その背中をすぐに愛おしく思った。そして、なぜか涙が零れ落ちてきた。

あぁ・・・私、ずっと今野の事、好きだったんだ。だから今、こんなにも嬉しんだ。嬉しくて涙が込み上げてきたんだ・・・。

自分の気持ちを確認すると、私は涙を拭いて前を見た。

キラキラ輝くこの教室で・・・今日からまた今野を想う事が出来る。

こんな幸せってある?もう・・・本当に幸運すぎる自分が嬉しくて、また涙が込み上げてきた。この恋・・・絶対大切にしよう。どうなってもきっとこの運命を後悔する事はないだろうから・・・。      

 

 終わり

君と二回目のデートをした時の事、君はまだ覚えているかな・・・。

君の地元で待ち合わせをしたよね。君は大学生で私は高校生。

二人はその辺の神社で肩を並べて座って、お喋りをしたよね。

 

「ねぇ・・・夢とかある?」

「夢?」

「うん。私の夢はね、子供を二人授かって、幸せな家庭を作る事なんだ。」

私はニコニコと言った。

「素敵な夢だね。俺もね、子供は二人欲しい。」

「一緒だ。」

「出来れば、男の子と女の子一人ずつ。」

「いいね。私もそれがいいな。」

「可愛いだろうね。お互いに似ていて、四人で色々な所に旅行に行ったりして、きっと楽しいよね。」

「最高だね。」

私はストレートティーを飲みながら言った。神社は夕暮れで心地よい風が吹いていた。

ただの神社なのに、君といるだけで楽しい。

「もう少し暗くなったら、連れて行きたい所があるんだけど。」

彼は嬉しそうに言った。

「どこだろう。楽しみ。」

「うん。楽しみにしていて。てかさ、夏の夕方っていいよな。」

「ねぇ!風が気持ちいい。今、幸せ。」

私は彼の方を向いて言った。

 

 

合コンで出会って、すぐに意気投合して、メールを交換して二週間。君が誘ってくれたデート、飛び跳ね上がりたいくらい嬉しかった。

まだ付き合っているわけじゃないけど・・・二人の間に流れる甘い空気・・・。きっとそのうち、私達は一緒になれる。そんな気がしていた。

 

「そろそろ行こうか。」

「うん。」

私達は自転車にまたがって、神社を後にした。彼が連れて行きたい場所ってどこだろう。

 

「ここの坂、ちょっときついけど、頑張って!」

「うん!」

自転車で大きい坂を一生懸命に漕いだ。もうすっかり夜だけど、汗が吹き出しそうだった。

 

「もう少し!」

「うん!」

はぁはぁ言いながら、私は必死に自転車を漕いだ。

初めてくる場所・・・。どこに行くんだろう。

 

坂を上り切ると、そこには、普通の住宅街が広がっていた。

「良く頑張りました!」

彼は笑いながらそう言うと、平坦な道をまた自転車で走り出した。

 

「ここ?」

彼が自転車を止めると、そこはただの公園だった。

「うん。そう。さぁ行くよ。」

彼はそう言うと、自転車から降りて、私の手を引いた。

 

「うわぁ・・・。」

高台のその公園からは、都会の夜景が一望できた。

「綺麗・・・。」

「綺麗だよね。俺の地元の自慢。」

彼は笑いながら言った。

大宮も新都心もキラキラ輝いていて、宝石みたいだった。遠くに東京の夜景さえも見えそうだった。

「俺、告白するならここって決めていたんだ。」

「・・・えっ?」

「まだ出会ったばかりだけど、会った時から好きだった。俺と付き合って下さい。」

彼は照れ笑いしながら言った。

私はその言葉が嬉しくて、泣きそうになった。

「私も・・・私も会った時から好きだった。これからお願いします。」

私は潤んだ瞳で言った。

すると彼は、

「やったぁ!!!!!」と叫んで、両手を空に上げた。

その様子が・・・まるで子供みたいで可愛くて、私は思わず笑ってしまった。

 

キラキラ輝く夜景に包まれて・・・彼のお気に入りの場所で両想いになった。出会ったばかりの二人のこれからは、まだ分からない。でもきっと・・・素敵な未来が待っているような、そんな気がする。だって、二人の夢には重なる所があったから。

 

 

終わり

キラキラ輝く太陽に照らされて、私は四階の教室から空を眺めた。

空には入道雲がもくもくと、輝かしいほどの水色の空に浮かんでいた。

あぁ・・・夏なんだな。と一人で思っていた。

 

 

高校生になって三か月。学校にもクラスにも慣れて、楽しい学生生活を送っていた私に、先月、思いもよらないサプライズが起きた。

そう・・・それは、中学生の時からずっと片思いしてきた彼に告白された事。

 

 

あれは、まだ新緑がキラキラと輝く五月の事。私は友達になったばかりの夏美と駅に向かって歩いていた。

するとそこに、中学時代から一緒だった幸助が私に駆け寄ってきた。

 

『東、今ちょっとだけ話せる?』

私は夏美とお茶をして帰る約束をしていたので、一瞬戸惑ったが、ずっと好きだった幸助からの呼び止め。私は夏美を見た。

『あっ・・・私は全然大丈夫!先に帰るね。百合、また明日ね。』

夏美は空気を読んでそう言うと、足早に帰っていった。

『ごめんな。突然。』

幸助は申し訳なさそうにそう言うと、私は首を横に振って、二人で歩き出した。

『どうしたの?』

私はドキドキしながら言った。

『うん。単刀直入に言うね。中学の時からずっと好きだった。高校に入ってもずっと東の事、探していた。俺と付き合って下さい。』

『幸助・・・。』

私は幸助の気持ちが嬉しくて、嬉しくて、今にも泣きだしそうだった。

そう・・中学生の時、野球部だった幸助をずっと見ていた。頑張っている所も、負けて泣いている所も全部・・・。ずっと好きだった。

『どう・・かな?突然だけど・・・。』

『うん・・・。実はね・・・。』

私は顔を上げて言った。

『私も幸助がずっと好きだった。』

『えっ?えっ・・・?マジで?』

『マジです・・・。』

『うわぁ・・・。ちょっと待って、信じられない。両想いとか・・・夢かよ。』

幸助は思った事、全部言葉に出して言った。その様子が嬉しくて、私は肩で笑ってしまった。

『これからよろしくお願いします。』

『うわぁ・・・俺こそ、よろしくお願いします。』

二人はお互いに向かい合って、お辞儀をした。人生初めての両想い。人生初めての彼氏。それが幸助と私の始まりだった。

 

 

そして今日は幸助と帰る日。お互いに委員会があるから、学校を出るのが、少し遅くなってしまった。

『幸助!』

『おう!行くか!』

『うん!』

私と幸助は堂々と校門から手をつなぎ、ゆっくりと歩き出した。

中学時代がお互いをよく知っているので、そんなに緊張する事もない。会話もたくさんあって、いつもおしゃべりに花を咲かせていた。

 

 

『なんかさ、今日の空、めっちゃ綺麗じゃなかった?』

私は昼間見た景色を思い出して言った。

『俺も見た。夏って感じだよな。』

『今も綺麗・・・。ほら、見てだんだん空がオレンジ色になっている。』

『本当だ。でも上の方はまだ青くてグラデーションが綺麗だな。』

『風も気持ちいいね。夏っていいね。』

私は言った。

『・・・周りも誰もいないし・・・。』

『えっ?』

『・・・キスってこんなシュチュエーションでするのかな?』

幸助は言った。

その言葉に私は心臓がドキドキして破裂しそうになった。

だって・・・そう・・・まだ二人はキスをした事がなかったから。

『・・・いいよ?』

私はドキドキしながら言った。

だって、いつかはするでしょ?そしたら幸助の言う通り・・・この綺麗なオレンジ色の空の下で・・・君と。

『うわぁ・・・マジか。めっちゃ緊張する。・・・じゃあ目つぶって?』

『・・・うん。』

私は言われるまま目を閉じると、幸助に身を任せた。

幸助はそっと肩を掴んで、顔を近づけて、私は固くなったその体で、幸助と初めてのキスをした。

『うわぁ・・・やばい。マジ照れる。』

顔を離すと幸助は嬉しそうにそう言った。

そして私も嬉しさを通り過ぎて、喜びで顔がニヤニヤして止まらなかった。

 

 

初めてのキス・・・。この綺麗なオレンジ色の夏空の下で君と・・・。

嬉しくて、切ないほどに愛おしくて、幸せを感じた今日の日を・・・私はきっと一生忘れないだろう。   

 

終わり