「外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法」という法律があります。同法でまず理解しておかなければならないのは、外国弁護士と外国法事務弁護士の違いです。同法は、外国弁護士を「外国(法務省令で定める連邦国家にあっては、その連邦国家の州、属地その他の構成単位で法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)において法律事務を行うことを職務とするもので弁護士に相当するものをいう。」と定義します(同法2条1号)。一方、外国法事務弁護士を「第七条の規定による承認(法務大臣の承認)を受け、かつ第二十四条の規定による名簿(日本弁護士連合会に備える外国法事務弁護士名簿)への登載を受けた者をいう。」と定義します(同法2条3号)。ですから、外国弁護士が日本国内で活動するには、法務大臣の承認を得て、日本弁護士連合会の外国法事務弁護士名簿に登載されなければなりません。
外国法事務弁護士は、原資格国法に関する法律事務を行うことを職務とします(同法3条)。また、特に注目すべき点として、外国弁護士の原資格国において日本の弁護士資格を有する者に対して法律上同等の取扱いが行われていること(同法10条3項1号)及び原資格国において外国弁護士として3年以上の実務経験があることが挙げられています。これは国際条約及び国際協定の相互主義からの当然の帰結であると考えられます。
ところで、日本における外国法事務弁護士制度は周知されていますが、相互主義の相手国における外国法事務弁護士制度はどのように運用されているでしょうか。典型例として米国ニューヨーク州の外国法事務弁護士制度を検討してみましょう。ニューヨーク州では、外国法事務弁護士をForeign Legal Consultantと呼んでいます。その資格要件は以下の通りです。
§ 521.1 General regulation as to licensing(資格付与に関する一般規則).
(a) In its discretion the Appellate Division of the Supreme Court, pursuant to subdivision 6 of section 53 of the Judiciary Law, may license to practice as a legal consultant, without examination, an applicant who(裁判所法53節6条に従い、最高裁判所上訴部の裁量に基づき、以下の要件を充たす志願者は、無試験で外国法事務弁護士として活動する資格を付与され得る):
(1) is a member in good standing of a recognized legal profession in a foreign country, the members of which are admitted to practice as attorneys or counselors at law or the equivalent and are subject to effective regulation and discipline by a duly constituted professional body or a public authority(外国で公認法律職としての適正な立場にある会員、当該会員は事務弁護士又は法廷弁護士若しくはそれらと同等の者として実務に携わることが認められ、適正に設立された職業団体又は公企業体による有効な規制又は懲戒に服していること);
(2) for at least three of the five years immediately preceding his or her application, has been a member in good standing of such legal profession and has actually been engaged in the practice of law in such foreign country or elsewhere substantially involving or relating to the rendering of advice or the provision of legal services concerning the law of such foreign country(志願者が志願する直前の5年間中最低3年間は当該法律職として適正な立場の会員であり続け、当該外国法に関する助言又は法律業務の提供に実質的に関係又は関与しながら、当該外国又はその他の場所で法律実務に実際に従事してきたこと);
(3) possesses the good moral character and general fitness requisite for a member of the bar of this State(ニューヨーク州の法曹会員に必須とされる道徳的に良好な人格及び一般的適性を保持していること);
(4) is over 26 years of age(26歳以上であること); and
(5) intends to practice as a legal consultant in this State and to maintain an office in this State for that purpose(ニューヨーク州で外国法事務弁護士としての実務に携わり、当該目的のためにニューヨーク州に事務所を維持する意図を有すること).
(b) In considering whether to license an applicant to practice as a legal consultant, the Appellate Division may in its discretion take into account whether a member of the bar of this State would have a reasonable and practical opportunity to establish an office for the giving of legal advice to clients in the applicant's country of admission(志願者に外国法事務弁護士としての実務に携わるための資格を付与するかどうかを考慮するに際し、上訴院は、その裁量において、ニューヨーク州法曹が当該志願者の原資格国において顧客に法律的助言を与えるために事務所を設立する合理的かつ実際的な機会を有してきたかどうかを考慮することができる). Any member of the bar who is seeking or has sought to establish an office in that country may request the court to consider the matter, or the Appellate Division may do so sua sponte(当該原資格国に事務所を設立することを求めたことがある、又は現に求めているニューヨーク州法曹会員は、裁判所に当該参入問題を考慮するように要請することができ、又は上訴院は職権で当該参入問題を考慮することができる)(American Bar Association http://www.abanet.org/cpr/mjp/home.html参照)。
まず、(b)は相互主義について規定しており、相手国が同等の資格を自国法曹に認めている場合に限り、相手国法曹にも資格を認めることを規定しています。
問題は(a)の(1)が、“attorneys or counselors at law or the equivalent”「事務弁護士又は法廷弁護士若しくはそれらと同等の者」と規定していることです。日本でいえば、当然に弁護士は含まれますが、それだけではありません。Attorneyには“a person who is given the power to act on behalf of another in business or legal matters”(実務又は法律問題において他人のために活動する権限を付与されている者)という定義があります。ですから、日本でいえば、弁護士だけではなく、弁理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士及び税理士等も含まれる場合があります。実際、米国では、lawyerの定義に含まれる業務には日本では法律業務に従事する他士業も包括的に含むと解されます。また、“the equivalent”も有資格者として規定されていますから、実際には、弁理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士及び税理士等もニューヨーク州のForeign Legal Consultant(外国法事務弁護士)の志願者たり得るものと解されます。過去に行政書士でワシントンDCのForeign Legal Consultant(外国法事務弁護士)として登録した前例もあります。また、法2条1号も、外国弁護士を「外国・・・において法律事務を行うことを職務とするもので弁護士に相当するものをいう。」と定義して、その可能性を示唆しています