犯罪により被害を受けた場合には、通常、警察に被害届を提出したり告訴したりします。しかしながら、相手が明らかに精神障害者であった場合、どのような対応を採ることが考えられるでしょうか?精神保健福祉法は、警察官(同法24条)、検察官(同法25条)、保護観察所長(同法25条の2)及び矯正施設長(同26条)に保健所長経由で都道府県知事に通報する義務を課しています。
 
では、一般国民に関してはどうでしょうか?精神保健福祉法20条は「精神障害者については,その後見人,配偶者,親権を行う者及び扶養義務者が保護者となる」及び同法22条1項は「保護者は,精神障害者に治療を受けさせるとともに,精神障害者が自身を傷つけ又は他人に害を及ぼさないように監督し,かつ,精神障害者の財産上の利益を保護しなければならない」と規定しますから、まず、その方の保護者に状況を知らせ、精神科に入院させるなどの必要な措置を採らせる必要があると考えます。

次に、同法23条は「(1項)精神障害者又はその疑いのある者を知った者は,誰でも,その者について指定医の診察及び必要な保護を都道府県知事に申請することができる。(2項)前項の申請をするには,左の事項を記載した申請書をもよりの保健所長を経て都道府県知事に提出しなければならない。一 申請者の住所,氏名及び生年月日 二 本人の現在場所,居住地,氏名,性別及び生年月日 三 症状の概要 四 現に本人の保護の任に当たっている者があるときはその者の住所及び氏名」と規定していますから、誰でも書面をもって最寄りの保健所経由(書面は保健所長宛)で都道府県知事に通報することができます。

この場合、都道府県知事は「調査の上必要があると認めるときは,その指定する指定医をして診察」させなければならず(同法27条1項)、その結果,「その診察を受けた者が精神障害者であり,且つ,医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認めたときは,その者を国若しくは都道府県の設置した精神病院又は指定病院に入院」させることができます(同法29条1項)。この27条及び29条は義務規定であり、当該事実が存在することが明らかな場合には、都道府県知事は入院措置を採る義務を負います(警察官、検察官、保護観察施設長及び矯正施設長による通報の場合も同様の手続に付せられる)。