前回の記事ではヤンガードリアス期に、巨大彗星が分裂した
残骸が立て続けに地球に衝突し寒冷化をもたらしたとする、
「ヤンガードリアス衝突仮説」について説明しました。
まずは、その残骸である彗星デブリの中核をなすと言われる、
エンケ彗星の軌道について分析していきたいと思います。
エンケ彗星は、現在もおうし座流星群の母彗星という地位に
あり、公転周期は3.3年という比較的短周期で木星軌道よりも
内側から、水星軌道の少し内側までの楕円軌道を回っています。
なお、『pnr_RYUSEIくん』には、エンケ彗星の軌道要素を
①軌道要素元期=2021年7月5日UT
(天文年鑑2021より)
②軌道半長径=2.218032天文単位
(「IAUNASA」より)
③軌道離心率=0.848662
④近日点通過日=2020年6月26.2296日
(JD=2459026.7296)
➄軌道傾斜角=11.7964°
⑥近日点引数=186.6033
⑦昇交点黄経=334.5167°
でインプットしています。
上の図は、エンケ彗星の軌道を北側から見た絵です。
ただし、『pnr_RYUSEIくん』で計算した軌道図は、各天体の軌
道面を同一平面上に描いています。実際は地球軌道面に対
して傾斜角がありますので、上記➄に書いてますように、10°
以上地球軌道面から傾いています。
それで、イメージし易いように地球軌道より北側にある軌道を
ピンク色で、南側の軌道を水色で表示しています。
この軌道は結構特徴的で、太陽に向かう側(図では上側)が上
がって太陽を回った後に下側に降りていく形になっています。
人間で言えば、右肩が上がって左肩が下がっているようなイメ
ージですね。
ですから、当然地球軌道(青色)とは交差することはありません。
試しにエンケ彗星が地球軌道に接近する2つのポイントで、
地球軌道面からどのくらい離れているのか計算してみましょう。
まず、2023年9月4日の予想です。下の図の「A」ポイントです。
地球軌道面から垂直に北側へ約2860万km離れています。
(地球から月までの距離の約75倍の距離)
そして次は、2023年11月29日の予想です。
下の図の「B」ポイントです。
地球軌道面から垂直に南側へ約2580万km離れています。
(地球から月までの距離の約68倍の距離)
ではヤンガードリアス期に、巨大彗星が爆発、分裂した残骸
がなぜ太古の時代に地球に衝突し、これからも脅威となるの
でしょうか?
その疑問に対する答えについては、次回の「彗星デブリの
軌道について」でシミュレーションしていく予定です。
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