今日は長年、生活を共にした愛車VWゴルフVR6を売却する日だ。思えば、1997年9月アメリカから帰国してから、この日まで毎日通勤に使った車だ。VWを乗り継いで3台目になるが、この車はなかでも特別スポーティバージョン。エンジンは2.8リットルのV6エンジンで、加速では負けたことがない。燃費の悪さでも負けないが。

ボストン行きのため、売らざるを得なくなった。当時300万円以上を払った車は、6年落ちともなると、ほとんど値が無い。VW専門店をいくつか回った。ある店では引き取らないとさえ言われた。そんな中、以外にも家の近所にVW専門店があり、もっとも高い値段を出した。値段は40万円。若い経営者だが、ゴルフでも限定車やVR6などを得意とする店だ。

この車と共に過ごした時間は、ひょっとしたら家族よりも長いかも知れない。毎日の往復で1時間半。テニスクラブもゴルフ場にもこの車で出かけた。車の性能では決して期待を裏切らなかった。高速に乗る度にその加速性と静かに回る6気筒のスムーズさには舌を巻いた。パワーウィンドウが壊れるなど若干のトラブルはあったが、道路で立ち往生することはただの一度もなかった。(日本車では当たり前だが、輸入車では重要。)とても幸せな日々を一緒に過ごした。メンテナンスにお金は惜しまず、いつも最高の状態にしてあげた。可愛がってもらえるオーナーに引き取ってもらえるのを願うのみだ。
会社の内線電話をとるとボスのボスのボスからだった。すぐに部屋に来て欲しいという。何か悪いことをしたっけ。様々な憶測が頭を駆け巡る。12月からアメリカ・サンノゼに行くことになっている。そのことか?

秘書に様子を伺うと、中に入れとのこと。改まって二人きりで面と向かうととても緊張する。個室に呼ばれるのは大抵飛ばされる時…。ボストンでMBAをとるプログラムがあるのを知っているかと聞かれた。ピッツバーグに滞在していた時から、そのプログラムがあるのは知っていた。ボストンの方が都会でうらやましかったからだ。そのプログラムに行ってから、サンノゼに行って欲しいとのこと。願っても無い話だ。内心「やったー!」状態。ピッツバーグに2年も研究留学させてもらっていたので、MBAの方への希望は遠慮していたのに。

そこからが、大変。1 Week Noticeとまでは行かないにしろ、プログラムはゴールデン休暇明けから日本で始まる。ほとんど缶詰状態とのこと。ゴールデン休暇まで2週間かそこら。仕事の引継ぎは?仕事いっぱい取ってきたばかりだけど。MBA取得と言えば、忙しくて寝る暇が無いの代名詞。日本の後は中国、韓国に渡り、ボストンへ。夏にはLAの学会に投稿したばかりなのに。これらの心配とボストンへの期待が交錯し、うそのような本当の話が始まった。