昨日に続き「江戸川乱歩美女シリーズ」のこと。

シリーズで一番好きな話は第七作『宝石の美女』（江戸川乱歩『白髪鬼』より）。

ドラマは白髪の男の復讐劇。
海辺（伊豆か）の街の邸宅に住む若い妻を持つ富豪・大牟田敏清だったが、後援していた川村画家が妻ルリ子と密通し岩から転落死させられた。

入棺のうえ西洋風の墓所（火葬ではなく遺体を棺に容れ鉄扉付きの山の横穴に納める）に葬られたが棺内で蘇生した。偶然墓所に盗賊が隠していた宝石を持ち出し復讐を企むが、閉じ込められ棺内で再死する恐怖で頭髪が全て真白になっており、別人・里見となり宝石を換金して、復讐をする。
完全犯罪完遂と喜んだ刹那、明智小五郎に謎解きされ包囲され自殺する。

で今般原作『江戸川乱歩の白髪鬼』を読んでみた。青空文庫にありますが横書きでスマホで読みにくいので電子書籍をヨドバシのポイントで買って。

明智ものではないので探偵は出ない。
舞台は昭和初期九州西岸のS市。
大牟田敏清（偽りの身分里見も）、瑠璃子、川村それに住田医学士が出てくる。

大牟田はさる殿様の家系で子爵。親は早く死んだが金銭面で何不自由なく育ち東京の大学に進みそこで美術学校生の川村と昵懇になり共に帰郷。

瑠璃子夫人と出会い結婚し2年後チフスに罹患。快癒するのだが夫人が皮膚病になり半年別荘で療養しこれも治るがその間大牟田と面会しなかった。

3人で渓谷散策に出るが川村に細工された岩に乗り転落死する。墓所に葬られるが棺内で蘇生するのは同じだがより多くの恐怖を体験する。

墓所に宝石財貨が隠してあったのは同じで、盗賊は中国の海賊。換金と身分を偽るため一度渡った上海でこの盗賊と邂逅し曲がりなりにも財宝利用の諾を得る。

帰国後もう一つの殺人があった事も知り、周到に計画し奸夫と毒婦を徐々に恐怖に陥れ復讐を完遂する。

小説から建てられたドラマを見ると、墓所内での繰り返し襲われる恐怖と希望の波は描ききれていない。当時の土曜ワイド劇場の１時間半枠でなく2時間ならもっと詳細になったかもしれない。
時代も昭和初期から昭和53年に変わっていたり、ラストに瑠璃子が墓所に閉じ込められ発狂した様がまた違う（トラマは石ころや貝殻が宝石に見え、小説では不義の子の遺骸を抱いて子守唄を歌う）のは興味深い。

先に見たドラマの俳優の特に田村高廣さん金沢碧さんの怪演の印象が強く、小説を読んでいるとき浮かぶ人物像もこれらの人になっていまうが違和感がなく、夜中と今朝で読み通してしまった。

あー面白かった。

なお江戸川乱歩の白髪鬼には更に原作がある。

大元はイギリスのマリー・コレリの（Vendetta!; or, The Story of One Forgotten, 1886）を、明治26年に黒岩涙香の翻訳で新聞連載されたという。
白髪鬼（Wikipediaによる）

涙香の文庫版の国会図書館蔵がKindleで110円で読めるので買ってみたが、360ページ近くあり、当時の文語の紙コピーPDF化のような詠み辛さがあり読破には時間かかりそう。舞台はイタリアである模様。

とりあえず、また録画の天知茂トラマを観た。

いやー情報量豊富で面白い面白い

さて美女シリーズでこの『宝石の美女』と先週放送の『鏡地獄の美女』の2度『美女』を演じられた金沢碧さんについて映像コンテンツ権利処理機構が『（映像権利者としての）連絡先を探している』と広告を出しているのを知りました。
うわあああ

改めて白髪鬼を観る