尼崎の脱線事故。テレビで連日報道されています。あんな人達に命をあずけていたなんて、ご遺族の方々はさぞたまらない気持ちだろうと思います。うちは店内でテレビを流していますので、ニュースが流れている時はつい見入ってしまいます。ほろほろなってしまいます。そんな時、あるお客さんがこう言いました。
「死んだ人はまだいいよ。重いケガを負った人は、これからの人生闘って行かなきゃいけないからさ」
それは違うとも、そうですねとも、僕は言えませんでした。一理あるから。例えば自分があの電車に乗り合わせていて、もしもう歩けない体になってしまったとしたら、あるいはいっそ死んだ方がよかったと思うだろうか?思うかもしれないなとも考えてしまいました。そんな時、半年ほど前に読んだ一冊の本を思い出したのです。
壮絶なクラッシュに巻き込まれて生死の境をさまよいながら、それでも第一線への復帰を目指してケガと闘い、そして本当に奇跡の復活を果たした不屈の男。太田哲也さんのノンフィクションです。これを読んだ時、すごい男だ、強い男だと本当に思ったし、なかなか真似できないことだよなと、涙もしましたが、同時に、支える人がいたからこそだとも感じました。そして、太田さんに拍手を惜しまないと同時に、涙すべきは彼をサポートした家族や友人、支援者の愛情だなと感じ入りました。
JR西日本は今後さまざまな面で糾弾されるでしょうが、九死に一生を得た負傷者の方々には、ひとつしかない命を奪われなくてすんだ幸運を思って欲しいと願います。もちろんケガの程度は人それぞれだし個々人の環境も違うでしょうが、太田哲也さんの話は、きっと勇気と希望を与えてくれると思います。
平穏無事に生きている僕なんかは恥ずかしさでいっぱいになりましたから。
著者: 太田 哲也
タイトル: クラッシュ―絶望を希望に変える瞬間