「洗濯物、取り込まないと。」
タシュが言う。
オレも手伝わないと。
雨が降る。
「今日は散歩は中止ですね。」
タシュが言う。
カタメたちが、ちょっと悲しそうだ。
雨が降る。
「雨が降ると、何だか人恋しくなりません?」
タシュが言う。
思ってもないくせに。
オレは、雨が好きだ。
だってタシュが、たくさんオレに話しかけてくれるから。
オレは、雨が嫌いだ。
だってタシュが、雨のことばかり気にするから。
雨が降る。
「もう少し、こっちにおいで。」
タシュが言う。
オレはタシュのほうに寄る。
タシュは雨が好きかな、それとも嫌いかな。
オレはどっちでもないや。
タシュが好きなら好きだし、嫌いなら嫌い。
だから今はどっちでもない。
だってタシュに聞いても、絶対はぐらかすもん。
「ネイラン、どうしてあなたはそうやって、」
「物事を1つから見るんですか、だろ。」
もうそんなのは、とっくに聞き飽きた。
それより、タシュの言葉がもっと欲しいよ。
タシュに手を握って欲しいよ。
あ、そっか。
雨は人恋しくなるんだった。
だからオレはこんなにもイライラするんだ。
だってタシュは、オレみたいに人恋しくなってくれないから。
オレはもうすぐ死ぬんだ。
別に死ぬわけじゃないけど。
でも、やっぱり死ぬのと一緒だ。
だってオレじゃなくなるから。
雨の音がうるさいなぁ。
やっぱりオレは、雨が嫌いかもしれない。
手が、少し暖かくなる。
タシュの体温。
「手をつなぎましょう。
人恋しいから。」
嘘だ、タシュはまた、オレの心を読んだだけだ。
「雨は嫌いじゃありませんよ。
あなたの憂鬱そうな顔は、雨が降ったときにしか見られませんから。」
そっか。
じゃあ、雨がやまなければ良いなぁ。
だってタシュが望むんだもん。
タシュが笑う。
「もうすぐ、あなたとナリーさんは1つになれますよ。」
うん、嬉しいな。
オレは女の中ではナリーが1番好きだけど、男の中ではタシュが1番好きだ。
タシュも1つになってくれたら良いのになぁ。
だけど、もう抱きしめて貰えないのは嫌だなぁ。
ナリーとも、もう抱きしめあえないのか。
やっぱりそれは、ちょっと嫌だなぁ。
だけど、それはナリーが望んだことだし、タシュが望んだことだ。
オレは2人が好きだから、逆らっちゃいけないんだ。
雨が降る。
「好きですよ、ネイラン。」
タシュが言う。
オレはちょっと、悲しくなった。
ただひたすら、雨のように流されてしまいたい。