居眠りのエピソードには事欠かない。


若い頃は寝不足で、暇があれば眠っていた。


それが近頃では、寝不足でもないのに眠ってしまう。


食事中に眠っていて、手に持ったどんぶりを床に落として目が覚めるから始末が悪い。


その後始末に無駄な時間を使ったり、食べるご飯が足りなくなって、新しく炊き直す面倒な事もある。


それよりも、マグカップのコーヒーを落としたら大変だ。


割れたカップの片付けや、床に広がったコーヒーの後始末である。


居眠りも、それ位の後始末だったら何でもない。


一番用心すべきなのは、運転中に眠ることだ。


ここノースカロライナは道幅もは広く、道の横が芝生になっているので道から外れても助かっているが、これが都会、それもカリフォルニアだったら事故になって人に迷惑をかけるかもしれない。


私の目覚まし方法がある。


容赦なく頬を引っ叩く。


そうしても数秒で眠くなる。


車を停めて苦いコーヒーを飲む。


そうして何とか生き延びている。




子どもの頃は授業中に眠って、先生から頭をぶん殴られたものだ。


その中でも最悪だったのは、高次先生だった。


英語の先生で、教壇だけ教えるのではなく通路を歩きながら授業をする。


眠ったら殴られるので、必死で目を開けているが眠ってしまう。


田舎には、目突っ張りというセキショウの花があって、それで両瞼を突っ張って起きているのだが、目は開いていても、その目は完全に死んでいて、とろんとしている。


目を開けているから殴らなくても良さそうだが、先生は容赦ない。


その時の台詞が決まっているのだが、気付いたときには、もう遅い。


頭の真ん中にゲンコツをくらっている。


元々頭が悪いのに、そうして何度も殴られて余計に頭が悪くなった様な気がする。


その台詞だが、


「魂は、いずこの空を飛びよらん、柳田」

と、名前を呼ばれたときは、ゲンコツが落ちている。


「あいたぁ」


と、言って頭をさする姿がおかしいらしい。


それほど痛い目に遭えば、同級生は二度と眠らないのに、私は厚かましく眠って叩かれる。


頭も自分から頭突きをする時は痛くないのだが、ぼうっとしていて殴られると、みしっと頭の中にめり込んできて痛い。


河野先生は若い音楽の先生だ。


中学生の小僧になめられたくないので、いつも気合いを入れて殴ってくる。


だがゲンコツだと自分の手が痛いので、机のふたで殴ってくる。


その机のふたが、真っ二つに割れる。


そういう時は痛くない。


先生も呆れて、


「この石頭」

と、頭のせいにする。


少なくとも、四枚の机のふたが私の頭で割れた。

             つづく