昔むかし、あるところに

可愛い可愛い女の子が森の中に住んでいました。
彼女のつくるケーキには特別な魔法がかけられていて
それを食べた
人びとは
とても幸せになったそうです。


ある日、森の女の子の前に
1人のよぼよぼのおばあちゃんがやってきました

おばあちゃん、おばあちゃん…こんな場所にいたら危ないよ
森はね、狼や、熊が出ておばあちゃんみたいな弱い人間を食べちゃうんだって…だから早く街にお帰り。


女の子はおばあちゃんに話しかけました。


ありがとう、でも私ね…ある人を待っているんだ。この森の…その奥に。


待ってる人?

知らないかい?

どんな人?


歌がとっても上手なんだ…
どんな歌でも彼の声にかかれば。それはもう…


おばあちゃんはうっとりと語り始めました。



彼は人気者でね、
とても優しい人間でね
私と一緒にいると…




おばあちゃんの思い出が
蘇ります。



そうだ、おばあちゃん…良いものあげる


差し出したのはりんごのケーキ


あら、美味しそう。


おばあちゃん、これ食べて、元気になるよ…


じゃあ、いただこうかしら…その先の湖で日向ぼっこしながら。

そうして…私は木の実を拾いに行くから。

ありがとう。可愛い子。



おばあちゃんはお礼を言って湖の方へ歩いていきました。








よっこいしょ…ねぇ、綺麗だと思わない?


湖のある場所に腰掛けるおばあちゃん


アナタがここで歌ってくれた…
私は幸せだった…
ねぇ、いつまで私はここで待っていればいいの?


おばあちゃんは女の子から貰ったりんごケーキを一口食べる。すると、隣には誰も座っていなかったはずなのに。綺麗な男の人が現れました。


あぁ、アダム…逢いたかった


おばあちゃんは手を伸ばします。


アダムと言う男の人は、おばあちゃんを見ると微笑み、おばあちゃんの頬を撫でました。


アダム…アダム…寂しかった
もうひとりぼっちにしないでおくれ。


アダムはにっこりと笑い、おばあちゃんの耳元でそっと何かを囁くと
おばあちゃんはゆっくり微笑みアダムに寄り添うように眠りました。









数ヶ月後
森の中で発見されたおばあちゃんの遺体は
微笑み、幸せそうだったという。
埋葬された場所は、発見された場所…アダムという名前が刻まれた墓石の隣
寄り添うように
仲良く並んでいました。