私たちがここのアパートメントに引越して以来、郵便屋さんはずっと同じ人でした。

フィリピーノで年齢不詳の男性。

多分、40代の初めではないかと思うのですが・・・。


気さくなうえに天然な人で、会えば必ず二言、三言交わすのですが、その内容がいつも突拍子もないことなので、用心して耳を傾けないと、一体今、何が話題になっているのか?と分からなくなります。

ある意味、油断ならない相手です。


でも、顔見知りになっていると何かと便利で、私の友人は自分が旅行する間、この郵便屋さんに頼んで郵便物を預かってもらっていました。

本当なら、郵便局に行って、所定の用紙に記入して・・・という手続きを踏まなくてはいけないのに、彼に口頭で頼んでおいて大丈夫だったそう。

彼女はお土産を買って来て、郵便屋さんに渡すと、彼はすごく嬉しそうだった、と言っていました。


私もちょっとした留守中に小包が来たようで、不在票が入っていました。

再配達を希望したものの、その時も留守だったら今度は郵便局まで取りに行かなくてはなりません。

「面倒だなあ」と思っているところに、例の郵便屋さんに会ったので事情を話すと、「じゃあ、その不在票ちょうだい。倉庫で小包を見つけて今度ドアの前に配達しておくよ」。


おお~っ! ラッキィ~。


そして、小包は翌日、うちのドアの前に置かれてありました。


こんなに素晴らしい郵便屋さんだったのに、ここ1ヶ月ほど彼の姿を見ません。

新しい配達員になったみたいで、広大なアパートの中、慣れないのか郵便が夕方の6時半頃配達されていることもしばしば。

薄暗い午後5時ごろ、これまでの郵便屋さんとは違うシルエットの配達員がのんびりと家々を回っているのを見たこともあります。


また、この新しい人は、郵便箱に入らない大型封筒や小包などは2階のうちまで届けてくれず、下に置いて行きます。

インド人がそれを見つけると、上まで持って来てくれるので、今のところ紛失などはないのですが・・・。

誤配も多くて、うちにも間違ったアドレスのものがよく届きます。

その度に「This is not in this address.」と書いた付箋を貼って、下に置いておきます。

うちの郵便物もどこかに誤配されているのかも。


あのフィリピーノ、どうしたのかなあ。

戻って来て欲しいなあ。


そんなある夜、郵便を見ておこうと下に下りていって、メイルボックスのカギをガチャガチャ開けていると、階下のインド人一家のドアがバッっと開き、女の子が顔を出しました。

この、郵便箱はインド人の家の壁に埋め込まれているので、カギを開ける音が結構家の中に響くようです。

彼女は「ハ~イ」と言って、そのままドアを閉めました。

夜に物音がしたから、セキュリティ上の理由でドアを開けて誰が何をしているのか、確かめたのかな~とその時は思いました。


そして、つい1週間ほど前。

私がまた郵便箱のカギを開けていると、またまたインド人の家のドアが開いて今度はSheelaが顔を出しました。

「Hello」とお互いに挨拶をした後、彼女が「うち、郵便箱のカギをなくしちゃって」。

なんでも、一番下の男の子(1歳7ヶ月)がカギをおもちゃに遊んでいて、外の芝生でなくしてしまったそう。

どうして、そんな大切なモノをおもちゃ代わりにさせるのか分からないのですが、以前、自宅の玄関ドアのカギとおぼしきものが落ちているのを見つけたことがあります。


念のため、Sheelaに聞いてみると「ありがとう、これ、うちのカギよ」。

やはり、男の子がそれを持って遊んでいたそうです。


郵便箱のカギがないため、彼らは郵便屋さんが来るのを待ち伏せし、郵便箱が開けられる音を聞くと、家族の誰かが飛び出して、郵便を受け取っているそう。

なんちゅう、原始的なことを・・・!


だから、私がカギを開けるたびに郵便屋さんかも、って思って誰かが顔を出していたんだろうなあ。


カギをなくしたことは、アパートメントのオフィスに報告済みらしいので、ガーデナーの誰かが拾ってくれたりするといいのにな、と思っています。

あるいは、スペアのキーをもらうとか。


そして、2日ほど前

日もとっぷり暮れた午後5時半頃。

階段を威勢良く上がってくる足音が聞こえて、ピンポンが盛大に鳴りました。

ドアを開けたとき、もう誰もいなかったのですが、定期購読している雑誌が配達されていました


ここまで持って来てくれることと言い、ピンポンを鳴らすことと言い、もしかしたら、あのフィリピーノが戻って来たのかも!

う~ん、でも、このアパート内を熟知しているはずの彼がこんなに遅くに配達するのも変?


姿を見るまでは分からないけど、またあの人がここの担当になってくれたら嬉しいな。