古本屋レッドブロンコ開業準備室 -3ページ目

垂直運動機器ビジネス

 春に賃貸契約を締結し、一月もしないうちに契約解除を余儀なくされた店舗に新しい借り手が現れ、先日、ようやく開業した。「立ってるだけで足元がぶるぶる震えて全身が振動。それが自然にエクササイズになる画期的なマシン」を置いて10分・500円で使用させるというフィットネスサロンがわがまちにオープンしたのだ。メタボリック体質に悩む私のようなデブオヤジや頭の中身よりも皮の下の脂肪を気にするご婦人を対象としたダイエットビジネスの一つらしい。いずれにせよ、大家さんには迷惑を掛けたという思いがあったので、早くに新たな借り手が現れ救われた気持ちになった。そういう時期にモチベーションを上げるために久し振りに買ったアントレを眺めていると、その店と同じ名前のチェーンがフランチャイジー募集の広告を載せていたのを発見した。まだ直営店は3店舗しかないらしい。よく見ると、フランチャイジーの募集ではなく、ダイエットマシンの買主を募集しているようで、購入者にフィットネスサロン運営のノウハウも提供しますということらしい。道理で店舗の方も金を極力掛けない素人臭い造りではあった。ところで、アントレ8月号には古本屋のフランチャイジー募集も2チェーン掲載されいるのだが、最近目立つのが立って乗るだけで運動になるマシン(垂直運動機器というらしい)を設置したサロンのフランチャイズ募集である。8月号に掲載されているフランチャイジー募集企業147社のうち6社がこの垂直運動機器関連のダイエットビジネスであった。毎号購入して比較しているわけではないので、確かなことは言えないが、最近目立って増えているような印象を受ける。

 

 この業界の最大手がFC開業1年で全国に182店舗を出店し、2009年中に2000店舗体制を目指すダイエットエンドさん。「遠くて面倒な運動を、近くて手軽な存在に」というキャッチフレーズで商店街の小ぶりな店舗への出店を進めている。メタボリックシンドロームという言葉を聞くようになった頃に生まれたと思われるこうした運動機器サロンにビジネスとしての永続性があるのだろうか。少し前に乗馬スタイルの家庭用乗用運動機器が人気を博したが、立って乗るか座って乗るかだけの違いでその効果に大した違いはないように思える。「遠くて面倒な運動を近くて手軽な存在に」するのであれば、乗馬スタイルの機器を買って家でやった方が良いだろう。大手メーカーのものでも10万円位だから、この手のサロンが1回・10分・500円なので200回分で買える。だが、200回分というのはかなりの回数だから、1回・500円というのは魅力があるかもしれない。それに乗馬マシンを置くスペースだって大変だ。古本満載の我が家にはそもそも置けない。そうすると、やはり市場はあるということだろうか。少し趣きが異なるが、体脂肪計で有名なTANITAが30坪程度で始めることができるフィッツミーという名のフィットネスサロンのフランチャイズ展開を始めた。TANITAらしく、運動後には測定器を使って体脂肪などの体のデータを測ってくれるという。同じようなビジネスだが、TANITAのブランドもあり、こちらは何となくいけそうな感じがする。ブックカフェは楽しそうだが、これからはブックダイエットの方が良いかもしれない。そう、好きな本を読みながらマシンに乗ってもらうのだ。


マクド

マツモト ケイジ
30日間マクドナルド生活―自分の体で実験してみました
  
 私が太ったのは、運動不足とビールの所為だろうが、一時期、朝飯をマックで食べていたことも原因の一つかもしれない。この本の著者だが、映画「スーパーサイズミー」に挑戦しようとした心意気は買うが、マクドナルドでサラダを食べていては挑戦の意味がなくなってしまうだろう。折角、馬鹿馬鹿しくも現代社会に警鐘を鳴らす試みを実践しようというのに本家の足元にも及ばない結果となるのは、所詮、アメリカ人の馬鹿馬鹿しさには日本人は叶わないのか、それとも「スーパーサイズミー」のパロディのつもりなのか。ほかにも毎日カップ麺生活や避難訓練生活と題したホームレス体験などがあるが、テレ朝の「いきなり黄金伝説」の方がわかりやすい。この手の体験は読むものではなく、見るものであろう。ということで、買わずに、本屋で斜め読みして済ました。因みにアメリカでは、タバコにより健康被害を受けたとしてタバコ会社が訴えられ、莫大な和解金を支払わされが、マクドナルドも訴えられたことがあったらしい。二人の肥満少女が、肥満の原因をマクドナルドの食品によるものだと主張したのだが、この訴訟では因果関係が認められないとして裁判所に却下されてしまったという。日本でも賞味期限切れの食材が使われ、中国では饅頭にダンボールが混ぜられる時代だ。食品の成分だけではなく、材料そのものが信用できないとしたら、最早、喰うものがない。

さらば!ブックオフメンバーズカード

 うっかりブックオフに1週間以上行かないでいるうちにポイント割引サービスが終わってしまっていた。いろんなお店のポイントを貯められるティーカードとやらに移行するので、6月末で現行のポイントサービスが終了することはかなり以前から知らされていたのだが、あまり深く考えないでいた。ところが、ティーカードのサービス内容をここに来てよく読んだら愕然としてしまった。ポイント還元率と言おうかキャッシュバッグと言おうか、そのサービス内容に雲泥の違いがあったのだ。これまでなら1000円分の商品を買えば50円分のサービス券がもらえたのに、10月からは10円相当のポイントが付くだけになってしまうという。5分の1の還元率だ。こいつはひどい。転売目的でブックオフを活用するものにとっては、仕入れ値が4.2%も値上がりするようなものだ。私の場合なら、毎月2万円程度をブックオフで仕入れているから、19000円だった仕入価格が19800円になるっていう感じだ。本格的な方で毎月19万円を仕入れているとしたら、それが19万8千円になってしまう。ブックオフでのセドリを主な仕入れ先としている方にとっては由々しき問題であろう。だが、普通のブックオフのユーザーにとっては、デメリットよりもいろんなお店で使えるというメリットの方が大きいかもしれない。ブックオフで買う金額の4倍以上をTSUTAYAやファミリーマートやエネオスで使えばサービスダウンではなくむしろサービスアップと好意的に受け止められることだろう。ということは、ブックオフを主な仕入れ先にしている私のような輩に対する嫌がらせと普通のユーザーに対するサービスアップを同時に達成できる一石二鳥の奇策ということになる。してやられたというか、ひどい仕打ちだが、仕方がない。ブックオフに依存していれば、今後もこういう目に遭うということなのだろう。所詮はブックオフの手の平の上であがいているだけなのかもしれない。

 

 ところで、ブックオフのサービス券がヤフオクに出品され、結構いい値で取引されている。4月には5250円分のサービス券が4601円で落札されていた。送料を引けば、600円弱がお得になるだけなのだが、それでも落札するということは、落札者はかなりシビアな感覚の持ち主なのだろう。しかし、この5250円分のサービス券はたった14枚のサービス券なのだ。1枚500円というものもあった。しかも全てが同じ有効期限だった。ということは同じ時期に複数回に渡って、10万5千円分を買ったか(買いの場合は5%のポイント還元)、5万2500円分を売ったか(売りの場合は10%のポイント還元)、あるいはそれらの範囲内での売り買いを組み合わせたかということになる。サービス券を売ってしまうような方なのだから、恐らくは5万2500円分を売った可能性の方が高いのだろう。とすると、短期間に14回に分けて売るっていうのはどういうわけなのだろうか。もしかしたら、悪いバイトが居て・・・・なんてことはないのだろうか?サービス券はずばり金券なのだ。この辺りにもティーカードに移行する理由があるのかもしれないと思う私は勘繰り過ぎであろうか。今日、7月に入って初めて覗いた直近のブックオフで会計しようとすると、ブックオフのカードはお持ちですかと訊ねられた。まさか、この店ではまだポイントを付けてくれるのだろうかと期待して喜々と差し出すと、「24円分のポイントが付いているが、10月から新カードに移るので、もうポイントを付けられないから今日清算しますか?」と何百回も言ったに違いないフレーズが返ってきた。お願いしますと言うと、24円分引いて呉れた。これで長年親しみ、財布の中で最も出しやすい位置を占め、汚れが目立つようになった愛着ある黄色いカードが無用となってしまった。それにしてもブックオフさんよ、カードに残る端数まで清算して呉れる誠意があるのなら、10月までの購入分に対してもポイントを付けて呉れてもいいんじゃない?それとも、そんなこと思う奴は優良顧客ではないという認識なのかな?

 


ロコ

 

ムジカロコムンド, M´usica LocoMundo

ムジカ・ロコムンド―ブラジリアン・ミュージック・ディスク・ガイド

 

 今日、直近のブックオフで手に入れたのが、この「ムジカ・ロコムンド(ブラジリアン・ミュージック・ディスク・ガイド)・2000年版」である。格安コーナーではなかったが、格安物件であった。わがレッドブロンコのCDは、ブラジル音楽を核に据えたいと考えているので、こんなガイドが欲しかった。CDのジャケット写真も掲載されているので、イメージが摑みやすくて重宝しそうだが、半分以上は白黒写真なのが残念なところだ。帰って、ネットで調べると、2004年に改訂版が出ており、そちらの方はジャケット写真がオールカラーになっているらしい。その方が断然いいだろう。アマゾンのマーケットプレイスでも調べてみたら、2004年版と2000年版の両方が掲載されていたのだが、2004年版の方に「2000年1刷」と説明し、2000円を付けている販売者がいて驚いた。そして、音楽にも強くたまに心優しいコメントを寄越して呉れる札幌の先輩古本屋さんが2000年版を出品されていたので、何となく嬉しい気持ちになった。

本のアウトレットモールの可能性


ブラジル

 

 川越の骨董市の帰りに未知のブックオフを覗くことにした。帰りと言っても骨董市は朝7時前から見始めたので、9時過ぎにはもう十分満足し、帰路にある狭山のブックオフに着いたのはまだ10時前であった。初めてのブックオフはわくわくする。全国どこのブックオフの棚もそれほど大きな変わり映えはないが、それでも見たこともない本に出逢えるかもしれない、それも破格に安くという期待に胸を弾ますことの出来る瞬間は、私の人生の中では数少ないときめきである(それにしてもつまらない人生だと思うのだが、それなりに満足できるのは、私自身がつまらない人間なのであろう)。結論を言えば、狭山のブックオフは期待倒れに終わってしまった。良く言えば、管理されていているのだが、欲しいと思うものに安いものがなかったからである。CDの値づけも厳しく、250円のものがほとんどなかったので、物色する気が早々に萎えた。直近のブックオフであれば、1週間も間を空ければ、数冊の本やらCDやらを求められるのに、この店は初めての訪問にも関わらず本を3冊しか買う気になれなかった。それも坊主よりはましと仕方なしに選んだのだった。その中の1冊が冒頭のプチグラパブリッシング(以下プチグラ)の「ニュー・ブラジリアン・シネマ」。定価3360円だが、500円で手に入れた。初めてなら安くていい本が買えたと思えるのだろうが、実は、この本をブックオフで買うのは3冊目であった。地元のブックオフなら買わなかっただろうが、他に目ぼしいものが少なかったこともあり、500円なら損はしないだろうと、転売の具体的予定もないのに販売用に抑えておいたのだ。この本は、2006年1月の発行にも関わらず、3カ月ほど前からどこのブックオフの棚にも置かれるようになっていた。だからと言って、プチグラの経営環境化が悪化しているということはないはずである(風評被害防止のためにお断りしておくが、プチグラの経営に問題があるという話は全く聞いたことがない。)

 

 以前にも戎光祥出版の「わが心のジョージア/レイ・チャールズ物語」が同じ時期に突如としていずこのブックオフの棚にも置かれるようになったことがあった。この2冊に共通しているのが、何れも版権は海外にあり、メディアミックス的手法により出版社が販売攻勢を仕掛けたらしい点である。「わが心のジョージア」は、映画の「レイ」の封切に合わせて刊行されたものであり、「ニュー・ブラジリアン・シネマ」は「シティ・オブ・ゴッド」が一部のスノッブに注目を集めた結果、わざわざ「シティ・オブ・ゴッド」に関わる章まで新たに書き加えられたうえで刊行されたのである。つまり、2冊とも時機を逸すれば販売することが難しい季節商品のような書籍であったのだ。角川映画で広まったように、出版業と映画界のコラボレーションは今や当たり前であり、大手出版社から刊行されている原作本が映画化されると、倉庫から出されたストックが映画宣伝の帯だけ付け加えられ、化粧直しをしたかのように店頭に返り咲くことがある。大手出版社の本であれば、映画の公開が終われば、ブランドイメージを維持するために、再び倉庫に帰るか裁断処分に廻されるのであろうが、資本力の小さな出版社の本であれば、ブランドイメージの保護よりも資金回転が優先され、倉庫で眠らせておくことも裁断処分することもままならず、1000店舗体制のブックオフに捨て値で卸してしまうということがあるのかもしれない。もしそうであるなら、季節で流行が変わるアパレル業界ならば当たり前の光景であるが、流行とは本来無縁のはずの著作権物にもトレンドが重要な意味を持つようになったということになろう。

 

 このような動きは再販制度の行方にも大きく影響することであろう。大手出版社に体力があるうちは、ブランドイメージを維持するために売れ行きの鈍った書籍であっても投売りするようなことはしないであろうから、再販制度も当面維持されるように思える。しかし、体力に乏しい中小の出版社は背に腹は代えられぬと不良在庫化が懸念される書籍を投売るところが出てくるのを止めることはできなだろう。以前ならば、販売チャネルがなかったのだが、今ではブックオフという頼もしい販路があるのだから、取次ぎや新刊書店の顔色を気にする必要もない。再販制度が崩壊すれば、ブックオフが困るという見方もあったが、実は、ブックオフだけが得をするようになるのではないだろうか。というよりもブックオフの躍進が再販制度の崩壊を加速化させることにつながるように見える。新刊書店では価格体系を二重化させることは難しいし、最多数店舗の文教堂でさえ300店舗もないのだから、1000店舗体制を敷く古本屋のブックオフが不良在庫の一括処分先として圧倒的な優位に立てることになろう。中小の出版業者がブックオフの軍門に下る日が来そうな予感がする。この趨勢に抗うには、出版業界自らがブックオフに対抗する販売チャネルを確立するしかない。それも新刊書店に配慮するような形でである。それが本のアウトレットモールである。アウトレットは自社ブランド直営のバーゲン店である。他社に安く売られてしまえばブランドイメージが損なわれるが、自社の直営店であればブランドイメージを損なうことなく在庫を処分することができる。出版業界もこれを倣い、出版社の連合による直営アウトレット書店を設ければ、ブックオフの軍門に下ることなく、しかも有利な条件で不良在庫を処分できるであろう。そして、このようなアウトレットモールこそ実店舗ではなく、ネットショップが相応しいと感じるのだが、果たしてどうでだろうか。

骨董市で気分転換


川越1

 

 今日はサラリーマンの仕事が休みだったので、家内に自由行動の許可を貰い、毎月28日に開かれている川越の成田不動尊の骨董市に出掛けてみた。新婚間もない頃に連れ立って一度行ったことがあるので、今回で二度目となる。ネットで下調べをすると、骨董市は日の出とともに始まるらしい。早い方が時間を有効に使えるので、家内や子供が寝ている午前5時前に車で出発した。家内にはガス代が掛かるから電車で行ったらと勧められたが、帰りに行ったことのないブックオフにも寄りたかったので車にしたのだ。早朝とは言え、わがまちから川越に延びている国道16号線は混んでいた。トラックばかりでなく、通勤の車も多いようだ。皆、大変なんだと感じる。僅か40キロの距離だが、マックで朝飯休憩を取ったこともあり、2時間近く掛かってしまった。7時前に着いたのだが、ちょうど喜多院前の公営の駐車場が開くところで数台の車が並んでいた。成田不動尊にも隣接していると言っても良いこの公営駐車場の営業開始は本来もっと遅いようだが、骨董市の開催日には繰り上げて営業を開始しているのだろう。平日にも関わらず、車が続々と集まってくる。

 

 骨董市が日の出とともに始まるのは本当らしい。一間四方程度の露天が広くはない境内にひしめく会場は、既にかなり賑わっているが、まだ開店準備が整っていない業者も少なくない。私の目当ては勿論、紙モノだが、企業のノベルティーグッズなどにも興味がある。だが、骨董市であるから、お目当てのモノは少ない。古着やガラクタにしか見えない古道具、焼き物の類などは多いが、紙モノは絵葉書や古雑誌程度で私の琴線に響くものは稀である。そんな中で30台前半に見える男性が映画関係の古雑誌や絵葉書、カタログなどを扱っていた。これは楽しそうだと覗いてみると、小学生の頃に憧れていた西ドイツの電動機関車の玩具メーカーであるメルクリンのカタログがあった。ビニール袋に入れられたカタログを引き出してパラパラと目を通すと、機関車のイラストが満載されていて状態も結構いい。これは欲しいなと思って値段を尋ねると、5000円との答えが返ってきた。2000円までなら買おうと思ったが、5000円なら交渉の余地もないだろう。他にも古い車やバイクのカタログもあり、食指が動いたが、私の買える値段ではないだろうと感じ、値段も聞かなかった。

  

 数十はあるだろう露天の主のほとんどはいかにも露天商という感じのおじさんとおばさんが多いが、中に数人、西洋のアンティークを主体に扱う女性の店主がいて、雰囲気もほかの露天の骨董屋とは明らかに異なり、都会的な華やかさが感じられた。また、そういう店には、同じような雰囲気の中年女性が客となっていた。こういった西洋アンティークの露天の女主人は、骨董市を足がかりにやがて実店舗を持ち、洒落た雑貨店のオーナーへとステップアップしていくのであろうか。総じて年齢は私と同じくらいだ。皆、頑張っているのだ。ちょっとびっくりしたのは、フランス人らしい男性と中国人らしい男性がそれぞれ自国の物産であろう骨董を売っていた。フランス人らしい方は連れの日本人女性がおり、客の相手は彼女の担当のようだった。フランスの蚤の市で仕入れたものでも売っているのであろうか。ブルボンのキーホルダーでもないかと思って覗いたが、ブルボンではないミシュランのキーホルダーが3000円もしたのでびっくりした。中国人らしき方は焼き物を主体に扱い、イントネーションは外国人のものだが、日本語を駆使して客と対話していた。フランスや中国の骨董市で日本人が日本の物産を販売しているようなことがあるのだろうか。外国人も頑張っているのだ。それにしてもタバコ臭い。健康増進法の趣旨が浸透し、飲食店でもタバコの煙に悩まされることが少なくなったが、骨董市の会場はタバコ臭い。店主が吸っているから、客も吸うようになるのだろう。ビールを飲みながら営業している方も多い。そういう自由な雰囲気が青空骨董市の愉しみでもあり、そういうラフなスタイルが露天商の生き方でもあるのだろう。うーん、少しうらやましい。

 


川越2

 

 これ以上、モノを増やさないでと家内からきつく言われていることもあり、骨董市で買い求めたのは僅かである。総額ちょうど2千円。オレンジ色のフィルムカメラは、販促用のトヨタのノベルティグッズと思われる。プラスティック製の安物だが、パノラマで撮影できるし、トヨタのロゴもあり、説明書とともにプチプチに包まれて専用箱に入っていた。お値段は100円。100円でいいんですかと女店主に尋ねると、冗談とは思われない口調で「保証はないからね」と言われた。やっぱり冗談だったのだろうか。ビニール袋に入った車の写真は、サンスターのシャンプーに付いていたスーパーカーキーホルダー。6種各2個の12個セットで1000円だったが、ヤフオクの取引実績には6個で350円というデータがあった。赤で50と表記されているシートは、30年近く前の小田急電鉄の「江ノ島線開通50周年記念乗車券」。700円で買ったが、高くはないと思うのだが、何とも言えぬ。プラスティックケースに入っているのは、沖縄海洋博の記念100円硬貨。値段を尋ねたら、中年女性が隣のご主人らしき男性にまた聞きして返ってきた答えが、200円だった。中年女性がそんなに安くしていいの?という顔をすると、男性が「だって100円硬貨だもの」と言った。100円を200円で買ったバカな私。この店では記念乗車券と記念硬貨を900円で買い、千円札を差し出すと、旧い100円硬貨でお釣りを寄越して呉れた。こんな旧い100円玉をコンビニで使ったら、警察に通報されるかもしれないと思い、自動販売機で缶コーヒーを飲むのに使ってみようと、この旧い100円硬貨を投入してみたら、はじかれずにしっかり自動販売機が認識した。良かったと思ったが、よく見ると自動販売機は100円ではなく、10円として認識していた。慌てて「戻す」レバーを押したが、戻ってきたのは投入した旧い100円硬貨ではなく、現行の10円玉であった。何やってんだか。120円のコーヒーを飲むのに210円も使ってしまったバカな私。因みに家に帰ってネットで調べると、海洋博の記念100円硬貨は1億2千万枚も造られ、沖縄では100円玉として普通に流通しているらしい。100円の価値は100円ということだが、これはケースに入っていたのでケースを100円と思えば損した気分にはならない。2時間も見て廻ったのに大した成果はなかったが、気分転換にはなったし、頑張っている同年代の女性や外国人を見て励みになった。それでよしとしよう。

四十五にして大いに惑う

 リバウンドなのだろうか、脱サラ失敗にも挫けず、心機一転して二年後の再チャレンジを目指したつもりであったが、気持ちの整理がついていなかったようだ。手厳しい批評を望んでいたにも関わらず、激しいコメントに晒されると、気分が萎える弱気な自分がいた。実店舗にこそ未来はあるはずとの思いは変わらないし、ブックオフの次が待たれているとの考えも変わらないが、今の構想では勝てそうもないと感じるようにもなってしまった。ネット販売にのめり込んでも未来が切り開けるとも思えないが、さりとて、どうすれば良いのかも思いつかない。ここは、あまり突っ走らないで熟考しなければならないだろう。当面、会社を辞めるわけにもいかないし。不惑をとうに過ぎているが、大いに惑っている。もうすぐ四十五歳になってしまう。もう四十五ではあるが、21世紀ならまだまだ先は長いのだから、まだ四十五とも言える。脱サラすれば定年はないのだから、焦る必要はないと思いながらも、早くしないと誰かに先を越されてしまうとも焦る。そんなこんなの焦燥と倦怠のスパイラルから抜け出せず、ブログに向かう気力が萎えてしまった。店舗契約とその解除で百万円を失い、また、家内の両親の怒りが冷めていないからか、夏の旅行には初めて家内の両親が同行しないことになったことから、今年の家族旅行は超低予算で凌がなければならず、ほど近いが近いが故に未知でもある北茨城で過ごすことに決め、安くて良い公共の宿をネットで探すことにしばらく忙殺されていた。とは言え、この間もブックオフでの仕入れは変わらず行っていたが、量は減らし、デザイン系とサブカルチャー系の書籍とCDに絞っていたが、具体的な販売時期が未定だと虚しさばかりが募ってくる。やはり、ネット販売にも本格的に取り組まなければ、モチベーションを維持することはできないのだろう。だが、しかし、古本屋に未来はあるのだろうかとの根本的な疑問も込み上げてきている。ブックオフ以外の実店舗の業態が成立するのであろうか。本やCDの中古ショップではなく、雑貨をメインにした古本雑貨店の方が可能性が高いのではないだろうかとも思いも沸いてくる。いっそ、このまま朽ち果てるまでサラリーマンを続けた方が楽かもしれないとも。二十年前の就職した頃には、まさか四十五にして惑うようになるとは思わなかった。何をやってんだか、情けないオレ。四十五まであと二月もない。



伊藤史朗
 

小林 信也
伊藤史朗の幻―消えた天才ライダー  

「いとうしろう」ではない。その人はまた別の偉人である。この人は「いとうふみお」という。大藪春彦の「汚れた英雄」のモデルとも言われているお方である。天才ライダーと言われ、十台からレースで活躍し、1963年、25歳で世界ランキング3位にもなった日本のライダー史上、突出した天才である。だがしかし、汚れていた。酒の臭いをさせながらレースに出ていたなんていうのは序の口で、ピストルの密輸まで行なってしまった。日本にいられなくなり、渡米したのだが、その後、消息を絶ってしまった。この本は、伊藤の渡米後、十数年を経てからその消息を探し当てた著者が伊藤との関係を築きながら、その危険で魅力的なベールを剥ぎ取っていく過程が記されている。著者は伊藤の「また走りたい」との思いを実現すべく、四十五になった伊藤のレース復帰を画策し、あのポップ吉村の助力も取り付けるが、それはしかし幻に終わってしまう。天才ライダーとしてレース関係者の記憶に燦然と輝く伊藤でさえ四十五にして惑っていたのだ。いわんやオレをやである。伊藤史朗は残念ながら、アメリカの地でこの本の刊行後数年を経過した1991年、五十二歳で亡くなったという。なお、この本は、惑う最中の先日、ブックオフの格安コーナーで手に入れたものである。これそ何かの縁であろう。

肉声に耳を傾けよ!

 近頃のコメントは辛口のものばかりだ。チョイ辛から激辛までスパイシーなご意見をいただき、うれしさよりも情けなさがこみ上げてくる。ブログに拙案を披露するのは、批判を得ても迷わない方向性を探るためであり、辛口のコメントこそ大歓迎なのだが、迷わぬどころか迷宮のどん底に突き落とされたような思いがする。そのような手厳しいコメントの中でkagasima堂さんの寄せてくれた「リスニングや調査も無く想像での発言が多い」にはちょっと参った。痛いところを突かれてしまった。確かにそのとおりであろう。首都圏近郊に住む私はリサーチがてら古本屋や雑貨屋などをちょくちょく覗いてはいるが、働いている人に話しかけてまで生の情報を引き出すということは非常に少ない。店を覗いただけで解かった気になってしまっていたようだ。ブラジルの音楽CDの輸入元を訪れて話を伺ったとき、「ブラジルではボサノヴァは既に懐メロ」と聞かされ、目から鱗が落ちた気分であったように、直接話を伺うことに如く経験はないであろう。しかし、このような傾向は、私のような脱サラ志望者のみならず、他人から話を引き出すのが商売のジャーナリストにも見られるようになっているらしい。5月1日の読売新聞に「「ノンフィクション」の正念場」という記事が載った。最近のノンフィクションの賞にノミネートされ、あるいは受賞している作品の多くが重複していることに危機意識を持ったものであった。3つの大きなノンフィクションの賞の選考委員を兼ねる柳田邦男氏は、書き手の裾野の広がりがなくなったと指摘され、その背景として、インターネットの普及を挙げ、「誰でも簡単にネットで情報を得られる反面、情報への飢餓感、驚きがなくなっている。生身の現場、当事者の肉声を基本に取材する文化土壌が、衰退しているのではないか」と嘆いておられる。インターネットのお蔭で居ながらにして世界中のかなり細かい情報まで知ることができるようになり、文字情報や映像情報だけで解かったつもりになってしまうようになった。「消えたブック○○○三鷹店店長ブログ」にしてもブックオフの亜流モデルの最右翼についてその現状を知りたいのであれば、勝手な想像を巡らすようなことはせずに、とにかく行って直接その肉声に耳を傾けるべきであった。そこまでしないのであれば、古本屋で脱サラと言っていても本気とは言えぬのかもしれない。だがしかし、肉声に耳を傾けることが肝要であるということは、商売にも通ずることかもしれぬ。やはり、ネット経由で販売するのではく、実店舗を通じお客様の声を聞き、顔を見て売る方が広がりがありそうだという結論に達したぞ!今日のところはだが。

 

 
中村 淳彦
名前のない女たち 企画AV女優20人の人生  
 
現役のオトコならAV女優の人生に興味を抱くものは少なくないであろう。将来、大いに後悔しそうな過酷な仕事に何故就くのだろう?AV男優という過去は大した問題ではないが、元AV女優といい経歴は隠すべき過去のように感じる。そのような感覚には女性の性の商品化という男性優位の考え方もあるのだろう。何れにせよ、AV女優の肉声に触れられるこの本はよく売れ、アマゾンマーケットプレイスでは128円から1500円まで27件も掲載されているし、ブックオフの105円コーナーで見かけることも多い。ただし、この本は亜流なのである。この本に先立つこと数年、 永沢光雄氏が「AV女優」というハードカバーのインタビュー集を記し、脚光を浴びた。名前のある単体で売れるメジャーなAV女優の肉声をまとめたものだ。永沢氏はAV女優の身の上相談などにも親身に対応し、心の内を引き出すことができたという。さて、二匹目のドジョウを狙ったかに見えるこの本だが、同じAV女優でもいわゆる企画モノと言われる演じての名前など意味をなさない類の作品に出演するマイナーなAV女優に焦点を当てたものであり、単なる亜流ではない視点を持っていて、「AV女優」以上に迫るものがある。それが販売にも結びついたのであろう。ちょっと前に紹介した都築響一氏の「巡礼」には80歳過ぎてもなお現役のAV男優が登場している。あまりの衝撃に都築氏はこの方の人生を別途「性豪」として単行本を上梓している。三匹目のドジョウを狙うとしたら、高齢のAV女優へのインタビュー集であろう。一つの道を究めれば、どのような道であれ、感動を呼ぶものである。私は既に職を3回替えているので、私の人生では人に感動を与えることはできない。

小さな店にこそ可能性がある、はず!

 まだ誰もやっていない古本屋(実店舗)の業態と言っても、移動販売とか訪問販売とかと言った奇抜なことを考えているわけではない。諸先輩のご指摘される古本屋の最も重要な課題である「売れ筋商品の安定供給」を成し遂げる手立てなど、私如きがとても思いつくものではない。そこで考えたのが、ブックオフとは逆に店を小さくし、固定費を抑えながら買取価格を高めることで、商品の量を確保しつつ死に筋商品を差益無しで転売し、小さな店であっても死に筋商品を極力なくし、販売効率を高めるということだった。つまり、わがレッドブロンコは、売れ筋商品をセレクトするのではなく、死に筋商品をセレクトして置かないという逆説的な意味でのセレクトブックショップを目指すものなのである。100坪の中規模のブックオフのうち少なく見積もっても3割の棚は動いていないように見える。大きな店ならそれでも経営が成り立つのであろう。それなら逆に、固定費を抑えた小さな店でもって棚の回転率を高める工夫を凝らすことで経営を成立させようというのが私の目論見である。買取時に特定出版社の商品ならブックオフより高値で買い取ることで、買取のお客様には意外と高く買い取ってくれる店というイメージと、購入のお客様には小さいが意外と揃っている店という印象を抱かせることができるのではないかと考えた。

 

 先日、かぴばら堂さんがまたまた貴重な情報を寄越してくださった。ブックオフのIR情報 を見ると、「ブックオフだってフランチャイジーの坪当たりの売上は(10万円どころか)5万円台に過ぎない」というご指摘である。その通りなのであるが、そのフランチャイジーの平均店舗面積は111坪もあるのだ。つまり、ブックオフのフランチャイジーの平均月商は、坪当たりの売上が5.6万円ということだから、621万円に上るのだ。それでは利益はどの程度になるのだろうか?賃料は不明であるが、郊外のロードサイド店が主流とすれば、駐車場付きで坪1万円と見ておけば安いということはないだろうから、111万円ということにしよう。人件費は嘱託社員2名を1人・25万円とし、時給900円のアルバイトを常時4名・1日当たり12時間配置するとすると、1カ月の賃金は130万円ほどなので、人件費の総額は180万円程度とみよう。仕入れ原価を25%とすれば155万円。光熱費や雑費を坪当たり5千円とすれば55万円。ロイヤリティーやシステム使用料を5%プラスαとし、40万と見ておく。すると、この場合なら、オーナーは毎月80万円を得ることができることになる。年収約1000万円ということだ。当初の投資額の半額を借入で賄っていたとしても年収700万円程度は確保できるであろう。ということで、坪当たりの売上の平均が5.6万円に過ぎないとしても、100坪もあれば、オーナーの取り分は年間1千万前後を見込めることになる。資金さえあれば、ブックオフに加盟するのが一番無難なのかもしれない。しかし、私には4千万とも5千万とも言われるブックオフの開業資金は手当てできないし、私が独自に100坪の古本屋を始めたところでブックオフに叶うものではない。

 

 ところで、そのブックオフにも比較的小型の店舗がある。例えば、成城学園北口店は、ブックオフにしては小さく、僅か(?)26坪しかない。しかし、このブックオフの坪当たりの売上は14万8千円程度もあるのだ。その分、賃料も高く、坪当たり3万2千円程度になる(程度としているのはIR情報のグラフ からの推定値のため)。月商385万円に対し、賃料は84万円。前述に準じ、人件費は嘱託社員1名を1人・25万円とし、時給900円のアルバイトを常時2名・1日当たり12時間配置するとすると、1カ月の賃金は65万円ほどなので、人件費の総額は90万円程度とみよう。仕入れ原価を25%とすれば96万円。光熱費や雑費を坪当たり5千円とすれば13万円。ロイヤリティーやシステム使用料を5%プラスαとし、25万と見ておく。すると、この場合なら、オーナーは毎月77万円を得ることができることになる。26坪の店であっても固定費を抑え販売効率を高めれば、100坪の店と同程度の収益を見込めるのだ。私はこの成城学園北口店を二度訪れたことがある。郊外型のブックオフと比べると通路の幅が狭く商品が凝縮されていて圧迫感があるが、商品構成に特別な工夫は感じられなかった。ただし、この店には他のブックオフと決定的に異なる点があった。なかったのだ!肝心の105円コーナーが。私が目指すのは、正にこの成城学園北口店のビジネスモデルなのである。「小店高転」とでも言おうか。小さな店で高い商品回転率。それを実現させる手立てをこそ探りたい。その方策を思いついたもののみがブックオフを超えることができるのだろう。

新美 直
アリゾナの青い風になって

この写真集はすこぶる良い。何と言っても値段が手ごろなのである。写真集というと、3~4千円はしそうな感じだが、これは1785円なのでいいなと思えば一般人でも買えるので、私もつい買ってしまった。これが4千円もしたら買うなんてことは考え付かない。勿論、その分、版型が小ぶりなので迫力には欠ける。写真家ならば、大きな版型の写真集を出したいと思うことだろう。大きな写真集の方が感動も大きいかもしれない。でもそうなると売り難くなる。といような訳で前々回紹介した「ナイトレインボー」にしてもそうだが、最近は小型の写真集が多くなったような気がする。莫大な利益は期待できないが、確実に利益を確保するには、大きいよりも小さい方が良いということにならないだろうか。

どうした? ブックオフ!

 常々、ブックオフを賞賛し、ブックオフのビジネスモデルを踏襲した新しい古本屋を創ることが目標と広言している。そのブックオフが最近、文芸春秋から攻撃を受け、先週は「坂本会長が什器納入業者(丸善)から、バックリベートを迂回して得ていた」とか、「会社の金を私的に使っていた」とかと指弾され、今週の週刊文芸春秋の新聞広告では、「架空売上疑惑」の見出しが躍っていた。私的流用やバックリベートはもし事実だとしても坂本会長自身の問題であるからあまり関心はないが、架空売上となれば企業ぐるみの行為であり、それが事実であれば、私のブックオフに対する畏敬の念も吹き飛んでしまう。これは早速に文春を読まねばならぬと思ったら、読売新聞の社会面に「ブックオフ売上水増し」として比較的大きく報じられていた。それによると、「前年同月期の売上を上回ることを目標としているブックオフが目標未達を恐れ、取引先に合計2270万円の商品を売り、後に子会社を通じて買い戻していた」ということらしい。金額が総額2270万円と売上高に対し小額(?)ということもあり、決算等に与える影響はほとんどないらしいが、株価を維持するために売上高を上昇させ続けようとしたことは明白であり、ブックオフに対する信頼が大きく揺らいだことは間違いない。それよりも坂本会長自身の怪しい疑惑や信頼性を損ねる架空売上などの情報がどこから漏れてきたのかの方が私としては気になる。取引先なのか、現役社員あるいは元社員なのか。いずれにせよ、そのような悪い噂が流れ出すことは、企業の先行きに暗雲が立ち込めはじめたことを示すものであろう。私の勤務先においても怪文書がたまに寄せられる。人と人の軋轢の結果であり、厳しい経営環境の下で人を粗末に扱うようになったことが原因であると感じている。ブックオフは従業員を大切にする会社だと聞いていた。ブックオフがこの危機をどう切り抜けるのか。それでも期待してやまない私がいる。

 

 さて、私が古本業界等で特に尊敬し、あやかりたいと願うのは、ブックオフのほかにヴィレッジヴァンガードとふるほん文庫やさんを挙げている。「ブックオフ、情熱のマネージメント」は私の教科書、ヴィレッジヴァンガードの菊池社長の「菊池君の本屋」は私の座右の書、そして「ふるほん文庫やさんの奇跡」は私のバイブルのようなものである。この三者に共通するのは、いずれもが革新者であるという点である。ブックオフは古本業界に革命をもたらし、古本屋を誰もが利用する業態に高めた。ヴィレッジヴァンガードは取り次ぎ任せの配本を否定し、本と雑貨のセレクトショップとして夢のような空間を創り上げた。そして、ふるほん文庫やさんは誰も真似できない文庫専門の古本屋を求道者の如き精神で実現させた。三者とも困難に立ち向かい、誰もやらなかったことをやり遂げたからこそ、私は畏敬の念を抱かざるを得ないのである。私も働き手としての人生の残り少ない時間を何かに掛けてみたい。まだ誰もしていない分野に挑戦してみたいと願っている。そう考えると、古本屋を目指すからと言って、アマゾンマーケットプレイス(AMP)を利用するのは、はばかられるのである。つまり、古本業界で誰もやっていない業態に挑戦するというのに、AMPを活用していては先行きが望めないような気がするのだ。業界経験のないド素人の不遜な発想だとお叱りを受けそうであるが、ブックオフの坂本社長も、ふるほん文庫やさんの谷口会長も業界経験のない素人だった。無論、お二人は私と違って商売人としての経験と才覚をお持ちであったから、私と比べられるものではない。だがしかし、業界経験のなさを逆に武器とし、自分のこれまでの仕事人としての経験を寄りどころに何かできないものかと模索することこそが目標への正しい道筋であると感じるのだ。とは言え、見ず知らずの先輩方がこれだけ勧めてくれているAMPを古本屋志望者として経験しないということは甚だ不遜であるので、のめりこまない程度に参戦すべきだとも感じ始めた矢先、またぞろ大いなる疑問が投げかけられた。以下次回。

 


イェーガー

 

チャック イエーガー, レオ ジェイノス, 関口 幸男
イエーガー―音の壁を破った男
 
先駆者という言葉に憧れる。誰もしたことがないことに挑戦してみたいものだ。チャック・イエーガーは人類史上初めて音速の壁を越えたアメリカ空軍の伝説的なパイロットである。アメリカ東部の田舎町の高校を出て、たまたま陸軍航空隊に入隊し、やがてエースとしてドイツ軍と闘い、ロケット開発のためのテストパイロットとして音速の壁を破り、将軍にまで登りつめたイエーガーの人生を凝縮したこの本はしかし絶版である。アマゾンマーケットプレイスでは、本日現在11冊が掲載され、価格は436円から3600円までと幅広い値付けがなされている。獲得評価が16000近い「books21」さんというところは4点も一度に出品し、2380円が3点と2980円が1点。絶版となった「イエーガー」が脚光を浴び、この11冊がポンポンポンと捌ける日が来るのであろうか。航空自衛隊が教材にでもしない限り、そういう日が来るとは思えない。どうなる「イエーガー」?

暗中模索

 「ブックオフに転職してはどうか」とのコメントを寄越してくれた方がいた。実は私自信、脱サラに失敗してからは、そのことを真剣に考えていた。私が目指すのは、あくまでブックオフの一歩先を行くスタイリッシュな古本屋である。当面サラリーマンであることを家族が望むのであれば、ブックオフで働きながらそのノウハウを身に着けることこそが最善の選択ではないかと。だが、いくら自らが望んだところで、ブックオフに転職できるものではない。ブックオフは特別な能力を持たないものに対しては、35歳までという年齢制限を設けている。その上10年も無駄に歳を重ねた中年なんぞ歯牙にも掛けられまい。ならば、休みの日にパートとしてでも潜り込めないものかとも考えたが、今の勤務先は兼業を禁止しているから、ばれたら免職の憂き目に遭ってしまう。と言うことでブックオフで働くというのはかなり難しいという結論に辿りついてしまった。だが、兎に角、かぴぱら堂さんの仰せのとおり、次の一歩を踏み出さねば、何も始まらない。兼業禁止とは金を貰って働くのはだめということであり、貰わなければ良いのだから、ブックオフに行って金はいらないから働かせてくれと言ったらどうだろうか?気味悪がられて追い返されるのが落ちだろう。一本気な店主のいる勢いのある古本屋ならば、押し掛け実習生を受け入れてくれるかもしれないから、探してみようかなどとも考える。もっといいのは、古本市とか即売会に参加させていただき、稼ぎなら先輩から学ぶということだが、これは組合に入っていないと非常に難しいだろう。となれば、残された手はフリーマーケットへの出店ということになるが、フリマで古本というのは何となくピンとこない。古本屋の多いフリマがあれば良いのだが、ネット検索では見当たらない。店舗契約の解除で失った100万円があれば、ダイハツのミジェットⅡの中古を赤く塗り、荷台に本棚を設けて、ショッピングセンターの一角で古本を売ってみるなんてこともできたかもしれない。わがまちにある小洒落たアウトレットモールのカフェの前で赤くて可愛いミジェットを店舗に見立て、洋絵本やアート関連本を厳選して売れば、結構いけるかもしれないなどと懲りずに考えてしまう。

 

 対面販売に向けた試行錯誤に精を出してはいても、どうしてもネットで販売するということに積極的になれない。直営のネットショップはおいおい拡充していくつもりではあるが、諸先輩の勧めてくれるアマゾンマーケットプレイス(AMP)には大きな抵抗があるのだ。 まず、AMPは価格勝負であることが引っ掛かる。前にも記したが、インターネットの普及とデフレには密接な関係があると感じている。ネットにより販路が格段に拡大されたが、その結果として価格競争も激しくなった。お客様は全国に広がったが、ライバルも全国に存在し、ダンピングが横行するAMPに傾倒するのは危険に感じるし、一律の送料を当てにした極端な廉価販売が多いAMPは歪な世界に見える。価格以外に差別化できないのであれば、工夫する楽しみがなく、商売として発展する見込みを感じないのだ。それに、夏に稼動する予定のブックオフの直営オンラインショップの行方も気になる。ピッキング要員を確保しようとしていることから、古本を巨大な倉庫に集めようとしているのが窺えるのだが、アマゾンの新刊販売と同様のスタイルをブックオフが古本販売に持ち込んだとき、AMPにどういう影響がでるのかも大いに気になる。ネットで販売するのであれば、直営ショップで固定客を摑むようにすべきであり、AMPに依存しているとやがて大きなしっぺ返しを食らわせられそうな気がするのだ。とは言え、経験もしないで能書きばかり垂れていても失われた100万円を取り戻すことはできない。兎に角、新たな一歩を踏み出さねばならないのだが、その一歩の選択に迷っている。そうそう、いつも叱咤激励していただいている「とおりすがり」の方から宿題を貰っていた。脱サラ開業を思い止まったことを家内の両親に「ちゃんと報告せよ」とご助言いただき、「そうよなあ」と感じ、ゴールデンウィークに家内の両親宅を訪れ、きちっと説明するつもりであったのだが、果たせなかった。二泊したのだが、ついに改まって話をする機会を創る気になれなかったのだ。思いの外、深い溝ができてしまったいた。

 

 
高砂 淳二
night rainbow 祝福の虹

夜にも虹が掛かることを知った。今の私の気分も夜空に掛かった虹のようだと言ってもどんな気持ちかわかるまい。はっきりとした希望があるわけではないが、ちょっとつらい状況の中に展望を見出そうとしているとでも言おうか。先日、訪れたブックオフで出逢ったのが、この「ナイトレインボー」。著書(写真家)の高砂淳二氏は私と同じ歳。カッコいいっていうのはこういう写真集だと思う。この写真集を見ていて思い出したのが下の「夜旅」。半年くらい前にどこかの書評で知り、読みたいと思っていて忘れてしまっていたのだ。まだ手元にないので、内容は解からない。だが、夜の散歩、特に、誰もいない夜の観光地を巡る旅という着想はカッコいい。私も学生時代、少ない金を握り締め、親父の車を借り受け、旅に出て、鳥取砂丘まで辿りつき、夜中の砂丘を彷徨い。迷子になりかけたことがあった。オレのはカッコ悪い。20年経っても迷子になりそうな自分が歯がゆい。

 

  
中里 和人, 中野 純
夜旅  

消えたブック○○○三鷹店店長ブログ

 札幌のビーバーズブックスさんからの指摘は常に的確である。今回のコメントは実店舗の維持に必要な売上についてであり、店舗の賃料は、4~5日分(理想は3日)の売上で確保しなければならないといういうことだった。こういう考え方は恥ずかしながら初耳であったが、国民金融公庫に提出した事業計画書では、軌道に乗った後の売上予測を坪当たり・月商10万円としていたので、正しく3日で稼ぐという論理にピタリと当て嵌まっていた。(15坪で15万円の賃料だったので、月商を150万円と予測した結果、1日当たりの売上は5万円となり、ずばり賃料を3日で稼ぐという予測になる。)ビーバーズブックスさんのコメントを反芻すると、この売上予測は夢のまた夢という感じになる。家内が反対した原因もこの売上予測に眉をひそめ、「そんなに売れるわけないじゃない」と感じたところにあった。それでは何故、私はこのような誇大妄想的な予測を立てたのかと言えば、何も自分に都合の良い勝手な予測を立てたわけではなく、ブックオフやブック○○○のフランチャイズ用資料から出した数字なのであり、この売上予測に対しては国民金融公庫の融資担当者も異論を挟まなかったのである。フランチャイズ用資料では都市型のブックオフなら坪当たりの月商を12万円としていたし、30坪のブック○○○でも坪当たりの月商を10万円としていた。ならば、売上効率をより高めることができるはずの15坪なら月商・10万円ぐらいは難しくないだろうと高をくくったのである。勿論、古本だけでは売上を稼げないのでCDや雑貨などにも力を入れて、客単価のアップにも工夫を凝らすつもりではあった。

 

 ところで、私が実店舗の可能性にこだわるのは、ブックオフの隆盛を見ているからである。ブックオフは店主が不在でもパートだけで切り回しあれだけの店舗を維持し、オーナーに相当の利益をもたらしているのだ。ブックオフを上回るサービスを提供し、差別化することができれば、やがて消費者の評価を得て、ブックオフと対抗できる存在になることができるはずだと考えたのである。競争が激しく、先行きの不透明なネット販売よりも、ブックオフとの競争だけを考えれば良い実店舗の方が却ってやり易いとさえ思った。ところが、店舗契約を終了した後、不安を打ち消すために見ていた古本屋関連サイトでとんでもないホームページを見つけてしまった。そう、それこそがブック○○○三鷹店の店長ブログだったのだ。このブログには日々売上を上げるために孤軍奮闘する店長の嘆息が染み込んでいた。恐らく、フランチャイズ本部の出した売上予測を大きく下回っていたのだろう。本部に対する愚痴も記され、うまくいっているように見えるブック○○○もその内情は厳しいらしいことが伝わってきた。このブログが私の不安を激しく煽ったのは言うまでもない。脱サラ計画が頓挫した後はこのブログからも距離を置いていたのだが、ようやく気を取り直し始めたこともあり、先日久し振りに最近の調子はどうなのかなと思って覗こうとしたら、ないのである!肝心のブログが。フランチャイズ本部とブログの件でもめたであろうことは想像に難くない。生きた教科書のようなブログだったので、非常に残念だが、内容が内容だっただけに公開の取り止めも理解できる。100店舗を越し、ブックオフに継ぐリユース古本チェーンと目されていたブック○○○でさえ、坪当たりの月商で10万円を確保するのは難しいということだけはよく解かった。

  

 だがしかし、ブック○○○は、ブックオフの亜流に過ぎず、ブックオフを超えるものではなく、また差別化にも成功しているようには見えない。顧客層は完全にブックオフと重なっており、ブックオフのブランドに対抗するだけの要件を持ち合わせていないように思える。ブック○○○の劣勢をして即ち実店舗はやはり難しいと判断するのは早急に思える。というのも古本業界を喫茶業界になぞらえると、ドトールコーヒーに相当するのがブックオフだと思うのだが、スターバックスに相当する存在がないからである。喫茶業界もセルフで激安のドトールが広まると、まちの喫茶店は衰退し、コーヒー専門店とドトール及びその亜流に二極分化したが、やがて手作り感覚のカフェがブームとなり、ドトールと似たビジネスモデルながら一歩先を行くスターバックスが新たな主役に躍り出ている。同様に、古本業界においてもブックオフの台頭でまちの古本屋が衰退し、専門古書店とブックオフとその亜流に二極分化したが、手作りカフェのように店主の個性や嗜好を反映させたニューウェイブ古本店が現れたではないか。だとすれば、次に待たれるのはスターバックスのような存在ではないだろうか。そこにこそ実店舗古本屋の未来があると睨むのだが、どうだろうか。やってみなければわからないと思うのだが、やってみるまでもないという方もいらっしゃる。その証明をこそしたいのだ!

 

 
都築 響一
巡礼―珍日本超老伝

変なものを変なことだと気付かしてくれるのが都築響一氏の視点である。この「巡礼」では変な人、というより変な爺さんどもの生き様を見せつけてくれる。全員が爺さんというのは正確ではない。一人だけ女性がいるが、その昔は大学教授だった女装愛好家であるので戸籍上は一応爺さんであろう。カッコいい爺さんが植草甚一だとしたら、この「巡礼」に掲載された爺さんどもはその対極に位置するカッコ悪い爺さんなのであるが、その人生を良く噛めばその生き様はむしろカッコいいわけがない。だけど、ホッとする。年喰ったって丸くなる必要はないのだ。好きなように生きてみろ。家族がぎゃあぎゃあ言わすな!オレも変な爺さんになりたいわけがない。