ストップモーションアニメの『血のお茶と紅い鎖』を観ました。
前々から気になっていて、ようやく観る(観られる)気分になったので。
ダークファンタジーで「大人のための寓話」で好きな感じの作品です
キャラクター(パペット)も可愛いし、効果音も面白い。
ただ「食べ物と虫」の組み合わせはダメ絶対w
(私は虫はGとか以外は割と大丈夫な方だけど、これは一瞬ギョッとした)
《あらすじ》
貴族ネズミが茶色い動物(カラスの嘴をもつ)に人形を作ってもらう。
しかし茶色い動物は、作った人形に愛着がわき手放したくなくなる。
貴族ネズミは人形を奪い、茶色い動物は人形を取り戻しにいく旅へと出かける。
茶色い動物が“あやとり”してるの ほのぼのするし
旅の途中で食虫植物に食べられそうになったりするのも面白いし
カエルが焼いてくれた青虫が意外とカリカリして美味しそうだったりw
貴族ネズミが馬車の代わりに亀車に乗ってるのも可愛い。
「人形のお腹に卵を入れて赤い糸で縫う」という(それに類似した)モチーフは
Blood Tea And Red String
この作者の他の作品でも多く用いられています。
「お腹の卵」はそのまま妊娠→出産=生命を表しています。
The Doll Maker
Seed in The Sand
それと同じく嘴(くちばし)・赤い糸・足元が赤白ボーダーというモチーフも多用(『血のお茶と―』では人形と青い鳥の足が赤白ボーダー)。
何か意味があるのか造形(デザイン)的に作者の好みなのか?
可愛いのと同時に『血のお茶と―』には気持ち悪いキャラが出てきて
人面蜘蛛と人面鳥。
人(女性)の顔が(鳥に至っては胸も)ついているのが見た目ちょっとキモい。
青い鳥は『生』、蜘蛛は命を奪う存在=『死』を表しているのかなと思います。
そして蜘蛛は等価(物々)交換を行うのですが
(茶色い動物は「木の実」を渡して「青い鳥の亡骸」と交換。貴族ネズミは「亀」を渡して「青い鳥の羽 数本と赤い糸」と交換)
身分に関係なく行っているのは「死は誰にでも平等(に訪れる)」ということなのかな?
貴族ネズミは赤い血のお茶を延々と飲んでいる。
そして手にした白い(何も描かれていない)トランプで延々とポーカー(?)をしている。
貴族ネズミは上流階級で搾取する側
茶色い動物は労働者階級で(色んな生き物(耳・顔・嘴)が混ざっていることから、さまざまな人種?我々一般庶民・大衆)で搾取される側。
色から見ても白人と黒人?
上流階級はただ無駄で意味のないことを延々として、
労働者階級から搾取した さまざまな物(労働力・金銭等)を無駄に延々と垂れ流しているという風刺なのかな・・と。
庶民の犠牲(血と汗と涙)の上で成り立つ存在ということ
人形のお腹に入れた卵は孵って中から青い鳥が出てくるんだけれど
すぐさま貴族ネズミの元から飛び立ち、そしてすぐさま蜘蛛の糸にかかって死んでしまう。
青い鳥はそのまま「幸福=生命」の象徴。
茶色い動物が死んだ青い鳥を川に流す(弔う)と、ラストシーンで お茶を飲んでいる女性(人間)の元へやってきて
キラキラと輝く大きな黄色の宝石へと姿形を変えている。
卵(孵化=生)→青い鳥の死→宝石=生と死の繰り返し⇒輪廻を表しているし、
また生命は宝(価値あるもの、尊い)という意味もあるのかな?
では肝心な貴族ネズミと茶色い動物が奪い合った人形の意味する物は?
この人形は磔(はりつけ)にされたり、引っ張り合って八つ裂きにされたり。
皆が自分のそばに置いておきたいもの・・・キリスト=宗教的なもの???神様??
特に貴族ネズミが執着していた(最後八つ裂きになった時、取った腕や足を茶色い動物は貴族へ渡していた=自分たちには必要ないと悟った?)から
地位や名声的なもの??
単純に人形を茶色い動物の元に返しにきてくれた(←返しにきたわけではなく「木の上に吊るすと再び命を宿すかも?」と思っての行為かも?)
1匹の心優しき(?)貴族ネズミのために取って渡してあげたかっただけなのかもしれないけれど。
う~ん・・ちょっと分からないな。
色んな意味があるんだと思うけど。
この作品はセリフが一切ない(説明されてない)ので作者の考え(想い)があるにせよ
それぞれ受け手が感じたものが全てなんだと思います。
それにしても貴族ネズミは傲慢でめっちゃ腹が立つ
蜘蛛のところに亀(元々は貴族ネズミ所有)がいたのを無理やり奪うシーン。
(特に1匹ズルくて嫌なネズミがいる。
それまでもポーカーをしている時、白い花を外に摘みに行ったネズミ(いつも人形を抱いているネズミじゃない方。楽器を弾いてたりする)のトランプを覗き見しようとした)
貴族ネズミの中でも1匹(いつも人形を抱いてるネズミ)は蜘蛛にも物々交換をお願いしていたけれど
後からきた嫌なネズミの方は蜘蛛の腕を噛みちぎり力(=権力)に物言わせて亀を強奪したところが もう最低最悪でした
それにしても創作意欲が刺激される作品で、私も久々に何かを作ってみたくなりました