明けましておめでとうございます。
はたして皆さまは、どんな年明けを迎えられたでしょうか。
ほとんどの方が寒い朝を迎えられたことと思います。
今朝(0時を回ってしまいましたが、まだ1/1の気持ちで記事を書いていきます)も全国的に、年末に引き続いての寒い朝を迎えた地点が多かったよう。私の住む横浜寄り神奈川県でも氷点下六度でした。
あまりの寒さに身を縮めながら布団から起きたのですが、そんな私の脳裏にふと、「麦はのう」というセリフが鮮やかに浮かびました。
「麦はのう」
『はだしのゲン』というマンガ……私はマンガを読んだことはなく、アニメ映画版で見ただけなのですが、そこに出てきたセリフの一つです。
『はだしのゲン』は広島に落とされた原子爆弾を巡る物語です。原爆がもたらした悲劇、そして、それでもなお「生きる」を諦めない人々の姿がリアルに描かれていきます。
リアルのはずです。
これはただの想像から生まれた物語などではなく、作者であられる中沢啓治さんご自身の被爆体験を元にした自伝だそうなのです。
この作品のすごいところは、「こんな風に命を奪う兵器なんて二度と使われてはならない」という反戦メッセージに留まらないところ。
視聴者の印象に深く残るのはそこではない。
「麦はのう」なのです。
これは、主人公・ゲンが見た回想シーンで描かれた父のセリフです。
ゲンの父は原爆の熱風により起こった自宅の火事で、ゲンの目の前で焼け死にます。いえ、父だけではなく、姉・弟も合わせての三人でした。父と兄弟たちが崩れた家の下敷きとなり、三人の顔だけがゲンに見えていました。彼らを拘束する柱をなんとかどかそうとゲンは必死になりますが、まだ十才にもならない子どもの力ではびくともしません。
「母さんとお腹の子を頼む」と歪む顔で懇願する父に、ゲンは心を鬼にして母を引きずりその場を去るのでした。
その後のゲンたちの「生きる」は壮絶でした。そんなある日のこと。ゲンは苦しい記憶が鮮烈に残るその自宅跡に立ち寄るのですが、そこで芽吹く麦を見るのです。
絶望の淵に立っていたゲンがそこで父の言葉を思い出し、回想します。
年端もいかないゲンに向かって父は「麦はのう。寒い冬に踏まれても踏まれてもめげずに芽を出す。麦のようにたくましく生きろ」(みたいな感じの)セリフをいつも口にしていました。
――父ちゃんのいっていたことはこういうことだったんだ。
ゲンはこのとき初めて父の言っていた言葉の意味を理解しました。
「麦のようにたくましく」という父の言葉に希望を見、そうして生き生きと生きるの道を再び歩き出そうと立ち上がります。
いち視聴者である私の中で、はだしのゲンといえばこのシーンが真っ先に思い起こされます。
寒い朝で始まった今年。
コロナ渦も過去の「過」ではなく、ただなかの意味の「渦」のまま。
寒く逆境の真っ只中にある我々ではありますが、「麦はのう」です。
厳しい寒さを乗り越え生き残ったものに幸あれ!
2022年も、皆さまにとって心穏やかな一年でありますように。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。