ヤシカのハーフ17の緊急修理の続きです。

 

 

マニュアルF1.7の状態でシャッターが開放になってしまうというトラブルの解消を行っています。

原因はシャッターをロックする爪が上に上がりきらないためにロックされてしまう事が判明しました。

 

 

シャッターをロックする爪(黄色矢印)は爪のレバーを含めて4本のレバーを介してシャッターボタンの動きに連動します。(赤色矢印)

この各レバーが持つガタが合成合計されて爪が上がりきらなくなる程のガタになっていると思われます。

部品取り機の方はキチンと動いているので個体差によるガタの大小が原因だと思われます。

このガタ多さがが経年劣化による摩耗が原因なのか、元々の部品の品質や寸法精度の悪さが原因なのかは判りにくいのですがことヤシカに限ってこういったガタの大きくなり過ぎて不具合に繋がらるパターンが多いです。

これがヤシカクオリィティといった感じなのでしょうか。

 

 

そのガタを少なくするために一つのアームに紙のようなスペーサーが接着剤で貼り付けられていました。

これの厚みを増すためにアームと紙の間にエポキシ接着剤を盛ってスペーサーの厚みを増しました。

 

 

エポキシ接着剤が完全に硬化したのでレバーを所定の位置に取り付けました。

そして各アームの軸となる部分にベンジンを流し込んでみました。

結果不具合は解消されました。

 

 

と思ったのですが、なんだか動作が今一な感じだったので部品取り機のレバーにハンダを盛る事でガタを調整することにしました。

予想通りハンダを盛り過ぎると今度はB(開放)が開放しなくなってしまうのでダイアモンドヤスリを使って森加減の微調整します。レバーの幅方向(スペーサー役)だけでなく厚み方向にもハンダを盛る事によって強度(耐久性)を担保させます。

そのためにヤスリ掛けをしたくないので外面が不細工になっています。

ココは殆ど負荷(スプリングの力)が掛からないので柔らかいハンダでも大丈夫だと思います。

 

 

次に『BとF1.7でシャッターが閉まる速度が遅い』という問題です。

開く速度は問題ないのであれば閉じるためのリターンスプリングが弱ってる可能性があります。

しかしリターンスプリングを強化してしまうと今度はシャッターが開く速度が遅くなる又はシャッターが正しく開かなくなる可能性があります。

コチラを立てればアチラが立たずといった塩梅です。

そのためリターンスプリングには手を触れず、シャッター開閉のエネルギー源となるフライホイールの軸(赤色矢印)とシャッターを開閉する2つのレバーの軸をベンジンで軽く洗浄します。

たったこれだけで問題は解消されてしまいました。

シャッターの閉じ方が若干遅く感じますが、これは構造上(設計上)仕方のないことなので問題はありません。

実は5ヶ月前に修理した際は全く同じ作業というかそれ以上に各部品を分解してベンジンに漬け込んで洗浄していました。

それなのに5ヶ月後にこのような不具合が発生したという事は今後数ヶ月~数年後には再び同じ不具合が発生するでしょう。

フライホイールの軸の経年劣化による摩耗が原因なため新品部品でもない限り根本的な解決(修理)はできません。

このシャッタートラブルがヤシカのハーフ17とハーフ14の最大のウィークポイントです。

しかし他メーカーのカメラでこういった症状はあまり出ません。

コレがヤシカクオリィティという事なんでしょうか。

 

 

三本のネジでカバーを取り付けるのですが、ネジを締め込んでいくと再びシャッターが正常に開閉しなくなってしまいます。

どうやらネジを締め込むとカバーの何処かの部分がフライホイールの何処かに接触してフライホイールの動きをに干渉しているようです。

 

 

カバーを取り付ける三本のネジの内の一本はフライホイールカバーのこの部分にあるシャフトに締まります。そしてシャフトには高さ調整?のワッシャー(スペーサー)が付いてます。

 

 

このワッシャーを取り外してまたもやハンダを盛って厚みを0.2~0.3mm程厚くしてみました。

これによってシャッターは正常に開閉するようになりました。

本当は残りの二本のネジの部分にも同じ厚さのワッシャーを挿入してカバーの平行を保つべきなのですがこの程度ならまぁ良いでしょう。

 

 

最後にフィルムカウンターの動作不良です。

カウンターの構造や機構には問題が無かったのですが、ナゼかフィルムカウンターの回転に(摺動)抵抗が有ってその力がリターンスプリングの力に勝っているためフィルムカウンターが「S」の位置に戻れなくなっていました。

原因は不明なのですがフィルムカウンターの軸部にCRC 3-36を吹き付けたらスムーズに回転するようになったのですが、それでも何か動きが変です。

 

 

という事で部品取り機を分解してフイルムカウンターを比較してみたのですが…。

アレレレ?

こちらの中心の大きなネジにはハンダが付いていません。

どういうことでしょう?

 

 

不審に思って試しにハンダを取り外してみましたら…。

な、なんと!

非常にスムーズに回転するようになりました!

どうやら何かしらのハンダ作業中に溶けたハンダがこぼれてフィルムカウンターに落ちたようです。

この部分にハンダが付いていたというのはただし状態ではなかったのです。

これは完全に私の作業ミスですね。

 

これにて今回の緊急修理は完了したのですが…。

シャッター開閉の不具合はすぐに再発する可能性があります。

そのため購入者様に了解をいただいて7-10日程度私の方で一時保管して毎日動作の確認をしてみて問題無ければ返送したいと思っております。

それでもドイツまでの中距離の運送になりますから、運送中の衝撃等で不具合が再発してしまう可能性もあります。