リコーのハーフサイズカメラ キャディです。

 

実はこのカメラは自宅の無価値なその他大勢のジャンクカメラ箱の中に混ざって入っていたのですすが、私はこのカメラの存在どころか名前すら知らなかったので60年代初期に造られたトイカメラのようなもんだろうと思っていたので全く眼中になかったんです。

ところがある日ひょんなことから私の眼に入りブサイクなデザインだと思っていたスタイルもよくよく見ると60年代初期らしい『シンプルなデザイン』として可愛らしく見えました。

 

 

更に個体をよく見ると革が一部剥がれていますが意外にも程度が良さそうでした。

 

 

残念ながら底蓋の左上部分が凹んでいますが、この程度なら目立たない程度まで叩き出しできるでしょう。

 

 

そしてこの個体には露出計が付いていることに気付きました。

『コリャぁトイカメラじゃないぞ』と思いながらさらにチェックするとなんと驚くことに露出計はまだ活きていたんです!

しかも露出の精度もほぼドンピシャじゃなですか!セレンもまだまだ元気な事が判明しました。

コレで俄然と興味を持ちまして色々といじくりまわしていたら、このカメラはトイカメラなんかじゃなくオリンパスペンDと同じ『フルマニュアル式のカメラ』であることが判明しました。

ハーフサイズカメラでマニュアル式というのは珍しいですね。

 

 

 

レンズもこのように非常に程度が良く清掃の必要が無さそうな状態です。

シャッター羽根と絞り羽根も非常にスムーズに動作しています。

ただファインダーが少し曇っていました。

 

 

そして私を震撼させて久しぶりに『う~む!』と唸らせたのが遮光に使われている材料です。画像では判別しにくいですがモルトではなく『植毛紙』が使われています。

『そういう時代だった』とも云えますが、私にとってコレはオーバークオリティ

=過剰品質と認知されるレベルです。

これならこのままの状態で充分再使用できます。

 

 

フィルムの巻き戻しレバーがありませんがどうやって使うのでしょうか?

答えは矢印と反対方向にダイアルを回すと…

 

 

『ポコッ!』とダイアルが飛び出してきました。

コレまた凝った造りです。

 

 

更に変わっているのがこのカメラにはレンズ周囲にASAダイアルが見当たりません。

ですが露出計の下のこの部分に小さなダイアルが有って…

 

 

このダイアルを回すことによって現在はASA100ですが…

 

 

ASA400に変わりました!

こんな感じでASA12~ASA400まで設定可能です。

この時代でASA400迄あるのは立派です。

露出の値の表示はF値ではなくEV値です。

このカメラのEV設定可能値は5~16までなので17以上は露出オーバーを示すべく赤くなっています。

こんな小さなカメラにこんな機構を入れ込んで実に凝った造りです。

オーバークオリティ=過剰品質の臭いがプンプンします。

 

 

シャッターのバルブ開放(B)もしっかりと動作します。でもレンズはクリーニングの必要がありそうですね。

今回この個体は

① ファインダー内の清掃

② 前玉&後玉のクリーニング

③ 無限遠のピントの再調整(必要であれば)

④ 底蓋の凹み修正

⑤ 革の貼り直し

以上極力他の部分には手を加えることは無く必要最小限の作業を目指します。

そしてテスト撮影も行います。

 

 

私はこのカメラの名前どころか存在さえ知らなかったのでネットで調べてみました。

ネットでリコー キャディの記事を色々と読ませていただくと皆さんこのカメラに対する評価は非常に高く、また撮影のクオリティ・描写力も高評価でした。

正直驚きましたが納得もしました。

今迄ジャンクカメラ扱いをしていた事を反省させられました。

 

このリコーのキャディは1961年07月に発売され1962年11月リコー オートハーフの発売により生産が中止されたそうです。

リコー初のハーフサイズカメラという事で真摯にマニュアル式として設計・製作されたそうです。

しかし同年の1961年8月にオリンパスのペンEEが発売されており後に爆裂ヒットするオートハーフとの狭間の期間に販売されたため『マニュアル式は操作が難しい』と評価されてしまいその真摯な設計と高品質な造りでありながらも僅か1年余りで生産が中止されてしまうという悲運に見舞われたカメラです。

このカメラの名前CADDY=キャディというのは英語で茶葉を入れる缶、容器とか小箱という意味なのだそうです。

リコーのキャディは小箱なんかではなく当に『小さな宝石箱』といえるクオリティのカメラではないかと思います。

 

次回から分解をしていきます。