MOSO STORY
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いい女は時としてピエロにもなる。

~5年前~


「この部屋寒いね。」


嫌味なのか、ただ単に無神経なだけなのか、彼女は僕の部屋に来る度そう口にする。


いつものように僕たちは設定を強にしたこたつに入り、特になにをするわけでもなく、平和なこの昼下がりを過ごしている。


両親が共働きで帰りが遅いこともあり、僕の家は都合の良い秘密基地のようになっていた。


「寒いと思うから寒いんだよ」そう言い返す。「大昔はこたつなんてなかったんだから、ありがたく思わなきゃ。」


その時ふと気がつく。ほぼ毎日このくだりを繰り返している。これは一体なんなんだ。


こんな意味のない会話を僕はもう一年近くも続けていることになるのだ。


「エアコンつける?」って聞いても「いい」ってぶっきらぼうに答えるだけ。


まさか、僕の彼女は少し変わっているのかもしれない。


「私、クロールが得意なの!」と真冬の川に飛び込んで見事な泳ぎを披露してくれたり、動物園でデートした時は「動物の気持ちになって楽しまなきゃ!」と四足歩行で駆け回り、僕や子供連れの家族を楽しませてくれたことがあった。


さすがに思い切って聞いてみた。「自分のこと変わってるって思う?」


彼女は少しがっかりしたような顔をして言った。「そんなわけないでしょ。」


「君の笑った顔が好きなんだよ」と。


そうか。僕の考えは間違っていなかった。好きな人のためにそこまでできる彼女はやはり、変人である。


数ヶ月後、突然彼女は僕の前からいなくなった。


寒くなってくると、今でも彼女のがっかりした顔を思い出す。

星空を信じ出かけよう

築20年の木造アパートはよく冷える。



僕の年とさほど変わらない家に住み始めて一年余り。この街での暮らしもそれなりに慣れてきた。


大学を出てすぐに荷物をまとめてこの街にやってきたので、当然僕を知っている人間はどこにもいない。


つまり僕は社会人になると当時に新たな生活をスタートさせたのである。


日当たりが悪く、夏は暑さ、冬は寒さの影響をもろに受ける。


初めての部屋選びは完全に失敗だと言えるだろう。


学生時代はどちらかといえばまじめな方ではなかった。やんちゃや馬鹿なこともした。


大学4年の冬に就職活動を始め、特にやりたいことのなかった僕は、たまたま募集のかかっていた現在の勤め先を見つけ、持ち前の人当たりの良さで内定をもらう。


7時起床。9時出社。6時退社。12時に寝る。


社会人になってからは学生の頃とは間逆で規則正しい生活。


アスリートが決められたトレーニングメニューをこなすように、毎日を過ごしていた。



それにしても今朝はやけに冷える。


瞼を開けるにはまだ早かったが、隣人の目覚まし時計の音がうるさく、もう一度眠ることは難しい。


まったく、早起きな隣人だ。


そして体を起こす前にまどろんだ頭の中で神様にいつものお願いをする。



「どうか今日こそは変化した一日を。」




To be continued