濃厚なキスが好き。触れるだけのキスも好きだけど唇の全てを味わうように隙間なく交わすキスが好き。
諒さんとの共有のアルバムには沢山の私の痴態が収められてる。
2週に一度変わるパスワードが先ほど届いて開けてみると体の奥が疼く写真が視界に入る。
その中で諒さんのお気に入りのマークが新たに増えてることに気づいた。
それはキスの後の写真だった。
唇が離れた後少しだけ充血したように見える唇には口紅は跡形もない。口角から垂れた唾液がこの写真の後ポタリと落ちたのは記憶してる。
ゆっくりと手首を束ねられ離れた唇から放たれた言葉に愕然としながらも期待に視点が定まっていく瞬間は私の記憶がはっきりとしている最後の方。
縛るという行為がなくても言われたとおりに体を差し出し与えられる痛みを甘受する。
苦痛に歪む顔に満足気な諒さんの顔を私が見ることはない。そして青い華が身体中に咲き出す頃から私の口角はなぜか緩んでいる。
写真でそれを見るとほんとにこの行為が私には必要なんだと改めて思った。
アルバムには確かにえげつないものもあるけれど私の表情を捉えたものが多い。
こんなに嬉しそうな顔であの痛みやあの辱めを受けていたんだと思うと私にこの快感を初めて植え付けてくれた方を思い出した。もう数十年前のこと。
まだ結婚していた当時の私はピルを飲んで彼の全てを受け止めていた。
でも長くは続かなかったのは彼が多頭飼いだったから。
前に諒さんにこの話をしたらポツリと答えた。
多頭飼いをやるほどのキャパは俺にはないよ。
広く浅くか狭く深くか。
多分広く浅くの方が相手は見つかりやすいのだと思う。
お前だけだよ。という言葉で縛ってしまえば多頭には見えないし会わない時間のことなど疑うことはないのだから。
でも女というのはなんとなくそういう空気をわかってしまう生き物でその度に傷つくことに疲れて蓋をする。嘘を突き通せるほど浅い関係なら要らないと思うのがMの思考なんだろうなと。
こんな話をした記憶があるけど諒さんはその時私に問いかけた。
俺に飼われるか?
そう言われてコクリと頷くと私の頭を撫でて
可愛い女に育ててやる。
と。。意味がわからなかった私はキョトンとした顔をしていたように思う。クスッと笑いながら雑踏の中でも欲しいと懇願する女は可愛いよな。と。
そんなことできるわけないと思っていたけどそれはいとも簡単にクリアした今、彼は楽しくて仕方ないらしい。理由はクリアするテンポが心地よいらしい。諒さんの可愛い女の条件は無限にある。そんな諒さんがアルバムの最後の写真にこんな言葉を書きこんでいた。
俺の奴隷。
その写真は堕ちた私がなぜか悔しくて焦点が定まっていない視線でその時精一杯睨んでいた顔。
無理やり堕とされた現実を受け入れたくないと思っていた感情の記憶が蘇る。気持ち良くて幸せでもっと余韻に浸りたいのに心の片隅に根付いている悔しさと刃向かう体力はない現実を覚えている。
来週の紡ぐ時間が待ち遠しい。
女で居られる時間を与えてもらえる幸せはまだ始まったばかり。だよね?諒さん。