金曜日だ。

そう思いながら朝メイクをしていると娘がこれ貸して。と言って私のアイシャドウを手にした。

地味なブラウンベース。珍しいなぁと思うとハイライトラメが艶消しラメだからそれが使いたかったらしい。

今日は気合い入ってる?と思って聞いて見たらデートらしい。

納得。(笑)

私も人と会うけれど正直気乗りしてない。で、結局当日ごめんなさい。にした。

そもそもそんなに必要でない逢瀬に一番のご褒美デーの金曜の夜を使いたくなかった。当初は会わなきゃいけない理由もあったけど相手の思惑が見えるとどうでもいいというか全くいらないモノだった(笑)

で、会社終わって早々に最寄駅から電車に乗って隣の駅のビジネス街に避難する。

レトロな雰囲気のビジネス街には大好きなカフェがたくさんある。最近では外人さんの列がよくできていて困ったなぁと思っていたので、路地を抜けた場所にあるカフェに行くとあまり人がいなくてホッとしながら座ったのは外の川を眺められるテラス1人席。テーブルにあるメニューを取る。

エスプレッソラテとストロベリーケーキを頼んで川を眺めながら考える。

私なにがしたいんだろう?

なんだか急になにも見えなくなった気がしてぼんやりと過ごすこと2時間。答えは出るわけもなく一日を振り返ってこうなった理由を思い出した。


考えれば考えるほど気分が悪くなりトイレで吐いて外に出ると生暖かい風が纏わりついて余計にしんどくなった。

誰かの電話が鳴っていて耳障りだから早足で歩いても電話の音がなくならなくて自分の携帯がなっていることによくやく気づいた。

諒さんからだったので出たけれどうまく声が出せない。


麻美?どうした?


声が出ずに電話を切ると震える手できぶんわるい。と入れるとどこだ?と言われ周囲の写真を送るとすぐに行くと言われてやってきた諒さんに捕獲された。

なにも聞かない諒さんは黙って自分の部屋に入ると私の服を全て脱がして柔らかなコットンシャツを着せるとそのままベットに促した。


帰る。

少し眠ってからでもいいだろ。


そう言われて背中をトントンと叩かれそのリズムに瞼が重くなる。目が覚めたら諒さんは起きて私の横にいてくれた。

なにも言わずに口にお水を含むとそっと口移しで飲ませてくれる。顔色マシになったな。帰るか?と言われて首を横に張ると私の携帯を差し出して連絡だけしとけよ。と。

LINEを送るとそのままブランケットにくるまっていると抱きしめて明日の予定はキャンセルだからね。と囁いてくれる。それはダメだよ!と言ってもいいから。と言われた。


この人はどこまでも私に優しすぎる。

でもだからこそ服従したくなる。

でもこの優しさは私の動く原動力の一つ。そんなことを思いながらそのまま朝まで眠った。


朝目が覚めたら諒さんは隣で寝てて寝顔もかっこいいって反則だよなぁと思いながら首に手を這わせると一気に手を掴まれて組み敷かれ頸動脈を掴まれた。途端に力が抜ける。

軽動脈を絞められるといつもこのまま時間が止まっても全く後悔ないと思うと嬉しくて口元が緩んで口角が上がる。


なに嬉しそうにしたんだ?


その声に答えようと口を動かしても声は出ず魚のように口をパクパクさせる私を見ながらさらに圧がかかる。そして同時に加えられる刺激に感情も体もぐちゃぐちゃになる。

私が私でいられる場所はここなんだ。

そう思うと嬉しくて頼らない腕を諒さんの首に回しておねだりした。

クスクスと笑いながら圧が解放されて私は呼吸を整えながら諒さんをみると


そんなに嬉しそうな顔すんな。


と言われた。でも仕方ないじゃん?好きなんだから。