今宵のBGM

今宵のBGM

不定期に、その日の夜に聴いた音楽について日記のように書いていこうかな、と思ってます。

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久しぶりにハイドシェックの宇和島ライブシリーズの2つ目(1991年録音)を引っ張り出してきた。

 

その中の、今日はトップに収められている『悲愴』について書いてみようと思う。

 

個人的に、彼の演奏は、とても癖があるように感じていて、例えば、『悲愴』の1楽章の出だしなどは、思わず楽譜を見直したくなるリズムで奏でていたりする。自分の暗譜した内容に自信を失うような、堂々とした表現は、清々しいくらいのもので、『あぁ、こういう演奏もありなんだな』と納得する。

 

録音の質のせいなのか、ペダルが煩わしくなく、粒が一つ一つとても綺麗に立ち上がっていて、クセが気にならなければ、聴いていてとても心地よい。強弱もとても繊細に表現されており、歯切れの良さももちろんだし、様々な方法で隠れた旋律を浮かび上がらせて立体的に演奏している。ともすれば、

 

2楽章は、一台のピアノで弾いているのか疑ってしまうほど、旋律が美しく浮かび上がっている。この遅いテンポで聴き手を惹きつけるのはなかなか難しいはずなのに、まったく苦にならず、刻まれる秒の間隔に変化はないはずなのに、時間がそこだけゆったりと流れているかのように思わせてくれる。

 

3楽章は、2楽章とのコントラストもあるせいか、かなり速いテンポで進んでいくけれど、それがまた風を切って颯爽と走っていく場所のようでとてもカッコいい。間の取り方は、パリコレのデザインのようで、そのまま舞台に素人が出すと大失敗するようなものだけど、前後の繋がりや曲全体の構想から非常に説得力に富んでいるので、ベートーヴェンの奏法から逸脱している気が全くしない。

 

秀逸なピアニストの成せる技の一つとして、聴き手を無条件に納得させるものがあるように思っているけれど、同時に、私のような凡人は決して真似をしてはいけない表現でもある。

 

💿収録曲💿

Eric Heidsieck

 

1. Piano Sonata No. 8 in C minor, Op. 13 "Pathetique"

2. Piano Sonata No. 14 in C sharp minor, Op. 27-2 "Moonlight"

3. Piano Sonata No. 23 in F minor, Op. 57 "Appassionata"