人間社会は、秩序ある弱肉強食で安定が保たれている。


ごく一握りの勝ち組と、その手足になって社会を支える負け組という

ヒエラルキーが存在しなければ、社会は瓦解する。


私は、この冷厳な構図を否定しない。


なぜならば、上に立つ者は高給を得る代わりに

相応の責任、労働時間、高スキル、忍耐力、努力が

必要だからだ。


我々のような負け組は、薄給だが、社会に対して

重責を背負う事なく、気楽に生きていかれるわけだ。


すなわちこれが最も美しい社会のあり方である。

しかし、今の日本のトップたちは、負け組の扱いが下手すぎる。


負け組は、生かさず、殺さず

「自分たちは平和を享受している」

と、騙さなければならないのだ。


ところが今の負け組は、生かされる事なく、殺されるだけなので

消費を忌避して、経済を冷やし続けている。

さらには、結婚も出産も忌避し、将来的に納税額や

GDPも冷やしていく事になるだろう。


まさに静かなるテロリズムである。


追い詰められた若者は、ひたすら利己性だけを助長し

公共心も道徳心もないモンスターとなりつつある。


貪欲なる旧世代が作ってきたこの日本という国は

モンスター化した若者たちによって、血を流す事なく

滅びるのかもしれない。


失う物のない我々は、この国が滅びようとも

死という安息が得られるだけだが、エライ人たちは

さぞかし、無念な事であろう。

昔、私は、海外で人身売買がかつて行われていたという

現場を見学した事があった。


そこで聞いた話は、悲惨とかそんな単純な日本語では

表現しえないほど、おぞましい物だった。


そして、その商売を牛耳っているのは、ほとんどが

この国へやってきた外国人たち。

そして、その顧客も外国人がほとんど。


よその国の人間に、自分の国の女子供を商品にされ

おぞましい人生を送らされていくのを、その国の男たちは

ただ見ているどころか、わずかな賃金のために

ブローカーたちに、顧客たちに尻尾を振っていた。


この商売の顧客の中には、今、悠々自適に老後を楽しんでいる

日本の裕福な人々もたくさんいたらしい。


そう、日本を壊して、自分たちだけ悠々自適な老後を

暮らそうとしている層の方々が特に優良顧客だったようだ。


さて、その方々がこの日本を壊した結果

かつてのその国ほどではないにしろ、似たような状況に

なりつつあるのも事実である。


さて、その方々の娘たち、孫たちが、近い将来

かつてのその国の女子供らのような人生を歩む事になった時。


彼らは、かつての自分たちの醜い姿を

思い浮かべる事ができるのだろうか?

今日、結婚に関する議論をしてきた。

相手は職場の同年代の女の子。


「何で職場の若い男の人はみんな結婚しないのか?」


と聞いてきたのが始まり。


「さあ?みんな金ないですしねぇ、ハハハ」


と、適当に返していたのだが、話題を引っ込める気配がない。


「私の父は、貧しいながら家を買い、妻子を養ってきた

 貴方たちに、それができないわけないでしょう」


私は苦笑しながら


「そうですねぇ、なるほど、なるほど~」


と、作り笑顔で心を込めずに相槌を打っていたのだが

どうやら、話に乗ってきたと勘違いされたらしく

さらに熱弁をふるってきた。


「なぜ、父たちがやってきた事を、今の若い男はできないの?

 そんなに女と子供を養うのがイヤなわけ?

 最近だったら、共働きだって普通だし、男の負担は小さいはずよ?」


しつこい。

ホントにしつこいので、少しだけ本心を言ってあげた。


「あー・・・それじゃ、順番に説明していきますね?


 1.家は買えない。

   買っても完済できず、借金抱えたまま手放す事になる。

 2.恋愛はできない。

   なぜならば、彼女がいれば金が無くなる。

 3.結婚はできない。

   なぜなら、妻子がいれば金が無くなる。

 

 以上です」


これを言ったら、絶句された。

傷つけられたような表情で、彼女は反論する。


「結婚って、そんな物じゃないでしょ?

 夫婦で支えあって、マイホームを手に入れるなんて

 ステキじゃない?」


「支えあうには、経済力が必要です」


「でも・・・!」


「勘違いしないでほしいのですが

 私はマイホームも、恋愛も、結婚も否定していません。

 選ばれた人間だけがすべき物だと言っているのです。

 運動の苦手な人間が、プロ野球の選手になれるでしょうか?

 勉強の苦手な人間が、高級官僚になれるでしょうか?」


「恋愛や結婚って、そ、そこまで大層な物じゃないと思うわ?!」


「そうなんです、そう思い込んでるんです、みんな。

 恋愛や結婚は、誰もがする物だと。

 しかし、そういうものは、幸せになるためにする物だと

 思うんですよ。


 ハッキリ言いますよ。

 

 私のような負け組は、恋愛や結婚で

 幸せになれる理由も能力も無いんです。

 だから、興味を持たない。


 ね?何ら不思議ではないでしょう?」


そこまで言って、彼女の顔が少し青ざめているのに気づいた。


少し危険な領域まで本心を見せてしまった事を後悔しつつ

適当に話をごまかした。


まぁ、しかし、これで二度とこの手の話題を

振ってこなくはなるだろう。


全く、こっちは平穏な孤独がほしいだけなのに。

ああいうタイプの人は、私の人生に関わってほしくないものだ。