2年連続でオースミハルカが先行し押し切ったことや過去に逃げ馬が好走していたことから、先行出来るデアリングハートやダンスインザムードが人気になったが、彼女らは自分の内面との戦いの方が大きかった。


 ダンスインザムードはデビュー以来最高馬体重で、デビューから30kgも増加していた。加えて、パドックではこれまでよりはマシではあったものの、やはり入れ込みが激しい。滞在競馬でこれでは秋も輸送に懸念が残る。レースでは、一完歩目に遅れ、慌てて手綱をしごいたら馬が行きたがる最悪のパターン。道中、スターリーヘヴンと並走する形ではあったが、完全に折り合いを欠く競馬になった。このような惨敗もあるかと思えば、天皇賞やマイルCSのように、アッと驚く競馬も見せるのが彼女。ただ、今年の競馬内容からは、一変の気配がない。


 初距離となったデアリングハートは、スタート直後に行きたがるもHペースに助けられて、道中はスムーズな競馬。直線で伸びを欠いたのは、休み明けであることと、やはり距離が長かったのだろう。チャカつく気性も合わせて考えると、やはり距離はマイル以下が良いのかもしれない。


 勝ったレクレドールはこの一族の中で一番馬体が雄大に出た馬で、昨秋ローズSを快勝した時には一気に登りつめるかと思ったが、それ以後足踏みを繰り返してしまった。前走、マーメイドSでは馬場が湿っていたことや展開不向きが挙げられるが、今回のように前に行って結果を残せたことを考えると、要は気分良く競馬が出来るかどうかだろう。それは全ての馬に言えることだが、やはりHペースになった方が、この馬らしさが活きる。


 ヘヴンリーロマンスは年明けからリズムを崩した走りをしていたが、洋芝でようやく復活。中山牝馬Sや福島牝馬Sでもそれほど負けていないが、やはり阪神や札幌の地のような馬場が合うということだろう。この手の馬の一変には注意を払いたい。



 チアフルスマイルはやっと良血が開花してきた。安定して力を出せるようになった今は、重賞でもそれほど大崩れなく走れるだろう。今後もGⅢレベルでは注意が必要。注意というよりも本命対抗にする馬だろうが。

 “小倉の鬼”と形容するだけでは、言葉が足りないのではないか。そう思わせるほどの圧勝だった。


 58.5kgの斤量を背負っていたことにより、これまでより前々の競馬になるのではないかと思っていたが、鞍上・武豊が選択したのは「より末脚を活かせるかどうか」だった。スタート直後に、スムーズに馬場の良い外目に出し、やや早めに流れる先行勢をじっくり見ながら、3角過ぎから徐々に動きだし、小倉のスパイラルカーブを利用して一気に先団に取り付く。直線も外外の馬場の良い所を通りながら、内にいる先行馬を差し切る。彼が思い描いていたレースが完璧に出来たのだと思う。そして、それに応えたメイショウカイドウも小倉ではまるで別馬のように快走する。何が彼をそこまで奮い立たせるのだろうか。



 敗れた馬は、メイショウカイドウとは力の差があったことを認めざるを得ない内容だっただろう。

 54kgの軽ハンデを味方に、終始メイショウカイドウをマークしたワンモアチャッターは、スタート直後に若干行きたがったものの、それ以後は上手く後方で折り合えた。直線でやや狭くなったが、メイショウを脅かすほどではなかった。


 小倉の舞台では大崩れのないツルマルヨカニセは、展開のアヤとでも言うべきか、今回に限っては動くのが早すぎたか。敵は先行馬ではなく、後続にいたが、前を残さないという小牧騎手らしい仕掛けだったと思う。ハンデ差を考慮すればワンモアとの差はない。


 セフティーエンペラーはやはり1F長いのか、内を通った影響か、G前では脚が上がり加減だった。間隔を開けた影響はそれほど見られず、このまま上手く調整すれば、秋はまた福島記念でお世話になるだろう。



 5着以下の馬は、明らかに上位4頭と差があったので、次走以降、自己条件に戻る馬もいるだろうが、それほど目を見張った内容のある馬はほとんどいなかった。ただ、ニホンピロキースは、4角手前で前がつまり、それに馬場の悪い内を通らされて、直線もう一度巻き返す姿勢を見せていたので、展開と馬場次第で次走も狙える馬に挙げておく。

 アドマイヤハヤテ 牡3  父バブルガムフェロー

 8/14 500万下 新潟ダ1200m 3着 休み明けで+22kgの馬体。パドックを見た印象ではそれほど太いとは思わなかった。ただ、ちょっとイライラして歩いてたように映った。スタートは普通で、道中4番手の外側。掛かるのを抑えながらという騎乗。直線に向いていつでも交せる手応えかと思いきや、追い出すとそれほど伸びず、逃げたロンジェ、後ろからきたセイウンヲツカムに交わされ3着。叩いて上昇すると思うので、次走も馬券圏内には来るだろう。

 エイシンアモーレ 牝2 父エイシンワシントン 母エイシンアイノウタ 栗・瀬戸口

 8/6 フェニックス賞 小倉芝1200m 1着 新馬戦に続いて逃げる形になったが、非常にスムーズな競馬で押し切り。スピード能力の高さを見せ付けた。陣営は控える競馬を試したいと思っているようだが、控えて活きる血統でもないので現状でいいのではないかと個人的には思う。

 ラッシュライフ 8/7 函館2歳S 2着 新馬戦を観た時は、前肢~胸前がしったりした造りでサクラバクシンオー産駒らしい馬だと思った。けど、硬い印象を受けたのでここで走れられるとは想定外。スピードのある所は見せたし、1200mならOP特別を含めて稼げるんじゃないかな。距離が延びるのは良くないと思うから1200~1400mまで。

 ピサノフィリップ 8/7 響灘特別 小倉ダ1700m 1人3着 前走桜草特別はHペースを追走し、差し馬にやられたが、今回は落ち着いたペースになって、降級馬2頭にまんまと押し切られてしまった。休み明け以降の競馬を見ると、母父ヘクタープロテクターの影響か揉まれるのが良くないのかも。外枠での走りを一度観てみたい。だが、素質は1000万下では最上位。

 モエレジーニアス 牡 父フサイチコンコルド 母シャルナ 北海道 堂山厩舎


 8/7 函館2歳S 函館芝1200m 1着 前走ラベンダー賞同様、センスの良い走りをした。気性が素直で鞍上の意のままに競馬出来ることがセールスポイント。函館の芝もマッチしているのだろう。今後は距離延長と相手強化、高速トラックが課題となる。未知の部分が多いが、2歳戦の間なら通用するのではないだろうか。

 2歳重賞ほど難しいものはないと思う。それは、その馬の競馬の形も固まっていない馬ばかりが集まるレースだからだ。それも、函館2歳Sは、2歳馬にとって最初の重賞。しかも、重い洋芝が特徴の函館で最終週。荒れる要素は多分にある。


 アドマイヤカリブは、父サクラバクシンオーであり母父ゴーンウエスト。確かにアドマイヤカリブの緒戦の内容は素質を見せ付けたものであったし、デザーモもそれを感じ取ったのだろう。しかしながら、このレース質にあった血統の持ち主ではなかった。


 勝ったモエレジーニアスは父フサイチコンコルド×母父ダルシャーン。2着馬のラッシュライフはカリブ同様サクラバクシンオー産駒ではあるが、母父がデインヒル。ノーザンダンサー系(以下ND系)である。


 今年を含めた6年間で、ND系を父か母父に含んだ馬は、18頭中13頭が3着以内に入っている。一昨年、1番人気で5着に沈んだナムラビッグタイムも父サクラバクシンオーであったが、母父はGreen Forest(ハイペリオン系)だった。しかし、同レースで2着入ったフラワーサークルは父サクラバクシンオーであったが、こちらは母父がマルゼンスキー(ND系)だった。


 今年の2着馬ラッシュライフと共通するのは、母父がND系であり、牝馬であるということだ。これは来年以降も覚えておきたいデータである。



 血統は、そのレース質を測るものであるが、それは一つの要素でしかない。それだけに、このデータを盲目的に信じることは危険であるが、それも競馬の一つの楽しみである、そう思いたい。


 モエレジーニアス 牡2 父フサイチコンコルド 母シャルナ 北海道 堂山厩舎

 グランプリシリウス 牝 父アグネスタキオン 母フライングカラーズ 栗・北橋厩舎

 7/23 2歳新馬 小倉芝1200m 1着 追い切りの動きから評判になっていたが、実践でも好スタートから直線は持ったまま。母系は距離延びてあまり良くない面はあるが、小倉2歳Sの有力候補。競馬に行って素直なのがいい。


 8/6 フェニックス賞 小倉芝1200m 3着 終始3番手につけていつでも動けるような手応え。しかし、4角手前から雰囲気が怪しくなって、直線では逆に突き放されてしまった。初戦の内容からすればもっと動けていいはずだが。ちょっと一本調子すぎる面があるのかも。

 マルカラスカル 7/3 加古川特別 1着 54kgの前走でラッキーブレイクに1.0差だったからある程度はやれるかと思ったが、52kgの今回は予想以上の走り。有力馬が後ろに控える展開も向いた。ただ別定や1600万下で上位を争う力はないので、当分は消しでいい。