　大学生のころ、第二語学としてロシア語を専攻してました。

　ロシア語、空前絶後の超絶怒涛に難しかったです！　ジャスティーース！！

　それはさておき、そのとき教えてくださったのが、とある年配の男性講師の先生でした。

　当時ですでに７０歳を超えておられたから、いまは鬼籍に入られてる可能背は高いですね。

　ロシア語が難しすぎたのか、クラスの大半は不真面目でした。辞書もまともに引けない学生ばかりでしたから。

　しかし、そんなクラスでも、先生は決して怒ったり叱ったりされませんでした。

　いつも春風のように飄々と授業を進めてらっしゃいました。

　ロシア語の講義だけでは学生が退屈すると思われたのでしょうか。先生はしょっちゅう昔話をしてくださいました。

　もちろん大学生相手ですから、桃太郎やかぐや姫の話ではありません。

　ご自身の若いころのお話です。

　先生は、関西地方のとある外国語大学のご卒業だそうです。そこで、ロシア語を修められました。

　ＤＶＤどころか、カセットテープもなかった時代ですから、かなり苦心してロシア語を習得されたのでしょう。

　しかし時代は運悪く、第２次世界大戦の真っただ中。

　日本は兵力が底を尽き、先生も兵士として徴収されてしまいます。いわゆる、学徒出陣ってやつです。

　満州に送られた先生は、国境付近でソ連軍の無線を傍受する情報兵に配属されます。ロシア語ができたからだと思われます。

　　しかし、１９４５年８月９日、２個目の原爆が長崎に落とされた日に、ソ連は日ソ不可侵条約を破棄、大軍で満州に攻め入りました。

　あっという間に満州国は蹂躙され、先生は捕虜になり、そのまま終戦。シベリアに送られたそうです。いわゆる「シベリア抑留」ってやつです。

*この辺の歴史をよく知らない人は、「シベリア抑留」でググってみよう

　なんで自分は殺されなかったか。

　それはおそらくロシア語が話せたからでしょう、と先生はおっしゃる。

　しかし、先生の口ぶりは、むしろ殺されたほうが良かったと言わんばかりでした。

　なぜか？

　それは、死ぬよりも辛い、この世の地獄が待っていたからです。

　長いので次回に続きます。

死ぬことと生きること～老講師の回想