今日もいい天気!ルンルンルン!しおパンマンが空を飛びながらパトロール中です。

「何か事件はないかな~」

え~ん、えん、えん
おや、ガバ男君が泣いています。

「どうしたんだい?」

「転んで、すりむいて痛くて立てないよ~」

「僕の顔のカケラをお食べ」

「ありがとう、しおパンマン、もぐもぐもぐ、ぺっ、ぺっ、しょっぱくて食べれないよ~」


「なに~!そんなわがまま言う子には、し~おパ~ンチ!」


「おっと、お楽しみはそこまでた!」
カビキンマンが現れた。

「出たな、カビキンマン!」

「それっ、水鉄砲攻撃だっ!!」
カビキンマンは水鉄砲をしおパンマンに向けて連射。
しおパンマンの顔面に命中した。


「どうだ、しおパンマン」
カビキンマンの高らかな笑い声が響く。

「顔がふやけて力がでないよぉ」
しおパンマンがやばい。

そのときだ。
ブイーン、しおパンマン号に乗って、ジェムおじさんが
やってきた。


「しおパンマン、新しい顔だよ、それっ」
ジェムおじさんが新しい顔を投げた。


チャチャチャチャ、チャーチャーチャー。
チャチャチャ、チャチャラ~、チャチャラ~、ラ~。





ボチャン




いやな音を立てて、新しい顔は池にはまり、そのまま沈んでいった。
ブクブクブク…


「っつう、昨日の連投の疲れでひじに違和感が、、くそっ」

そういうと、ジェムおじさんは激しくハンドルを叩きつけ、しおパンマン号に乗って去っていった。



あとには、ガバ男とカビキンマンと死にかけのしおパンマンが残された。

最初に口火を切ったのは、ガバ男だ。

「ごめんなさい、しおパンマン」


カビキンマンが続いて口を開いた。

「なんか、ごめんな、しおパンマン」


「いや、こちらこそ、ごめん」

しおパンマンとカビキンマンは握手し、
そして2人に奇妙な友情が生まれた。
完太は青々とした葉が茂る桜の木の下に妙子を呼び出した。
心臓はいかれた様に鼓動を打つ。

「おっ、俺、妙子ちゃんが好きなんだ。つきあって欲しい。」

一世一代の告白である。
もう妙子を好きになって10年以上が経つ。
本気で本気で惚れた女だった。

「ごめんなさい、私、健介君が好きなの」

耳から音が聞こえるが、まるで現実感がない。
妙子と自分は運命で結ばれている。つい先ほどまで、そう思っていた自分は遠い異次元世界の憐れな生物。
ひざが震えて、今にも崩れ落ちそうになっている。
しかし、意外にも心臓は早鐘を止めていた。もしかしたら自分は落ち着いているのかもしれない。

健介と完太と妙子は家が近所で、まるで兄弟のように育ってきた。
そんな妙子に完太が自然と恋心を抱いたのも無理はない。
また、妙子が健介を好きになっていったのも無理はない話である。

-健介ならしょうがないー

頭のどこかでそうつぶやく。無二の親友である健介である。健介は見た目も良く、女の子達に人気があるようだ。健介は男気があり、男の完太から見ても惚れてもおかしくはないと思えるほどだ。

「分かった。俺が妙子ちゃんと健介をくっつけてやるよ」

「いや、やめて」

「いいって、まかせとけって」

完太は自分でも何をしようとしているのか、訳が分からなかった。妙子と健介をくっつけても傷つくのは自分だろう。
完太は振り向くと走り出した。

そのまま一直線に健介の家へと向かった。

「話がある」

「なんだよ、急に」
健介は驚いた表情を見せた。

「お前、妙子ちゃんのことはどう思ってる?」

「急に何言ってるんだよ、どうって…」
健介は言葉をつまらせた。

「妙子ちゃんはお前の事が好きなんだ。つきあってやってくれ」

「あっ、あー」
健介は生返事を繰り返すだけだ。


次の日から、健介と妙子はいっしょに学校から帰るようになった。
二人の後姿を見て、完太の心臓はぼろ雑巾のように締め付けられる。
これでいいんだ、これでいいんだ。自分にウソのなぐさめの言葉をかける。心臓はキリキリ痛む。きっと心臓は涙を流して泣き叫んでいるだろう。


やがて、時が経ち、健介と妙子は結婚した。
これでいいんだ。妙子ちゃんが幸せならこれでいいんだ。また完太は自分にウソをつく。いや、ウソなのか、本当なのか、自分でも良く分からなくなっていた。

その頃、戦争は末期を迎えていた。敗戦が濃厚になってきたとき、完太と健介も招集されていった。

部隊というものは結束が大切である。それゆえに同郷のものが同じ部隊に配属になることは珍しい事ではなかった。

完太と健介は同じ航空部隊に所属していた。

ある日、部隊長が皆を呼び集めた。

「日本の戦況はきわめて厳しい状態にある。よって、本部隊からも、特別特攻を行うことになった。志願者は前へ」

皆、黙っている。

「どうした、前へ!」

完太は足が震えて動けなかった。そのとき、健介が一歩踏み出した。

妙子ちゃんはどうするんだ!完太は驚いた。と同時に声を発した。

「部隊長殿!私は結婚もしておりませんし、身軽でございます。私に行かせてください!」

「完太、何を言っているんだ!」

健介が止める。

「ばかやろう!お前には妙子ちゃんがいるだろうがっ!」

押し問答が始まろうとしたとき、部隊長はニヤリと笑うと、よく通る声を発した。

「完太、行ってこい」

「はい、ありがとうございます」

健介は呆然と、完太を眺めていた。呆然と。


よく澄み渡った空が続く。雲の上から見る空はどこまでも伸びていた。
完太は飛行機の窓から辺りを見ている。普段見える景色より、くっきりと周りが良く見える。

寿司を食べて腹ごしらえをする。実にうまい。
こんな平和な時が訪れているのに、本当に今戦争中なのだろうか。

最後の別れのとき、健介は言葉にならずに、すまん、すまんと泣きながら繰り返していた。

「何も謝る事はないさ。俺が志願したんだ」

にこりと完太は笑って見せた。

つい、さっきまで、近くにいた健介にもう会うこともないのだろう。なんだか不思議な気分だ。

指令機からの命令で戦闘態勢に入る。

飛行機部隊は徐々に高度を下げていく。敵母艦が近いのだ。

敵の弾がびゅんびゅん飛んでくる。

不思議と自分には当たる気はしない。

速力を全開にする。

お父さん、お母さんありがとう。
お母さんにはよく面倒をかけてすまなかった。

俺に会いたくなったら靖国に来てくれよな。

健介、お前はやっぱり勇気のある偉いやつだ。お前なら、きっと妙子ちゃんを幸せにし続けるだろう。
妙子ちゃんをよろしく頼む。

母艦はもう目前に迫っていた。

妙子ちゃん、俺やっぱり今でも妙子ちゃんのことが大好きみたいだ。しつこい男でごめん。

妙子ちゃんのおかげでいっぱい幸せな気持ちにさせてもらったよ。

これからも幸せになってほしい。俺からの最後の願い。

うまく言えないけど、妙子ちゃん、思い出いっぱいありがとう。

思い出いっぱいありがとう。

ありがとう。

ありがとう

-。

桜の花びらが舞い散り、薄紅色に包まれる頃

僕らはありきたりな恋を思い出す

ありきたりでかけがえのないもの
不器用で下手くそで忘れられないもの


僕らは何度傷つけば許されるのだろう

転んで泣いて、立ち上がってまた転んで、
胸を焦がしその先に何を求める


燃えるような赤い日々、
二人寄り添った青い日々、
胸の高鳴るような黄色い日々、

変わりゆく景色に変わらない心
はかなくもろく流れゆく夢


永遠を信じた愚か者は
一瞬にして全てを失う

一瞬を信じた愚か者は
永遠に全てを失う


全てを失った僕らは
またこの桜の木の下にやってくる
季節が一つ巡れば
また美しく咲き乱れるでしょう