例会~会員の話を聞こう 2019.2.8例会
私は調剤薬局を経営しており、今日はお薬の話をします。
皆さん、ジェネリックをどう思われますか。ジェネリック
とは、同じ成分が、同じ量入った、同じ効能の薬のことを
言います。同じ効能というのは“同じ効果”というものではありません。効能というのは“こういう菌を殺すと言う性質”を示しているだけで、効果を表す意味ではありません。ということでジェネリックと表現されていても“その効果はいろいろ”というのが実情です。
イトリゾールという薬(水虫に効く飲み薬)があります。吸収されにくく、また熱に弱いという成分であり、低温で小さく砕いて製造する必要があります。そこでジェットミル(超微粉砕機)という機械を使い、低温(マイナス20度以下)の中で成分同士をぶつけて原料を微粉化して、薬にしていきます。そうすると“よく吸収される薬”になります。ジェットミルという高度な機械を持っているのは日本を含め6つの国でしかありません。イトラコナゾールという成分自体を作れる国は多くありますが、微粉化によって吸収の良い薬を作れる国は限られています。つまり吸収の良い薬とそうでない薬がジェネリックという名前の下で同時に売られていることになります。同じ成分だけど効果が大きく違う薬が販売されている訳です。水虫の薬などでは“値段が半分で、効果は十分の一以下”というのもあり、何回使っても治らないということもあるようです。このように「効果にバラツキがある」のがジェネリックの一つの弱いところです。
逆にジェネリックの方が評価できるというのもあります。ここにヒルデイドという保湿材(医薬品)を二つを持って参りました。先発薬はピンク、ジェネリックは青色です。まず皆さん手の平に塗って感触を確かめてみてください。それぞれ違いがあります。ピンクの先発薬の方は皮膚にまとわりつく機能を高めてしっとり感が強い。脂分が多く保湿効果は高い。反面、化粧が崩れやすい人や肌の荒れやすい人にはお奨めできない点があります。一方の青色のジェネリックの方は保湿という効果は少し落ちるかもしれませんがさっぱりしています。製造工程でアルコールを加えており“さらっ”としています。化粧崩れも少ない。この例は主成分の違いではなく添加物の違いが出ています。ジェネリックでは主成分が同一というのが定義ですが主成分でない所の違いが大きくなることもあります。使用していて肌荒れやカサカサが生じるような場合にはジェネリックの方をお勧めしています。ジェネリックが否定されるものでもありません。
メチコバールという薬(しびれなどに効く)があります。メチコバールがジェネリックといてびっくりされる方もあるかもしれません。先発薬は粒が大きく飲みにくかったため、メチコバールの方が飲みやすい、更に効果も高いということで、今では先発の姿をがほとんど見ることがなくなっています。これはジェネリックの方が上回った事例です。
以上のようにジェネリックについての評価はいろいろとありますが、私は薬剤師として「純粋に良いものを選びたい」と思っています。
最近は薬局の方もジェネリックを使う方が評判が上がることもありまして、ジェネリックを勧める傾向にもありますので、しっかりと説明を聞いて惑わされないようにする必要があると思います。
また世の中でジェネリック、ジェネリックというので先発薬が売れなくなり、売り上げが激減しました。そこで先発薬の会社が傘下に別会社を作ってそこで同じ薬を製造することが増えてきました。これをオーソライズドジェネリックと呼んでいます。同じ薬を同じ原料、同じ工場で製造し、刻印だけ変えて販売しています。先発薬と同じ系列の製薬会社の一社しかそうなることはできません。このようにして先発だけでなくジェネリックでも販売しています。
痛み止めのロキソニンという薬は40社が作っています。そのうち3社の薬は私たちの薬局では買えません。それは全国でも上から3社程度の超大手の薬局しか仕入れることはできません。そのルートでは安く仕入れることが出来るのかもしれません。同じ薬でも先発なら一粒100円のものがオーソリライズドジェネリックなら98円などになります。薬によっては先発に比べれば非常に安く仕入れることができる薬もあります。薬局としてはできるだけ安く仕入れたいという気持ちになりやすいところではありますがそれが過ぎると弊害が生じると思います。色々な考えがありますが“商売だけでやっている薬局ではないところ”を選んでいただきたいと思います。
大きな病院の前にはみんなが調剤薬局の場所を確保したがります。そして大半は大手の薬局がいい場所を占めていることが多いのも現実です。また。大病院の周りの商店街では調剤薬局でひしめき、商店街を潰してしまうという面もあります。
皆さんには是非地元の信頼できる薬局を使われることをお勧めします。人通りの多い、駅前の薬局というのではなく、“地域と共存しているような、地元の信頼できる薬局”の方が安心してお付き合いできるのではないでしょうか。ジェネリックを使うにしても使わないにしても薬局に色々相談してみていただきたいと思います。それらの“質問に十分説明できる薬局”であれば、信頼できる薬局と思います。また皆さんがよくご存じの会社の薬を使っていただいた方が安心でもあると思います。