中ノ瀬『蒼欧商事はエネルギー、社会インフラ、鉄鋼などあらゆる事業を展開していて、今や日本のトップ総合商社なのはなんとなく知ってるよね。昔は七菱商事、住都商事、四ツ井物産、野村忠商事の四大商事時代だったんだけど、そこへ急に出てきたのが蒼欧商事。まさに、ギャンブルが合法化してから出てきたんだ。』
帝『なるほど。となると、なぜそこまでデカくなったかは、ギャンブルが関係しているのか。』
中ノ瀬『そのとおり。蒼欧商事はギャンブル界の精鋭を集め、M&Aを繰り返して大きくなった。そしてついに2022年に事件は起こる。』
凪『住都商事の買収。。。』
中ノ瀬『そう、四大商社の一角までもM&Aで買収し、傘下に収めてしまったんだ。』
凪『いや、待てよ。M&Aっていうけどさ、仮にギャンブル勝負するにしても住都が認めるわけねえじゃん。メリットないもん。』
中ノ瀬『普通はそうだろうね。住都が勝負するわけがない。ただ、蒼欧はその時、住都がもっていない宇宙事業を賭けた。』
凪『蒼欧の宇宙事業といったら、NASAも協力している有名なやつじゃん。』
中ノ瀬『住都は喉から手が出るほど欲しかった事業だね。でも、負けを考えるとリスクが高すぎる。ギャンブル勝負をするときは、暗黙の了解で対等な価値あるものを賭けることになっている。蒼欧の宇宙事業と、住都商事では全く釣り合わない。そこでどうしたかと言うと、蒼欧はコイントスを提案した。簡単なギャンブルだよね、表が出るか裏が出るかを賭けるだけ。でもそれでは釣り合わないなら、住友が10回連続で外せば負けということにした。』
帝『つーことは、住都が勝つ確率は1023/1024か。へえ。おもしれえな。まあ間違いなく勝つだろうね。』
中ノ瀬『でも蒼欧は動きが速いんだよね。すでに住都の幹部社員を買収していたわけ。社員の名は釜谷哲朗。今は蒼欧の役員だね。』
凪『蒼欧の役員!?』
中ノ瀬『まあ役員は肩書きだけで、別に能力が高いわけじゃない。真面目なことだけが取り柄のオヤジさ。蒼欧は、そんな釜谷に対し、10倍の報酬を渡して入社させることを条件に買収に成功。住都の幹部社員の報酬は1000万を超えるから、まあ軽く見積もっても年収1億だろうね。更に、釜谷には障害を持つ子どもと妻がいるんだけど、彼らの幸せな生活を約束していた。まあ逆に言えば、裏切ったら分かってるよなという脅しもあったんだろうけど。その釜谷には、とにかくコイントスの練習をさせていたんだ。狙ったものが必ず出るようにするためにね。半年かけて釜谷は、コイントスを必ず狙った面を出せるようになった』
帝『なるほど、だいたい見えてきた。』
中ノ瀬『対戦当日、コインに細工がないことを確認すると、蒼欧から住都よりコイントスをする人を出して欲しい。なるべく変な細工をしないような人をね。あそこにいる人とかどうかと。もちろんそれは釜谷だった。住都は釜谷に対してはただの真面目なサラリーマンぐらいにしか思っていなかったから、まんまと受け入れらた。その後の結果は想像通りだね。住都が10連続でハズし、蒼欧に買収された。』
帝『企業がギャンブルでM&Aするという話とかはよく聞いていたけど、住都買収もそうだったのか。』
中ノ瀬『そう、僕らが知らないところで、ギャンブルでの勝負はかなり根付いている。合法化したとはいえ、悪いイメージを持つ人も多いから、イメージ戦略のためにもあまり表には出さないけどね。蒼欧と肩を並べるギャンブル部隊ってのは、聞いたこともあると思うけど、グランパープル、Gold Breath、銀永だね。』
帝『グランパープルもギャンブルによるM&Aをしていたのは知ってるけど、やっぱその世界じゃ有名なんだな』
中ノ瀬『そして今回のトゥエンティワンの買収。蒼欧は会社のすべてを賭けることになった。負ければ蒼欧がトゥエンティワンの傘下に入るんだけど、まあ東峰賭博科出身で固めてるんだから、負けることはほぼない。でもトゥエンティワンにも秘策はあった。この日のために、中途採用でトップギャンブラーを採用していた。東峰、西都、横浜皇凰、城紋大学出身で、各企業のエースを集結させていた。ただ、唯一の誤算があった。蒼欧とトゥエンティワンのスキルは均衡していたが、蒼欧には東峰出身の怪物、冥 悠鳳(メイ ユウホウ)という中国人がいた。彼は当時、世界ナンバーワンとも言われるギャンブルスキルを持ち、世界を飛び回っていたからね。アップルのマイクロソフト買収の裏にいたのも冥だったと言われている。冥の実力に圧倒されたトゥエンティワンは、敗北により蒼欧の傘下に入ったわけさ』
凪『やべえ、すげえ世界があるんだな。お前がギャンブラー目指すのはなんとなく分かったんだけど、なんで東峰を狙わないんだ?難しいのは分かってるけどさ、蒼欧のギャンブルに関わったりできるんだろ?』
中ノ瀬『そうだね、ギャンブラーとして生きるなら東峰出身というだけでどこでも食べていけると思うよ。でも、僕が興味あるのは、その冥をも凌駕すると言われている、紅内。若手のトップギャンブラーの歩んだ道に興味があるんだ。だから僕は、紅内を生んだ明桜大学に行ってみようと思うよ。』
凪『へえ、色々考えてるんだな。ま、俺たちには遠い世界だ、俺はおとなしく早稲田と名古屋大学でも狙っていくよ。帝もさっさと東工大か慶應受けとけよ』
帝『なあ中ノ瀬、ギャンブル専攻はそんなに難しいのか?』
中ノ瀬『そりゃそうだろうね。賭博科で最も入りやすい新潟の翔越大学でまあ名古屋大学ぐらいじゃないかな。でもそんなとこ入っても、ギャンブルの世界じゃ生きていけないけどね。』
帝『。。。なあ、俺でも受けられるとこないか?』
凪『お前何言ってんだよ!無理無理!てかお前株とかFXはできるかもしれないけど、ギャンブルで生きていくとか無理だって!』
帝『ギャンブルうんぬんとかじゃなくさ、ビジネスがそれにより動くんだろ。投資銀行でクオンツやったところで、住都買収やトゥエンティワン買収には関わることは不可能。だったら、ビジネスの頂点を見るにはギャンブルしかねえじゃん』
凪『お前はバカか。。。いや、わかるよ言っていることは。でもお前センターの点数ゴミじゃねえかよ!入れないって!浪人でもして受けるのか?』
帝『いや、もう勉強はつまんねえからやらないだろうな。。。やっぱウルトラCはないかー』
中ノ瀬『ひとつだけ方法はあるよ』
帝『え、マジ?』
中ノ瀬『大阪に帝神大学っていう賭博に特化したところがある。そこは学科試験を一切課さない、ギャンブルの強い者だけに入学が許されるんだ。』
帝『そうなん?あるじゃねえか!』
中ノ瀬『でも帝神は、全国のギャンブルの猛者が集まる大学、少し頭が良くてギャンブルが強いだけじゃ話にならないよ。勉強さえできれば東峰大学賭博専攻に入ることができるやつがうじゃうじゃいるんだから。下手したら、東峰の入試より厳しいかもしれないよ。』
凪『いくら帝が数学できるからって、お前ぐらいの奴は全国に腐るほどいるんだから、やっぱ無理だって!』
帝『中ノ瀬、良い話をありがとう。帝神受けるわ。』
凪『はあ?お前。。。』
帝『いいじゃん、別に他に行けるとこないんだし、帝神なら足切りもされないんだろ?人生最大の、最後のチャンスじゃねえか。結果がどうあれ、俺が受けられるトップ校は帝神ぐらいしかないんなら、受けるしかねえだろうが』
凪『まあお前が受けるって言うなら応援するけどさ。帝神落ちたらどうすんだよ?』
帝『そんときはコンビニの店員のバイトでもやって、細々と生きるよ。まあでもそんとき考えればいいし、とにかく早く出願しなきゃいけねえんだ、中ノ瀬!ありがとう!』
中ノ瀬『期待してるよ。帝には数学で勝てなかった借りがあるんだから、ギャンブラーとして勝負しようよ』
帝『ああ、そうだな。中ノ瀬も受かるよう頑張れよ!』
中ノ瀬『ありがとう。お互いね。』
こうして帝は、大阪の帝神大学を受けることとなった。
受験まであと2週間、こうして、後に世界のギャンブル界隈に衝撃を与えるギャンブラーの歯車が動き出した。