「ふふ」
りなさんが、少し楽しそうに笑った。
そして、急にすっとしょーちゃんにくっつきそうなくらい近づく。
しょーちゃんの目を見ながら、その手をとり何か握らせる。
「やっぱり今、お礼しとくわ。」
すぐに背をむけた。
「じゃあね、ショウリ、ヨシアキ。」
神社の裏の方へ駆けていく。
しょーちゃんはその後姿を見送るでもなく、手の中のものをじっと見つめていた。
「何もらったの?」
のぞきこむ。
「・・・」
そこには、温泉まんじゅうが2つ、ちんまりと座していた。
「・・・どっから出したんだろうな。」
やけに真面目な顔でしょーちゃんはつぶやいた。
「ていうか、持ち歩くものなのかな?」
おばあちゃんのバッグとかからなら、出てきそうな気もする。
そういえば、意外と年いってるって否定しなかったな。
いやでも、さすがにおばあちゃんてことはないか。
それにしても、彼女は荷物を持っていなかった、ような気がするし。
「りな、か・・・」
しょーちゃんは、考え込んでいる様子でつぶやいた。
ふと、おれは今日の目的を思い出した。
「・・・そういえば、白夜くん会えなそうだね。」
「ああ。」
「ウチ、来る?」
「だな、付き合ってやったんだから、メシぐらい食わせろ。」
「いいけど、タマの誤解もといておきたいしね。」
「ああ。」
なんて会話のあと、うちに来たしょーちゃんは確かにタマの誤解をといてくれた。
ただ、やり方には若干の不満を感じた。
◆
「ショウリなんかキライー!
だいっキライー!ヨシアキくさくないもーん!」
タマは顔を赤くして怒っていた。
「なこたぁないっ、古い油のニオイがするだろーがっ。
ありゃ加齢臭だ。オレからは出てないがな。」
「いや、おまえからも出てるって。」
おれは呆れながらツッコむ。
子供(実際にはおれたちが生まれる前から生きている妖怪みたいなもんだが、頭の中身はそんなところだ)のタマを相手に、しょーちゃんはムキになったように言い返していた。
「かれーのニオイなんかしないもんっ」
「するんだよ、オッサンのニオイがな。
そんなもんにオレがムラムラくるわけねーだろ。」
しょーちゃんは、おれに魅力がないのを話して聞かせることでタマの誤解を解こうとしていた。
ゲイカップルだと思われるのはイヤだが、自分の欠点をあげつらってあまつさえ力説されるのも、なかなか苦痛だ。
「だいたいなあ、コイツは体もろくろく動かさないからたるみまくってる。
まるでジジィの体つきだ。
誰がそんなの好きになる?」
「そこまでじゃないよっ。」
「ヨシアキじじぃじゃないもーん。」
「いいやじじぃだ。それに顔が地味だしな。」
「それもうただの悪口じゃないかっ。」
「実際おまえ彼女いないだろ。」
「おたがいさまだろ。」
だんだんと、話はおれとしょーちゃんの口げんかになっていった。
「しょーちゃんなんか人相悪くてみんな女の子最初怖がるじゃないかっ。」
「でもオレはモテてたからな。」
「今は独りじゃんっ。」
「好きでそうしてんだよ。」
「言い訳するなよこの狐顔っ。」
「うるせぇ狐憑き。」
「ヨシアキきつねなんかついてないもーん。」
かばってくれようとしたタマの声で、おれは我に返った。
「ぁ・・・、ほらね?タマ、ぜんぜんおれたちラブラブじゃないだろ?」
「お、うまいこと話を元に戻したな。」
しょーちゃんが感心したように言った。
「目的見失うなよぉ、なんのために来たんだか。」
「いや、だからオレがけなすことで説得力って奴がな」
本当かな、とおれは少ししょーちゃんをにらむ。
しょーちゃんは、にやりと笑う。
やっぱりただおれをからかっていただけなんだ。
ため息が出た。