妄想タイム
正門くんの熱は平熱に戻ったのか、まだ喉が痛むのか、確認しなきゃ
勢いよく目覚めたのに、肝心の病人が横にいない
リビングに行くと、作っておいた玉子粥を食べてる彼がいた
【おはようございます、このお粥美味しいです、どうやって作ったんですか?】
『卵スープの素を使っただけだけど』
へぇー、と興味があるのか無いのか、感情が伝わってこない返事をされたが、使っているスプーンがリズミカルに動いていて安堵した
『喉はまだ痛む?』
【まだ少し腫れてる感覚ありますけど、昨日より楽になりました】
それより…と、彼はスプーンを置いた
【ごめんなさい、テーブルの上の○○さんのスマホが光って、通知が見えちゃいました】
あ、うん
【で、LINEが着てて(昨日の雨で風邪引いてないか?)みたいな文章が表示されていて…】
うんうん
そうか、見たのか
アクシデントだな
『誰からのメッセージで、どういう意味なのか、悶々としながらお粥を食べてた訳だ?』
と彼に尋ねると、少し拗ねてる犬のような表情をしてる
今にも泣き出しそうなワンコ相手に、どれだけの真実を告げるのが正解なのか迷った
『まずLINEの確認するね』
そうしてる間にも、ウロウロしている彼の視線
この説明でどうにか飲んでくれ!頼む!の気持ちで伝えた
『昨日、駅での打ち合わせが終わったら、雨が急に降り出して、そこに昔からの知り合いが偶然通りかかって会社まで傘をさしてくれた』と。
病み上がりの彼氏を傷付けるのは本意ではない
言っていない事柄が10%ほどあるが、ほぼ真実を伝えた
LINEは元カレからでした、を言わない選択
もちろん悪いのは全て私なのは自覚している
【たまたま?】
うん、たまたま
【その知り合いの男性とまた会いたいですか?】
彼らしい冷静な問いだった
過去の彼氏たちの存在もチラつき、不快な味の感情を飲み込みながら、私が起きてくるまでの時間、ずっと考えていたんだろう
ここは慎重に『そういう気持ちは全くないよ』と答えた
ふぅ~、と息を吐いた正門くん
【俺も男なんで、ほかの男に負けたないんです】
【だから、雨が降ったときは迎えに行きますから、どんなときでも俺を頼って欲しい!】
『嫌な気持ちにさせてごめんなさい、今度からは頼ります』と、私は彼の手を握りながら謝った
私の言葉を受け入れてくれた彼はとても大人だと思う一方、私の前で大人でいさせてしまったことに罪悪感はある
【ん?ちょっと手、熱ない?体温計と冷凍食品持ってくるから!】
続く