妄想タイム


【いま、ちょっといいですか?】と、私からの返事を待たずに、真横の椅子を引っ張ってきて正門くんが腰掛けた

辺りをキョロキョロ確認してから口を開いた

【熱っぽくて、しんどいです】

マジか!そっちなのか!声が沈んていた原因は!!

安心してちょっと気が抜けたけど、抜けてる場合じゃない

顔をよく見たら目がトロンとしていて、明らかにしんどそう

『他に頭痛とか咳とかは?』と症状を聞き出すと

【喉痛い(泣)】

直感的に、これは高熱出るかも

と同時に何を買い揃えるべきか冷静にシュミレーションした


あと30分ちょっと、定時まで頑張れと彼に伝え、私もその時間内で仕上げられる作業をやった


定時になり彼と共に退社し、タクシーに乗り込み、私の部屋に向かった

その方が物理的に早く彼が横になれるから


タクシーの中で彼は緊張の糸が途切れたか、グダっと私の方にしなだれかかった


部屋に着き、着替えを促したが、その力さえも残っていないようで私が手を貸した

いつも以上に汗をかいていた
備蓄のスポーツドリンクはちょっと賞味期限切れてるけど、まぁ許せ

なんとなく良心の呵責があり、少し薄めて飲ませた


彼を早々に寝かせて、私は買い出しに走った


熱冷まシート、スポーツドリンク、ゼリー飲料、アイスクリーム、冷凍のミックスベジタブルと冷凍ブルーベリー、あと男性用のTシャツと下着

これでどうにかなるだろう


部屋に戻り、氷枕代わりに冷凍のミックスベジタブルを頭の下に敷いた


こういうときって、看病している側も食欲減退するもので、多めに玉子粥を作った


様子を見に行くと、身体はまだ熱い

寒いときは手首や足首を温めると良いと聞くから、熱があるときはそこを冷やせば良い??

半信半疑だけど、ハンカチを濡らして足首に巻いた

今のところ寒いとは言わないから、それで何度かやってみるか


気付けば21時を優に回ってる
多めに作ったお粥を食べていたら、正門くんが突然部屋から出てきて

私を見るや否や【喉乾きました】と訴えてきた

『ベッドの側に何本か飲み物置いておいたけど』

あっ、ホンマや…
一段とポヤってるご様子

【あのー、俺、着替えたんですか?】

『覚えてないの?フラフラになりながらも自分で着替えてたよ』

彼のプライドのために少しだけ偽った


『アイスかゼリー食べる?』

【アイスにしようかな】

『食べ終わったら、Tシャツ脱いで洗濯機に入れといて、私、シャワー浴びてくるからさ』と言いながら着替えを手渡した

【今日、泊まってええんですか?】

『この状態で帰らすような鬼と付き合ってるの?(笑)明日土曜だし、まず熱下げよう』


【ねー、○○さん、俺がアイス食べ終わるまで、ココに座っててください、1人だと心細いから、アカン??】

スプーンを持ちながらの上目遣いって、完全に幼稚園児じゃん、髪の毛あちこち向いてるし

もうアニメとかに出てくる感じじゃん、知らんけど

私は昇天しかけた、可愛すぎて発狂しそうになったのを抑えるのに必死だった

僅かでも油断したら声が出そうだったので、口をギュッと結んで彼の横に腰を下ろした


続く