※ネタバレとまではいきませんが、少々物語の内容や登場人物に触れていきます。








ミステリー小説の女王と名高い、アガサ・クリスティ。


そんな彼女にしてはめずらしく……
というか、唯一と言ってもいいジャンルの著書である。


どんなジャンル?と聞かれると、なかなか難しいのだけど。
本の説明欄には「ロマンティック・サスペンス」と書いてあったっけ。


物語の舞台は、イギリス。
主人公は弁護士の夫を持ち、3人の子宝にも恵まれ、何不自由なく暮らしている専業主婦。


このようにただ表面(スペック)だけを見ると、俗にいう「女の幸せ」と言われているモノの全て持っている女性。
また主人公自身も、自分は女・妻・母としての勤めを真っ当しているという自負も、自分は幸福であるとの自覚もある。


そんな主人公がとある旅から戻る帰路の途中、思わぬアクシデントにより、何もない辺鄙な土地で足止めをくらう事になる。


今までの日常とはあまりにもかけ離れた環境におかれた事で、今まで自分が見てきた世界……
「夫に愛され子供に慕われている」自分自身に疑いを持ち始める───。












とまあ、ざっとこんな感じのお話しなのですが。


物語というよりは一人の女性の回想を淡々と書いているといったような感じなので、読み手によっては途中で投げ出したくなるほど退屈だったり何が言いたいのか全くわからなかったりすると思う。


私も物語の冒頭ではそんな感じ……というか、単純に鼻持ちならねえ女だなと←単なる僻み


が、しかし。


読み進めていくうちに、怒りのような、悲しみのような。


うまく説明できないけど、とにかく心がザワザワして不安になるような……


主人公が自分自身の本当の姿、心理に近づく一歩手前辺りで、私は確信した。








この主人公は私の母、そのものだった。


私の母は専業主婦ではないし、夫は当然弁護士でもなければはっきり言って甲斐性があるとは言えないので(父よスマン)、決して裕福ではないどころかむしろ貧乏である。


物語の冒頭で主人公の姿を、それこそ古い外国の映画に出てくるような身綺麗でお上品な貴婦人を頭に強く思い描いたせい……


つまり私の母と主人公は、表面だけを見ればいろんな意味で違いすぎるがゆえに気付くのが少々遅れたのだった。