457.トキメキの1970年代.レイスリー.ZERO.17 | マリンタワー フィリピーナと僕といつも母さん byレイスリー
「先輩、見せて下さいよ、準優勝の腕前を」
ワタクシは強気で挑発的に言い放った、麻雀は勝負事だ、絶対に勝つという信念で戦わなければ他の誰かに足元を掬われてしまう、友人だろうが親だろうが恩ある人だろうが金を掛けている以上叩き潰すくらいの気持ちでないとそう簡単には勝てない、もちろん適性もあるが同じレベル同士であれば軽い遊びの気持ちでやる人と信念を持ってやる人では全く結果は違ってくる、これは麻雀だけでなく仕事でもスポーツの世界でも共通した事ではないだろうか、仮に負けたとしても最後には必ず勝つという信念や執念が勝利を呼び込む事があるだろう、そして苦労した勝利を得る事で自信が生まれる、この時、ワタクシは相手が誰であろうが自信満々で戦えた。


とはいえ勝負事は平常心でなければならない、燃える心を気負わないように抑え適度な緊張感を持ち神経を指先に伝わらせる「いい感じだ」心の中で呟き対峙した、敵は青山先輩だけではない、芝さんや工藤も油断ならない相手だが、相手が強敵だからこそ心地よい適度の緊張感を味わえるのはというのもある、この時に「生きている」という充実感も味わえてしまう、人によって「生きている」という充実感は皆違うだろう、仕事をやり遂げた時、絶景を眺める時、愛している家族との団らんの時、好きな異性と結ばれた時、他にもたくさん人によって色々と「生きている」と感じ実感する時があるだろう、ワタクシにしてみればこの緊張感こそが生きていると感じる至福の時間であった。


だが実際に始まってみるとお互いに慎重に相手の出方をみるという展開となり安い手を上がり合う淡々としたゲームになってしまった、大きな手は飛び出さないがジワリジワリと上がって最初の半チャンはワタクシが若干プラスの二着で青山サンがトップを取った、上がれる手は確実に小さい上がりを積み上げていく、そして、何より相手に当たり稗を振り込まないのだから点棒が減らず負けない、冒険しないので大勝ちはしないが確実に勝つ麻雀、次の半チャンも同じ展開で進んで芝さんが二着で青山サンが再びトップになった、この半チャンも大きなトップではないので対戦相手は大負けした気がしない、だがそれは錯覚でトータルすると結構な負けになっていく。


次のイーチャンに入りワタクシの親となった、そして牌を見ると驚くべき好配牌、ワタクシの後ろでベンキーとコートが座って見学していた、ワタクシは牌を直ぐに全て伏せた、この二人は感情が顔に出やすく他の打ち手に悟られてしまう可能性があったので全て伏せ牌にしたのだったが一瞬の事なので二人に見られる事はなかった、ワタクシの配牌は白が4枚、發が3枚、中が2枚、南が2枚、九萬が1枚、北が1枚、西が1枚、まさに‘役満を上がって下さい,と言わんばかりだった、ベンキーとコートに見せないように伏せ牌にした為に周りの3人は高い手だと察知しただろうが口に出しては言わない、ワタクシはまず九萬を切った、そして次の順番の牌を引く時に盲牌(指先で牌を触りその感覚で牌が何かが判る)で確認する、麻雀をそこそこ出来る打ち手は盲牌が出来るのが常識だ。


牌を引いてくる時に自然と力が入るがなるべく冷静を装った、そして切ったのは4枚あるうちの白、更に3.4度目は積も切りし5回目の積もで北を切りワタクシはすかさずリーチをかけた、
芝さん「伏せ牌し盲牌してやる程の手ということか?」


ワタクシ「ハハハ、高いですから振らないで下さいよ~、自分で積も上がりしますからね」
5順目の早いリーチは相手に取っては厄介だろう、捨てた牌は僅か5枚で字牌も2枚が場に捨てられている、打ち回すのも骨が折れる、麻雀好きでキッチリと読まれておられる方はワタクシの待ち牌がお分かりだろう、そう西単騎待ちだ、ワタクシがテンパイした時に北と西があり場に一枚出ている西か一枚も出ていない北か一瞬迷ったが西を選択した、北は一枚も出ていないという事は誰かが3枚もっている可能性がある、暗刻(3枚同じ牌)になったいる場合は出ずらいかもしれない、しかし西を誰かが残りの2枚持っている場合は安全牌と考え出してくる場合がある。


西がよかったか北がよかったかで天国と地獄に別れる、それがギャンブルの醍醐味であり怖さなのだ、そして勝つ者がいれば負ける者がある、非情なようだがそれが世の中の常だ、ワタクシの当たり牌の西は青山さんから出た、「ローーーン!」、学生時代に一年365日のうち300日は麻雀に明け暮れていた、場数を多く踏んだ為に役満の数も50回以上になった、だが麻雀をやって自慢話が出来るとしたら唯一この日の手だろう、ワタクシはユックリと牌を倒した、「大三元、字一色、四暗刻単騎待ち、4倍役満!!!」

学生時代のワタクシは麻雀の女神に魅いられていたのでらないかと思うほどいい場面でいい手がやってきた、4倍役満というミラクルな手が出来上がり周りで見ていた皆が驚いた、だが一番ショックを受けたのはもちろん振り込んだ青山さんだったろう、安いレートとはいえ約17万円をほんの一瞬で失ってしまったのだから、当時の大卒の初任給で11.2万円だったと思うがかなりの大金だ、青山さんは3万円だけ置いて残りは次回来る時に持って来ると言ってワタクシも了承し店を出ていった、皆はもう来ないんじゃないかと言ったがオバチャンだけは「きっと来るわよ、青山君は」と信じてていた、その1週間後にちゃんと残金を持ってきた青山さん、そしてニッコリ笑いながらワタクシに「さあ、やろうか、この間のお返ししなきゃ」と言った、ワタクシは「いいですよ、でも返り討ちにしますよ」とニッコリ笑いながら言い返した。

ワタクシと青山さんはその後、何度か激戦を繰り返す好敵手となった、そしてワタクシが4年の最後の時に青山さんは「レイスリーちゃん、社会に出ると解るんだけど世の中には上には上が必ずいるからね、自分が一番強いとは思わない事だよ」とアドバイスしてくれた、「そんな事はない」と言いたかったが腕のある青山さんの言うことだから「きっとそうなのだろう」と思い直しその言葉を胸に刻んだ、その後青山さんとは一度も会う事はなかった。


そして、早いものでワタクシは4年生になっていた、半年近く経って発展しなかった‘麗しの君,の情報が突然舞い込んできた、その情報をもたらしたのがあのゲロ男だった。



いつもご訪問頂きまして誠に有り難う御座います、心より御礼申し上げます。