日曜日。
修繕工事も休みで昼間から窓を開けられる。それでも目の前には足場があり、ネットで覆われているので薄暗かった。
少し深く呼吸してぼんやりと外を眺める。視界の端で何かが動いた。
よく見ると鳩のような鳥がネットの外側にとまっていた。
その日の夕方。
昼にやったように窓を開ける。まだあの鳥がいた。ずいぶん長い羽休めだ。鳥なんだからそろそろ夜目が利かなくなって動けなくなるのでは。ちょっと気になったが窓を閉めた。
それから一時間に一回ほど煙草をやるたびに窓を開け、なんとなく鳥の様子を窺った。やはり同じ場所にいる。
やがて風呂や晩飯をすませているあいだに鳥のことは忘れた。
深夜。窓に近づいたときにふと鳥のことを思い出した。かすかに嫌な予感がして窓を開ける。やはりいた。妙な気分が込み上げ思わずベランダにでた。街路灯などの薄明かりをたよりに眼を凝らす。
手が届きそうな距離なのに鳥は身じろぎひとつしない。注意深く周りを見てみると、鳥はネットの外側にいるのではなく、ポケット状に折り返されたネットの中にいることがわかった。
動かないのではなく動けなかったらしい。少し逡巡したが嘆息を呑み込みベランダの手すりを越えた。
ひとまず無事に保護した。
怪我などはなく意識もはっきりしていて警戒心を剥きだしにしている。だが憔悴しているのか飛ぶ気配はない。丸一日閉じ込められていたのだから無理もなかった。すぐに水をやり、パンくずを用意した。いくらクチバシのところへやっても食べようとはしない。鳩なんだからパンくずはお決まりだろう。空腹のはずだが頑として食べないので無理やり食わせる。それでやることはなくなった。

キジバトってやつらしい。公園とかにいるのとはまた別の種類かな。
野性とはたくましいもので、水とわずかなパンで少し体力を回復した鳥は唐突に飛び立ち部屋の中を暴れまわった。落ち着いたところで捕まえ、サンダルをひっかけて外へ出る。人間に捕まっている以上、鳥にとっては大きな負担だ。動けるなら放してやったほうがいい。
適当な場所の木を見つけ移そうとするが、しっかりと指に掴まって離れようとしない。鳥の足からはぬくもりが感じられ不思議な気分になった。
別れはすぐにやってきた。力強い羽ばたきで鳥は夜陰にまぎれていった。
ようやく布団に潜り込んだ時には午前三時をまわっていた。
酒でもやろうかと思ったが大人しく目を閉じた。


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