去年の悔し涙から丁度丸1年。
予定通りこの日は来た。
この1年は公私共に色々あった。
今もその状況に変わりは無いのだが…
座りの悪い日々の中、唯一ベクトルが変わらなかったのが子供達の空手と言っていいのかな。
去年の悔し涙の直後、次女の結果を聞いた同じ道場の高校生男子の先輩が妻と次女にこう言い放った。
「今回行けんかったら来年からはもう絶対無理やわ。残念でした!」
この先輩高校生がうちの道場で史上唯一の小学生代表経験者で形選手、中学時に試合からは引退している…ここのお母さんは周りへの当たりがキツくて有名なのだが試合から引退して息子も似たような口ぶりになってきた。
うちの道場は組手の練習を殆どしない(だからと言って形も試合向けの練習は殆ど無い)。この道場で普通にやってる限り組手はよその道場の子と年々差が開くだろう。そうゆう意味なのかもしれないし真意は俺には分からない。聞く気にもなれずその一家とは完全に距離を置いた。
ただ、もちろん言われなくてもその危機感は持っていた。
いずれにしろこれが混乱の1年の序章だった。直接聞いた妻は焦り始め、どこかで教えてもらえるような良い練習環境は無いか等…そわそわ。
この環境下でも初出場であそこまで行けたんだから気にしなくていいよ。
色んな経験は絶対に必要…イベントはあれば積極的に参加させて頂こう。
ただ通う場があれもこれもじゃ小学生は混乱しちゃう。
県の強化練習に定期参加出来るんだからそこ主体で勉強するよ。
それでもそわそわする妻に俺は
「そんな言葉に呪縛されず形の心配しなよ」
と言い放っていた。
誰かにアウトソーシングして結果が↓だったら必ず後悔するし、その人のせいにしてしまうだろう。
組手をやりたいと言って空手を始めた次女。その次女の為に家族だけで始めた組手の練習。可能性がある限り自分達を信じてチャレンジすればいい。
それでダメだったらその時考えよう、まだ先がある訳だし。
その方が後悔しないし後悔したくない。
どこに行っても結果の責任は誰も取ってくれない。結局責任取るのは自分達。
これが俺の真意だった。
勿論あの言葉に対する意地が無かった訳でもないが…
県の強化練習は遠方だったが毎回朝から終了まで俺1人付き添い見学した。知り合いなんて誰も居ないし、まだ駆け出しの少女なのに、片時も目を離さず視線を送る父親…周囲の視線はかなり冷ややかに感じた(汗)
勿論次女も一人ぼっち…先生も来ない。
課題は毎回浮き彫りで帰りの車中はいつも焦燥感にかられた。
次回の練習日までに持ち帰った課題を潰す為の地道な自主練。
そして手応えの無いまま次回練習に挑み、またもっと大きな課題を貰って焦燥感と共に帰ってくる繰返し。
回を重ねる毎に当然周りも進化してる訳で。
単独参加で友達居なければ作るのも下手な次女は別の意味で非常に辛かったと思う
毎回行きたくないと本気でゴネられた。
次女の名前と顔を一早く覚えてくれて、いつも励まし褒めてくれた他道場の某先生の存在は大きかった。
何度も心折れそうになる俺と次女を支えてくれたのは、地道な自主練に嫌な顔せず付き合い続けてくれた長女。
ノー天気な末っ子も日々のスパイスになっていたかな。
手応えの無いまま課題だらけで進む日々。色んなイベントに参加しても冴えない動き。普段の練習の力を出せないこの姿が次女の今の実力。形の方は多少進化が見えているのに。
予選が近付くにつれて
「午前の形で決めて欲しいなぁ。組手ヤバいから。いい精神状態で午後の組手に挑みたいし」と
自分勝手な弱音を妻に吐く事もしばしば。
形で先に決めて欲しくて次女の形練にも結構口を出した。
気丈には振る舞っていたが内心は不安だらけで何一つ自信めいたものは無い。
そんなある日、封印してた去年の悔し涙時の映像を久しぶりに見てみた。そこには今取り組んできた事が何一つ出来ていないグダグダの次女の姿が。すごく成長したんだなぁ…あいつ頑張ってきたんだなぁ…
無くなりはしない不安を少しは忘れさせてくれた。
あと数日となると試合以外の分野で予期せぬ問題が我が家に立ちはだかった。いつも直前になると試合に集中させてもらえないこの空手環境何とかならないもんかな…
そして落ち着かないまま…
この日は来た。
胸の高まりなんて全く無く不安だらけ。挙げ句の果てに普段はしない神頼み…ひたすら胸のお守りにすがりながら会場入り。
会場入りすればまたあれやこれやと問題が発生…同郷他流派の某支部長先生の気遣いがありがたかった。
あーだこーだしてるうちにあっという間に形の試合が始まって…
末っ子まさかの3位入賞。
長女は念願の1勝。
二人共健闘した。
次女はベスト4まで危なげ無く
準決勝は去年も負けたディフェンディングチャンピオン。
雪辱戦だ。
あくまで俺の完全主観だが事前から手応えがあった。
開始…
優勢な感じ?
いいぞ!いいぞ!
判定
旗青5本!
完全勝利や!
よし!
あれ?
うちの子赤やった?
え????
旗を見間違える程の頭の混乱ぶり(汗)
結果は正真正銘完全敗北。
うちの子達が姉貴と慕う女子中学生の先輩(応援に来てくれた)と二人でガックリ。
色んな意味で自分の勉強不足を痛感…
切符への神様は甘くはない…
放心状態…
恐れていた崖っぷちでの組手…
不安…
不安…
不安…
今年もやっぱダメか…
マイナス思考で身体中占拠された…
胸に付けたこのお守りをぶち壊したい気分だった。
戻ってくる次女もショックの筈。
占拠されたマイナス思考が身体から溢れ出ていたがメチャクチャ頑張って平静を装い明るく一言。
「出来良かったぞ」
「結果はしゃあない」
「今は考えず次の組手に集中な。」
次女はドリンク飲みながら軽く頷いた。
平静を装ってるようにも見えた。
組手が始まるまでさほど時間はかからなかった。
序盤を危なげ無く勝ち、いよいよ勝負の準決勝。
予選の準決勝の壁の高さ・分厚さは痛感している。
相手はディフェンディングチャンピオン。
準決勝にこの子と当たる事を想定してずーっと練習してきた。
この子以外の子が上がってくる可能性も勿論あったが想定通り上がってきた。
開始直後…
次女は意外と落ち着いていた。
練習でやってきた事をしっかり意識していた。
試合直前は心臓が口から飛び出しそうな緊張に襲われた俺だがこの試合開始直後からは収まっていた。
途中いい突きがあったが旗は1本。ジリジリした展開で時間が迫ってくる。
俺はなぜか焦りを感じなかった。
よく分からないが自信めいたものを感じ始めていた。
そして終了間際…
上段蹴りと突きの連続攻撃が決まった。
取ってくれたポイントは突きの方だったが…ズコッ
そのまま残り僅かな時間を冷静にかわし…
タイムアップ。
念願の県代表に。
メンホー取った次女がスタンドの俺に手を振ってくれた。
今思えば普段ツンデレの次女にしては珍しい…
俺は分かるように大きく手を振り返した。
でも爆発的な喜びも感動も湧いていなかった。
実感が全く湧かない。
何だかボーとしてた。
ホッという安心感だけだったのかも。
その後の決勝はボンヤリしたままただ眺めているだけで…
次女の戦いぶりも何だか同じくで負けていた。
1位通過出来ないあたりが今の次女を物語っているが。
戻ってきた次女は笑顔も無く何となくボヤーとしてて。
疲れたのかな…ホッとしてるのかな…
「おめでとう」
て声掛けたら笑顔になって素に返った感じだった。
決勝の負け方に怒られるんじゃないかと気にしてただけかな…
次女の試合を近くで見届け嬉しそうに戻ってきた長女…
長女を俺は抱き締め、
「ありがとう」
この日が終わった。
ちなみに長女と末っ子はどちらも組手は初戦敗退。
長女は気持ちの問題、末っ子は相手が優勝者だった事を割り引いてやんないといけないけど…。二人共まだまだこれから楽しみなんだけど長女は来年組手出てくれるのかな…
代表入りが決まっても発表もない…
この事実を知らなければこの大会すら知らない人がほとんど…
喋り声とはしゃぎ声が響き渡る練習場…
一生懸命練習してるのが恥ずかしくなる雰囲気…
滅多に無い打ち込み練習では相手への遠慮を余儀無くされ…
頑張る事に喜びを与えられないこの環境…
それでも長女がお世話になり我が家と空手の出会いを作ってくれ…
空手の基本イロハを学べる。
この環境に対する敬意は忘れてはいけない。
試合への意欲は各個人で自主的に発揮すればいい訳で。
次女よ…
本戦…
ここまで出る為だけに頑張ってきた次女では結果は望めない。
ここで勝つ為にずーっと頑張ってきてる子が山程居る訳だから。
ただ空手に真摯に向き合っている人達で溢れかえる会場…この素晴らしい環境で空手を出来る喜びを、思う存分感じて欲しいと願ってやまない。
その為にも真摯に練習頑張って続けてな。
最後に
妻よ…
いつもお疲れ様。
そしてお世話になっている方々に…感謝。
新たな1年が始まっています。