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「湖水に消える」___ロバート・B・パーカー

ロバート・B. パーカー, Robert B. Paker, 菊池 光
湖水に消える

湖で見つかった若い女性の死体。身元を示す物はない。

パラダイス署の署長ジェッシィが捜査に乗り出す。湖の畔から見つかった指輪。唯一とも呼べるその手がかりから大学、そしてその女性の家族へと捜査の線はつながってゆくが・・・。

さて、パーカーといえば、スペンサーシリーズが有名だが、もちろんそれ以外にも作品はある。

サニー・ランドルシリーズとこのジェッシィ・ストーンシリーズがいくつかシリーズが出ている。

個人的はこのストーンシリーズは結構お気に入りである。


主人公のキャラクターは力強く、また教養もある、といった点で似通っているが、やはりスペンサーとはどこか違う。酒、仕事、愛する女性、これらがどの程度のバランスでコントロールできているのか、そういった点が異なっているのだろう。

ジェッシィはそういった意味で内面的な弱さが感じられる分、身近に感じられるのだろう。


単純なミステリ物というよりも、もっと内証的な意味合いの強い作品である。

続き物ではあるが、特にこの作品から読み始めてもまったく問題ない。

洋物、探偵物がお好きならば一度おためしあれ。

スティーヴン キング 「シャイニング 上 下」

深町 真理子, スティーヴン キング, Stephen King
シャイニング〈上〉
深町 真理子, スティーヴン キング, Stephen King
シャイニング〈下〉

今更スティーヴンかよ、とおっしゃるなかれ。今読んでも本当におもしろい。

もちろんホラーである。今作は館モノ。古い歴史_しかもそれはかなり陰鬱な_を持つ荘厳ですらある洋ホテル。

冬場は雪に埋もれるそのホテルの管理人として一家を引き連れて訪れた、作家のジャックは徐々にその洋館に取り込まれはじめ、シャイニング(輝き)を持つダニーはその力に・・・。


古来から古い建物自身が意志を持ち、訪問者に何からの影響を与えるという作品はあるが、このシャイニングもその一例である。しかしながら、そのストーリーテリングと肌の上をまとわりつくような恐怖感というのは、やはりキングならではというところ。


幼いダニーが恐怖と立ち向かうその心理や彼を取り巻く様々な現象や心理。シャイニングを持つが故に立ち向かわなければいけない苦難。まああまり多くを語らずとも、キングファンならばその空気はわかるだろう。


私は映画版を見たことがないので、何とも言いようがないが、あのスタンリー・キューブリックが監督をしているらしい。そちらの方もある種興味深いところである。


これから冬を迎えるにあたって、コタツに入りながらこの「シャイニング」を読んで家にこもってみるのもいいかもしれない。

甦れ!ベタついたWindows XP

橋本 和則
甦れ!ベタついたWindows XP

というわけで書評の第一弾。

まあ、週間アスキーを毎週購読している人にはおなじみのテーマである。というかパソコン雑誌は一度は取り扱うテーマである。


使い続ければ、「もっさりと」動作するようになるパソコン。いかにもっさりを防ぐか、もっさりしてしまった時の対処は、などなど初心者の方がXPの内部に踏み込む第一歩の道しるべになるような本。


regedit msconfig Tweak UIなど知っている人は当然のように知っているが、知らない人は永久に触れないだろうXpの「さわり方」を解説してくれている。

特別に丁寧とかわかりやすいということもないが、まんべんなく要所は押さえられている。


パソコン上級者にお伺いを立てるのが億劫な方は一度目を通しておくと便利かも。

哀れな銀行強盗1

「すくなくとも悪い考えじゃないと思うな」僕は言った。
僕には確かに悪い考えでは内容に思えたのだ。その時には。
「で、計画は?」
「細かい点までは考えないんだ」彼は自信満々に答えた。
「ということはどういうこと?」僕は尋ねた。誰だってこれから銀行強盗をしようというのに、計画が無いというのは不安になるだろう。
「行き当たりばったりってことだな」またもや彼は自信満々に答えた。
確かにその時点で僕はその計画から抜けるチャンスがあったのだ。
だが、僕はそれを放棄した。今から考えるとおかしいとしかいえない。
もし僕がそのとき少しでも冷静で、正確な判断を下していれば、今こうしてこの狭い部屋でこんな文章を書いていることは無かったはずだ。
とにもかくにも、僕はそのとき彼の自信満々さに圧倒され、飲み込まれ、わけのわからない希望を抱きながら銀行強盗へと一歩ずつ足を踏み出していた。
彼の物の言い方には現実とは関係なしに、何か確からしいものを感じさせるものがあった。
そこには何も無いはずなのに、彼は空中に立っている。そして彼は言うのだ「ここには地面があるよ」と。僕はそのことを信じずにはいられなかった。

コーヒーカップ

赤いコーヒーカップがパソコンデスクの上に置いてある。中身はからだ。さっき僕が最後の一口を飲み干したから、当然である。
コーヒーカップの下には、布地のコースターが敷いてある。白地に青のチェック模様が入ったコースター。長年の愛用で所々に茶色のシミが付いている。
コースターを敷いているので、カップソーサーはない。おかげで、赤と白そして青のコントラストが微妙な不安定感を与える。
そう、それはまるでカップがコースターの上で踊り出したがっているかのように。
カップが小刻みに揺れ出す。
「地震?」
僕は思わず呟く。
いや、ほかのものは何一つ揺れていない。カップも静止したままだ。
再び僕はじっとカップを見つめる。
また、カップが小刻みに揺れだす。いや、それは踊り始める。
カップは心地よくリズムに乗ったタップダンサーのように揺れ続ける。カタカタ、カタカタという音が部屋中に静かに響き渡る。
僕もそのリズムに合わせて、体を揺らす。いや揺らさずにはいられなくなってくる。
カタカタ、カタカタ。カタカタ、カタカタ。
永遠とも思えるキューバのリズムのように切れ目なく、カップは揺れ続ける。
そして、僕も。
快楽とも呼べるそのリズムにおぼれながら、僕はふと時計に目をやった。
その瞬間にカップはピタリと止まった。部屋の中から心地よいリズムは消え去り、僕は途中で曲が終わってもまだ止められないままのメトロノームのような居心地の悪さを感じていた。
僕は、三度、カップをじっと見つめた。カップは動かない。まるで岩のように。
無関心を決め込んだ刑務所の看守のように。僕は懇願するようにカップを見つめ続けた。
「君はまた踊ってくれないのかい。あのリズムが僕には必要なんだ。」
カップは答えない。カップはカップであり続ける。まるで四次元以上の世界について想像を巡らす哲学者のようにじっと押し黙ったまま、コースターと一体化しながらそこにたたずんでいる。
「ふー」
僕は、息を深く吐き出し、そしてカップを持ち新しいコーヒーを注ぎに台所に向かった.。

人生ゲーム

「人生というのはゲームである。」
ある男が言った。
「そして、それは悲しいぐらいに滑稽で、同時に最上級の喜劇でもある。」

僕の心の中にはいつもその言葉がまとわりついていた。普段何気なく生活しているときでも、ふっとその言葉が頭をよぎる。すると僕の意識は僕から離れていき、それはどんどんと上昇し、僕を地上遙か彼方から見下ろしてしまう。

そういうときの僕は、真剣に何かに熱中しながらも心の奥底では凍り付くぐらい冷静に自分の行動を観察している。
それは本当に人生ゲームの駒を見つめているプレイヤーのようでもある。

ある時僕は、友人の死、というイベントに出会った。それは僕の人生の中では初めての出来事だった。彼は駒を盤の上からおろしてしまったのだ。
そして、僕もいつの時かこの人生から降りなくてはいけない。

こつこつと進みながらもその先に待ちかまえているのが、アガリ、だけだとするならば一体僕の人生の目的とは何だろう。
僕はじっと自分が自分の人生から降りることを想像した。あらん限りの想像力を使い、できる限り細かく。しかし僕は自分が人生から降りる瞬間まではいくらでも想像することができた、しかし、降りた後となるとまったく何一つ思いつかなかった。

何時間も何時間も考えたが、僕の中のイメージは固まることはなかった。

なんということだろうか。僕は自分のこれからの先を全く見通すことができない。そしてその上でも僕はすすみ続けている。なんと哀れで滑稽なストーリーだろうか。

これが喜劇なのか。
僕は自問した。

そう喜劇なのだ。最上級の喜劇とはけっしてオチが読めないモノなのだ。一瞬一瞬が期待への裏切りと新しい可能性に満ちあふれたものなのだ。

「人生というのはゲームである。」
僕は一人呟いた。
「そして、それは悲しいぐらいに滑稽で、同時に最上級の喜劇でもある。」

メンテナンス

「今すぐメンテナンスを行わなければいけない」
所長が早足で歩きながら僕にそう次げたのは、午前3時を回ったところだった。
所内には人影は無い。僕だってさっきかかってきた電話でようやく今駆けつけたところなのだ。
眠気眼のまま僕は所長の後をついていった。やれやれまったく一体何時だと思ってるんだ。
「何か問題でも?」
「おおありだよ、とにかくこれに目を通したまえ」
「何ですか、これは」
僕は手渡された薄っぺらい小冊子を眺めた。―”取り扱い説明書 松上電気”―
「我が家の電子レンジの説明書だよ。今夜ちょっと卵をレンジにかけたら、大爆発してな。それからうんともすんとも言わんのだよ」
「で、僕がメンテナンスを?」
「当たり前じゃないか、君は電子調整課の課長だろう」
やれやれ、これだからサラリーマンは。

ホルン

真夜中の3時。
僕は隣の家のホルンで目が覚めた。
ホルンが吠えている。
まったく、昨日引っ越してきたと思えば、いきなりホルンを飼い始めるなんて常識知らずもいいところだ。
たしかに、何を飼うかなんて個人の自由だし───僕も猫を飼っている、が回りか苦情は来たことがない───他人の僕がとやかく言うことではないかもしれないが、せめてホルンを飼うなら飼うで、事前に通知するべきだし、夜中の3時に吠えるようなしつけはやめてほしい。ホルンの鳴き声は頭に突き刺さるようで、いっきに目が覚めるのだ。たしかに、目覚まし時計の代わりとしては最適なペットかもしれないが、実用するには時間と音量についてのそれなりの訓練が必要なのだ。
実を言うと僕も半年前までは4歳になるホルンを飼っていたのだが、寿命で他界するまで毎日の訓練を欠かしたことはなかった。ホルンの4歳は人間でいうと80歳にもなるのだが、そのホルンは毎日必死に僕を7時ピッタリに起こしてくれていた。そしてその時間は1秒の狂いもなかったのだ。もちろん近所の人から文句を言われたこともない。ホルンだってできれば、たくさんの人を起こしたいにきまっている。そういう性質をホルンたちは本能としてもっているのだ。実際半径1キロメートル、約2000人の人々を起こすほどの音量を持っているのだ。
無論そんなことをすれば、僕の鼓膜ははずれ馬券のようにビリビリに破けてしまうだろうが。
そんなわけで、ホルンの調教はかなり難しいのだ。そして素人がホルンを飼うと往々にしてこういう事態が起こってしまうのだ。またホルンが吠えている。
まだ、えさを与えていないのだろう、きっと。やれやれ。
そして、僕は浅い眠りについた。

27

かすかに響く小さな金属音が私を眠りの淵から呼び覚ます。
ひどく不安定に覚醒した私は、周りを見るでもなく見渡す。

体を起こす。ずきずきとした痛みが一瞬体の中を駆け巡る。
それは、全身の間接がはずれたかのような鋭い痛みである。

まだ死んでいない事は、波打つ心臓の鼓動が証明している。
手を握りしめる。指を一つ一つ動かしていく。そして足も。
私はまだ私という入れ物の中に存在している事を確認する。

体の痛みが引いてくるにつれ、頭部に強烈な痛みを感じる。
ズキズキとする頭を抑え、懸命に記憶の糸をたどり寄せる。

それは捕まえられそうで、私の手からスルっと滑り落ちる。
ほのかに浮かび上がる、過去というクモの糸を握り締める。

だが、私の手の中には何も残らない。それは北風のように。
しばしの記憶との格闘のあと、私は完全に見切りをつける。

私は暗闇の中、手探りであたりの地面を探る。確かな感触。
冷たいはずの地面が、私の中でフィルタリングされてゆく。
自分が不安定な時、絶対確かなものは温かみを感じさせる。
それ自身が救いであるかのように、私は地面を撫で続ける。
やがて私は小さな決意を秘めて立ち上がる。出発のときだ。

冷酷な沈黙と、完璧なまでの暗闇の中、私は立ち上がった。

とてつもなく高いレートのギャンブルを始めるかのように。
写真が一枚も入っていないアルバムをひらき始めるように。
私は、新しく私であることを始める。ごくごく自然なまま。

過去への確執は、足枷である後悔とともに全て置いていく。
未来への不安は、原動力である好奇心に全て飲み込ませる。

私は、自分の道をただ、ただ、歩き続けていくだけである。
歩くこと自体が目的である巡礼者のような歩みを目指して。

そのイスに潜むもの、またはアイデンティティとしての職業病

王は悩んでいた。その悩みはとても深く、家臣の誰も理解できないものであった。それはあまりにも深すぎて回りに立っていても底がまったく見えない井戸のような深さを含んだ悩みであった。漂流した無人島で夜空を見上げるような孤独感を感じながら王は毎日のように頭を抱え、ため息をついていた。
多くの家来の中から一人の家臣が王に歩み寄り、そして尋ねた。
「王よ、何をお悩みか」
「わが家来達よ、わが家臣達よ、わが悩みそなた達には届かぬか」
「王よ、私どもには、王の悩みがわかりませぬ。国は富み、家来は屈強、民は増える一方。一体何をお悩みか」
確かに国は富んでいたし、何一つ問題は無いように思えた。王は一抱えもある岩石のように重いため息をつきそして、答えた。
「わが家来達よ、わが家臣達よ、そなた達には見えぬか、わが悩みが。確かにわが国は潤って、富んでおる。周りの国に比べ裕福である。すくなくともそのように見える。だが、このいすに座ってわが国を見たことがないそなた達には理解できぬかもしれぬ、そんな悩みが確かにあるのだ。私には。」
「王よ、そのお悩みわれわれに告げては下さらぬか。我々はありとあらゆる力を使い、それを排除してみせます」
「そなた達にこの悩みが理解できないとするならば、それを伝えることはできまい。またできたとしてもそれを解決することなど、はるか見上げる雲に乗る試みに等しい。
だが、わが悩みは深い。われの手では決して解決できまして」
「王よ、なにとぞそのお悩みを」
「では、家来よ。そなたがこのいすに座ってみればよい」
そして、その家来は王になり、元王はその家来になった。

はじめは全て上手くいっているように見えた。元王は元気に動き回り、元家来は、万事問題なく国を切り盛りした。もともと問題などほとんど無い国なのだ。やがて時が過ぎ、王がふさぎこみ始めた。元家来の王は全てが上手くいっていると感じながら、何かが違うという違和感を拭い去ることができなかった。まったくあてもない不安感、自分が自分でなくなるような奇妙な感じ。自分が自分でなくなっていることに周りの誰一人として気付いていないという切迫感。私は誰なのか?王、確かにそうだ。王の心にはさまざまな思いが来ては去り、去ってはまたやってくる、それが繰り返された。やがて元家来の王は、悩みの柵の中に閉じ込められた。そして、一人の家来が王に尋ねた。
「王よ、何をお悩みか」
―以下略―