私は強がって1人でこんなところに来ていた。

ヤンキーなんてやってると皆去勢を張るもんで、弱い部分は見せられない。

だから皆が怖がっているあるトンネルの前に来ていた。

ここは昔から事故が絶えないことで有名で、何でも霊も出るようだ。

ハンディカムを手に腕時計を映す。時間は夜の11時。

この時間でも辺りは真っ暗。

乗ってきたスクーターはここに止めてある。

利き手に懐中電灯を持ちビデオを回しながら歩き出すもあたりは不気味に静まり返り、鳥の声どころか虫の鳴き声も聞こえない。

悪寒が走るが後日今日撮った映像を仲間内に見せることになっている為ゆっくりと足を進める。

トンネルは不気味な口を開けて私を飲み込もうとしているのか闇に包まれている。

あの世への入口かと思うほどだ。

あかりが無いのが不気味さを増す。

辺りを照らしながらトンネルの側まで来たが、それからが1歩も歩けない。

まるで入るなと怒っているかのようだ。

怖い。

でも……やらなきゃダチに何言われるか。

それもやだった。だから無理やり前に進んだ。

いざトンネルの側まで来ると意外と小さいんだなぁと思った。

車1台が通るのがやっとだ。

すれ違いなんかできない。

灯りがない為出口が分からない。

ボタン。チャプン。何処からか雨水が垂れてる音がする。

外は雨なぞ降ってはいないのにね。

生暖かい空気が鼻をくすぐる。

ある程度…そう、500メートルほど歩いただろうか…向かう先から明かりのようなものが見えた気がした。ここはすれ違いができないトンネル。戻るしかないと思い、後ろを振り向いたら目の前に少女らしき子がうずくまっているのが見えた。あかりも持ってないのにどうやってこの場所まで来たんだろうかと不思議に思ったが、足音も立てずにくるなんて不可能だと思ったら怖くなった。だって自身の足音は響いて聞こえるんだよ?じゃあこの子はどうやってここまで来たの?音も立てずに懐中電灯も持たずに……。

近寄る勇気がおきず、慌てて避けるように遠回りして出口に向かって走り出した。

たった500メートル。

それなのにいっこうに出口までたどりつけない。

何で?

走行しているうちに徐々にトンネル内の空気が冷たくなっていく。

寒い。

怖い。

やめときゃよかったと今になって後悔しても遅い。

携帯持ってるから電話モードにして立ちに来てもらうように頼んだが、行けないという。

なんでと答えたらそのトンネル……地図のどこにも載ってないって、そんなのありか?ダチに聞いたんだと答えたら、どの達?って聞いたから2人のよく知るダチの名を挙げた。


「そ、そいつは無理だ。」

「なんで?お前も知ってるだろ?」

「知ってるけど無理だ。だってそいつ……昨日死んだからさ。」

「え?……何で?」

「何かおかしな行動してたって言ってたな親が。なんでもいないものを要るとか言ったりして奇声を発する時もあったって言ってたぞ。お前そいつから聞いたの信じたんだ。」

「そ、そんなの、そんときは普通だったぞ?それにその時お前もそこにいたじゃん。」

「まぁ確かにな。でももうそいつはいないんだ。だからお前がいる場所がわからない。マジだ。」


私は目の前が真っ暗になった気分になった。

どうやら自力でこのトンネルから出ないといけない。でも、もし出られなかったら?ブルっと背中が震えた。

元来た道へと歩き出すも外の灯りが見えてこない。普通ならそろそろ月明かりの優しい光が差し込んできてもおかしくないはずだから。

それでも諦めずに出口を目指す。

入口まで戻ってきたのに出られない。

まるで見えない何かに遮られているようだ。

ドンドンと何度も叩く。

でも音がしない。

ここは何処?


私は出られないの?



誰か、お願いだから


誰か助けて!!