今日も僕は朝から出かけ、帰って来てご飯を食べていた。疲れていた…そんな1日が始まったのだ。
僕の数少ない趣味はドライブ。
他にはあってないようなものだ。
遠出するのが大好きで、一人でよくドライブに行く。

ただしらない道はいけないよ?
冒険は得意じゃない。
だからつまらない日々を過ごしてる。

仕事にもつかずブラブラと…。

親にも言われたよ。

「仕事探して行けよ。」とか。。。

わかってるよ。分かってはいるけど雇ってくれるところがないんだ。不景気で、バイト先も応募が少なくやりたい職種じゃない。そんなこと言ってるから働けないのはわかり切ってる。
集中力が切れてたんだろうね…。ドン!と大きな音がして一瞬車のボンネットに何かが…。それが何なのか見てみる気にならなかったので、誰も見ている人がいないのを確認してその場から逃げた。


ドキドキが抑えられなくてなんであの場から逃げるようにいなくなったのかが謎でしかなかった。

その後どうやって自宅に帰ったのか覚えていない。
車は一部がへこんでいた。
まさか!
人を…はねた…のか?
適当な道を走っていたから事故現場がわからない。
どうしたらいい?
どうしたら………。
顔が真っ青になっているのを見た親が言った。
「何かあったのか?」
「あ、いや、う〜ん。実はさ…。」
そう言いながら覚えていることを話して聞かせると親はものすごく怒ったね!
「直ぐ警察へ行け!行ってこい!」
「え〜、でも…。」
「グダグダ言ってるなら通報すっぞ!!」
乗ってきた車に乗り、自宅を後にした。
ユウツだった。
警察だって…。


自宅からはそう遠く無い場所に警察署はあるが,入る勇気がなくて近くに止めたまま時間だけが過ぎていく…。両親からはどうだ?自首したか?とメールが来たがまだ返信はしていない。
ここでこれ以上待っても意味がないと肝を据えて車から降りて警察署に入った。
入り口に立っている警官に人をはねたかもしれないというと。警官は慌てて僕を署内へと連れて行く。

呑気に【ここが署内かぁ〜。思ってたよりも広いなぁ〜】などと思っていたらいかにも刑事という姿の男性が目の前にやってきた。

「どこで人をはねたんですか?」
「それが自分がどこを走ってたのか覚えてなくて…。知らない道を適当に走ってたので。」
「アシはどうしましたか?」
「?ここに。」
「じゃなくて車は?」
「ああ、あそこに止めてあります。」
そう言った先に車はあった。
言われた刑事達はゾロゾロと車の周りを取り囲んで鑑識を呼び何やら調べはじめた。
血とか付いてないかをだ。
だが何もついていなかった。
へこんだ場所すらなく、刑事たちは皆僕の顔を見てこう言った。
「ホントに人をはねたのか?」
「それが、…ぶつかったのはわかったんだけど、何に…までは怖くて見れなかった。だから誰も見てないかと確認だけしてその場から…逃げたんです。」
「う〜ん。どうしたもんかなぁ?血痕や傷も何も出てないと鑑識からの報告があるからなぁ。酔ってたんじゃないのか?」
「まさか…飲みませんよ僕は。飲めませんから。」
「そうか。なら何か思い出したら連絡しろよ。」
「はい。わかりました。」
僕はその場で釈放された。
事故したであろうはずの車…ボンネット等を観たけど何もなってなかった。
なんでだ?
昨日の事はほんとあまり覚えてなかったから、自宅に帰ったら思いださなあとなぁ〜と思っていた。

両親は不思議がった。
警察が見逃したのか何か見落としたのか分からないが,こうして戻ってきたのだ。良かったのか?悪かったのか…。



その夜僕は夢を見た。
夢の現場はあの事故したはずの場所だった。
なぜここに?
分からない。
ここはどこ?

どこからか鳴き声が聞こえてくる。
ひと?だれ?
分からなかった。だから声が聞こえる方へと歩いていく。すると小さな猫が鳴いていた。

近寄ると猫が振り向き威嚇してくる。
そばには大きな猫が横たわっていた。
なぜそんな事になってるのか全く思いつかなかったので、近寄ろうとしたのだが子猫はどうやら興奮しているようで、近寄らせてくれない。
仕方がないので携帯の写真モードをめいいっぱいズームして見てみるとお腹が潰れた親猫が横たわっていた。かわいそうだと思ったよ。
【誰だよ。こんなに可愛い猫撥ねた奴、そのままで逃げたのか?ひっでーやつだ!】そう思ったとき、それまで威嚇していた子猫が僕に飛びかかってきた。咄嗟のことで避けきれないと思った僕は手に持っていた鞄を振り回し猫から回避した。

その時思ったんだ。

僕がひいたのは人じゃなくて猫だったんじゃないかって…。
どうしてやることもできずその場を離れる事にした。


その時だ。
シャーッという大きな威嚇の声を聞いた僕は振り返ると死んだはずの猫が立って僕に飛び掛からんとしている。血だらけだよ。内臓も見えてる。気持ち悪さと怖さで固まってしまった僕は飛びかかってくる猫をまるでスローモーションでも見てるかのように突っ立って見ていた。
一瞬強烈な痛みを胸に感じた。
見てみると血が吹き出している。
僕はそのまま後ろに倒れた。
どくどくと流れる血に僕は狼狽慌てた。
このまま死んじゃうのか?ヤダ!ヤダヤダヤダ!!死にたくない!まだやりたいことがたくさんあるんだ。
でも意識は徐々に薄れていく…。
涙を流しながら目を瞑った。


ガバッと起きたときまず初めに胸を確認した。
傷一つついていなかった。
夢か…夢だったんだ。良かったよ。
でもなんで夢に猫なんて出てきたんだろう?
不思議だった。

それからだ。
事故した時間になると部屋の隅をカリカリと何かが掻きむしる音が聞こえるようになったのは。
自宅にいないときには僕がいるそばでカリカリ音だけが聞こえる。ダチに話しても聞いてはもらえなかった。へこむよ。
それから1週間くらい経った頃だろうか?
いつもの時間が近づくと【ああ、またか…。】とぽつりと呟いた。

いっそどうにかなれば良かったのかとも思ったさ。
でも日常は変わらない。
このカリカリはいつまで続くのだろう…。
僕にはこのカリカリが忘れるなと言っているような気がした。

この恐怖体験後、猫を見ると怖くなった。その瞳で僕を覗き込んでる気がするのだ。
僕の心を。