僕は今ここにいる。


ここは撮影場所。


そう、僕はアイドルだ。
デビューしてもう2年ほど経つ。
少しはこの業界のこと分かってきたつもりだ。
でもさ、これは無いよな。
僕…これだけはヤダって…NG出してたよね?
それなのにスケジュールに入れるってどう言うこと?


それは…恐怖体験だ。
あまり人気が出てないからってこれぶっ込んで人気が出るか?イメージ崩れるぞ?
ただでさえ苦手なのだ。
遊園地のお化け屋敷さえ行ったことないんだよ?
あの看板見ただけで鳥肌が立つ。
なのになんでマジヤバイ場所に連れてくるんだよ?
ここ、噂では出るっていう話じゃん。
?何がって?
幽霊に決まってるじゃん!
腹立つなぁ〜。
ただ他にも共演者がいる為、怖いとか嫌だとか言ってられない。ジッとその場で固まっていた…。
そしたら共演者の一人が喋ってきた。


「お前大丈夫か?一人だけでいるし顔真っ青だよ?」
「だ、大丈夫。俺はいいから他のやつのところに行けよ。」
「う〜ん、そうか。お前この手の苦手か?これからヤバイ場所にみんなで行くんだぞ?ついてこれるか?」そういいながらもなんかニヤニヤしているコイツを殴りたくなったがなんとか堪え、「ほっとけ!」とだけ言い、その場から離れることにした。


マネージャー達は固まって色々と話をしているようだ。打ち合わせとかに関係してくるやつだろうか?だが、今の僕には恐怖の幕開けでしかなかった。
何をされるのかの情報が全く入ってこないからだ。
それは他の出演者も同じようで、それだけは良かったかなって思ったよ。知ってたらぜってーなんかしてきそうだし…。




時間になったので目的の場所を伝えられると皆一様にビビりまくってたな。僕はそのてのは全く知らないから良かったのだが、他の出演者は違った。
「おま、なにすました顔してんだよ。ぜってービビるぞ?場所の情報知ったら。教えたろうか?」「まてよ、こいつには情報なしで行かせようぜ。で、ビビったところを映像で撮るってすんぽうさ。」「お前かしけーな。そんなこと考えもしなかったわ。じゃあこいつ一人で…だと映らない可能性があるから俺が一緒に行って視聴者へのプレゼントとしてやんよ。」「あっ、それ面白そう。」「だろだろ?じゃあ話もまとまったところで行くか?」


「おい、君達。みんなで一緒に行くって言う設定忘れてはないだろうね?カメラは数台あるけど何が起こるか分からないからね。固まっていくよ?じゃあ、行ってくれ。」「ちっ、しゃあねーな。行くしかねーか。お前本当になんとも感じないのか?鈍感じゃね?っ、まっ、いいわ。俺らも聞いただけの噂だしな。行ってみるぜ。って事で一番乗りは俺な?」「あっ!急に走るなんて反則。私が一番乗りするんだから。」【よくわかんない奴らだな。まっ、喋るのは勝手だから放っとけばいいか。】などとひとり、脳内で完結させると皆の後をついていった。

ここはどうやらどこかの学校だった場所のようだ。建物からしてそんな感じ。入り口には蔦が絡まって見ることができない学校名が掘られているようだ。
皆キャッキャッと喋り出している。ついていけるか?ちょっとだけ心配になってきた。
MCらしき人が建物の案内をすると言うことで、僕らは皆で向かうこととなった。
青白い電球は雰囲気を出すのにナイスなチョイスだなと思っていたが、メンバーの中の一人が急に喚き出した。
「ここには何かいる…。」って。
どうやらその手に乗せて怖がらせるって算段かと首を横に振ったが、どうやら霊感というものを持っているようだ。僕には無いから分からないが…。


「あそこにいる。男の子が。……。」それだけ言うとその場で倒れ込んでしまった。皆慌てたよ。
だってこんなの想像できた?出来ないよね。だから僕にちょっかいを出していた男性も顔真っ青?
電球のせいかよくわからないや。

局の方で用意していた霊媒師も真っ青な顔をしてこう言った。「この方についていた霊は払うことはできませんよ?だってそれはこの方の守護霊にくっついてますから。」ってそれやばくないか?
祓えない霊媒師なんてインチキじゃんと思うけどここでは何も言えなかった。
言ったらどうなってたか…。
カメラは回したまま倒れ込んだ女性を写していたカメラマンがカメラを持ち替えた時それは写っていたようだ。一瞬だけ見てしまったカメラマンがびびってしまって思わず叫んだから。


「あわわわわ。あれ、何だ?」そう言いながらある方向を指さす。
さされた指先の先には一瞬だが何か見えたような気がした。
もう撮影どころじゃないよね?
皆震え上がっているし…。僕も正直怖い。だからやだったんだ。
霊媒師の助言で撮影は休止し、その場から立ち去ることにした。残ったスタッフが持ち回りで機材を回収するらしい。大丈夫か?




結局今日撮ったものはお蔵入りとなることになった。だって出演者の一人が気がふれてしまったかのようにおかしな行動を取るようになってしまったから。
マネージャーも困っているようだが、僕としては絡むことがない為どうにもしてあげることはできない。

それ以降はこのことを気にしないでおくことにした。忘れた方が良いと思ったんだ。
でもさ、気になるんだよね〜。
あの時あのまま建物内に入って行ったらどうなっていたのか…。
気が触れてしまった出演者の一人は結局そのまま入院してしまったと人づてに聞いた。

その時のカメラマンが知ってる人だったので見せてと頼んだが、社外秘となって見れないと言われた。
いったいあの時何が写ってたんだ?
もうこれ以上は調べられないし、アイドルやってる僕がすることじゃないと思い諦めて目の前の仕事に集中することにした。

それ以降、怖い話は聞かない。