…いなくなった友人がいた。
そう、それは自主映画を撮っている最中のことだった。
自宅の電話にも出ない、携帯にも出ないで居場所がわからずどうしたものかと皆で頭を捻っていた。

そんな時一つのメールが来ていた。差出人は…友人だ。


【来ないで。見ないで。僕を探さないで…。怖い。助けて。】


それだけの文章で今どこにいるのかさえもわからなかった。だから僕はメールを返信したんだ。だけどそれに対する答えは返信されてはこなかった。


そもそもこの自主映画自体が曰く付きのもの。
全体の内容は彼しか知らない。
まだ撮り出したばかりだから。
主演の女の子はオロオロとするばかり。
仲間内でもザワザワとザワメキが。
僕もどうしたものかと彼の私物が置かれているであろうロッカーを開けた。鍵がかかっていなかった。
ドア部分には五芒星が描かれた紙が貼られており、いろんな神社のお守りが所狭しと貼られていた。不気味で仕方がなかった。
何よりさらに不気味さを表しているのが、大きな紙袋だ。
中に何が入っているのか?
そもそも何か臭う。
何の臭いだ?
臭い。
何か生ゴミが入っているのか?
袋はずっしりと重く、中に紙に包まれた塊が…一つ、二つある。
何だ?
「なぁ、ヤバくないか?勝手にあさったら怒られるぞ!」
「かもな。でもその本人がいないんだからいいだろ?」

そう言いながらもビビりまくってる自分がいる。慎重に、慎重に紙袋をロッカーから出して中身を掴んだ。
大きさは…そう、バレーボールくらいの大きさだ。
もう一つは小さい。
何だろう?
不安しかなかったが、仲間たちに言ってしまった以上開けないわけにはいかなくなり、ゆっくりと包紙を広げていく。そこには……。


生首があった。
それも行方不明の友人のだ。
首元はざっくりと切られている。
恐怖に引きつった顔が固まったままの状態でそこにあった。
その場にいたものたちは初めは作り物かと勘違いしていた。だけど包まれた紙には変色した血の跡がべったりとついている。
鉄臭い臭いもする。
間違い無いだろう。
でも何で?
一体何があった?
体はどこに?
怯える女性達を別の部屋に誘導する者、警察に電話する者などあたりは騒然となった。

一つ目がそうなると二つ目が気になり出すのは当然と言えば当然かもしれない。だが大きさはさほどではなく割と小さい。
縦長で持つとグニャリとした感覚があった。
僕はもう怖くて仕方がなかったが、皆が同じ気持ちだとわかっていたから覚悟を決めて包紙を開けた。
そこには小さな赤ん坊が。
未熟児で体も小さい。生まれるには早すぎるくらいだ。誰の子だ?何で友人の頭と一緒のところに入れてあるんだ?
分からない。
あとは警察が何とか調べてくれるに違いないと考え、任せることに決めた。


ドンドン!


何の音だ?
突然の音に驚いて振り向く仲間たち。でもどこから聞こえてくるのかがわからなかった。


ドンドン!


今度は分かったのでその音が鳴る方を見てみると友人のロッカーを叩く音のように聞こえた。内側から?
でも何もなかったよね?音が鳴るものは…。じゃあ何?


ドンドンドン!


ロッカーの後ろから聞こえてきたように感じた仲間の一人が言った。
「ロッカーどかしてみねえ?そっちから聞こえてくる感じなんだわ。」
「まさか…だってロッカーの向こうは壁だよ?壁しか無いって。」
「でも確かに聞こえたんだ。」「わかったぁ。どかすよ。おい、お前らも手伝えよ。」「ああ。分かった。」

数人で友人のロッカーを倒して前にずらしていくと何かが見えた気がした。
そこには友人がいた。
首もある。じゃあさっきのは何?
涙で半狂乱になっている友人をなだめすかし、何がどうなっているのかを聞くことにした。


話はこうだ。




友人の知り合いの女性が流産して子供を下ろした。と言うか、トイレで産み落とした。
早産過ぎたため胎児も小さく…死産だった。
遺体をどうするか悩んでいたところに友人が通りかかり、見つかったら警察に連れてかれると恐怖した女性はそこらに転がっていた石を友人の後頭部に殴打した。意識をなくした友人を自分が乗ってきていた車に乗せ、移動しながら今回のことを考えたと言う。友人は嫌がったので再度殴打、意識をなくしたところにこの建物のロッカーの後ろに押し込んだ。
美術を専攻していた女性は彼の顔を慌てて型取り、本物そっくりに作り上げると首元をギザギザに斬り紙で包んだ。遺体も同様に。

それを聞かされたのはロッカーの後ろに押し込められてから。息はできるように隙間を作ってあった。
見つけられなかったらどうなっていたのかと考えただけでゾッとした。
知り合いと言う女性は何処へ行ったのかを聞いたのだがわからないと言う。最近少しふさぎ込んではいたらしい。
そうこうしているうちに警官がやってきて、事情聴取を取り始めた。1人は無線で何処かに連絡しているようだ。

その時何かが壁伝いに通り過ぎた気がしたと仲間の1人が言った。…そう、確かに僕もそう思った。じゃあ何処かにまだいるのか?
そう考えていたら仲間の1人が真っ青な顔をして一ヶ所を指差していた。
皆その方向に振り返ると真っ青になった。だって壁伝いにその女性が這っていたから。
首が明後日の方向を向いていた。白目で口から血を流している。
その口が笑った気がした。
不気味だった。
警官達も皆怯え叫んだ。
そして皆一斉にその場から逃げ出した。
僕もそうしたのだが、何故か女がついてくる。
怖い。怖い。怖いヨォ。

途中からみんなバラバラになって逃げ出すが、何故か友人にのみ追いかけているようで一定に離れた所で様子を見ていた警官が言った。
「あっ、あれは何だ?化け物?」
確かにそう言えると思う。でも何で友人に張り付こうとするのだろう…。友人が何か関わってるのか?怖いが友人の方がもっと怖いと思い、少し近づいた。
友人はもう腰が抜けたのかその場にうずくまっている。


「た、助けてくれ。な、何で俺についてくるんだよぉ〜。」友人もわからないようだ。
女はニヤリと笑い友人に取り憑いた。
すると友人は感情を失くしたかのように虚な目になりその場から歩いて去って行った。

その後どうなったかは誰も知らない。