気分が沈んでいたので気持ちを切り替えるためにレンタル屋に来た。
ここは本も販売している割と大きなレンタル屋だ。
なんか気になる作品はないかと新作コーナーを覗いてみた時、気になる作品が目に飛び込んできた。
その映画は都市伝説をもとに作られており興味を惹かれた僕は悩んだ末借りることにした。

不気味なシーンも多々あり、これ…R付きじゃなくて良かったのか?と思った。


それからだ。
不思議なことが起こるようになったのは。
いつも同じ時間にかかってくる電話。
もちろん相手は公衆電話。
当然知らない。
だから出ない。

そしたら今度は知らない携帯番号からの電話が。
080からだけど、知り合いにこの番号の人はいない。
しかもかかってくるのは深夜の1時過ぎ。
怖いよ。
寝てたし…。

留守電機能は使ってないから録音されることはないが、ほぼほぼ毎日かかってくる。
ノイローゼになりそうだ。
いっその事携帯を新しくし、番号を変えてみることにしたのだが、それでも深夜に電話は鳴り止まなかった。なので一度出てみようと思い受話器ボタンを押した。恐る恐る耳を当ててみるも何も音は聞こえてこない。単なるイタ電かと思い受話器を切ろうとしたら何やら声が聞こえてきた。
ぶつぶつと喋ってはいるようだが何を言っているのかまでは聞き取れない。
その時フワリと何かが目の前を通った気がした。
思わず振り返るもそこには何もおらず、不気味さだけが漂っている。
とっさに録音ボタンを押したよ。
ダチに一人住職の息子がいたっけ。彼に聞けば何かわかるかもしれないと期待しながら時間にして5分ほど録音した。

翌朝、ダチに連絡して住職の息子へ連絡を取ってもらい聞いてもらうことにした。
ダチが三人やって来た。一人は住職の息子だ。

「僕には聞き取りにくくて分からないから聞いてもらえる?ちょっと不気味だけど…。」
そう言いながら再生ボタンを押した。
僕には相変わらずはっきりとは聞こえては来ないのだが、ダチの一人が気味悪がって叫んだ。


「お前のダチを一人づつ…連れてくよ〜。」


そう叫びながら部屋から飛び出し道路に向かって走っていく。その時スピード違反してきた車にはねられ即死した。
首は折れ曲がってあさっての方向を向いていた。
住職の息子は直ぐに救急車を呼んだ。もちろん警察もだ。
運転手も内臓破裂により即死だった。

僕らは今までの事を全部警察官に話して聞かせた。だけど警察がこれを信じるかだ。
あり得ない。それが正直な感想だ。
だがダチは言ってたんだよな…。


「お前のダチを一人づつ…連れてくよ〜。」


って。
ならやばくないか?
仲間の一人は怯え切っていた。
住職の息子も顔面蒼白だ。

「お前、何処かで何かしなかったか?」
「何もしてないよ。でも待てよ?あるとしたらアレか?」
そう、都市伝説をもとにした怪談映画を見ていたのだ。R指定していなかったから多分誰でも借りれるだろう。
それが何?
まさかそれが原因?

分からなかったけど思い当たるとしたらそれしかなかった。だからみんなに言ったんだ。
都市伝説の怪談映画の題名を。
そしたらさ、そしたらダチが言ったんだ。
「そこ…マジやばいとこじゃん。有名だよ!なんでそんなの借りるんだよ。見るんだよ。ってか出演者全員お祓いしてるのか?」
「そ、そんなにやばいとかなんか?…っと、いてて…腹、痛くなってきた。」
服をめくると腹部が膨れていた。
住職の息子は直ぐにお経を唱え始めた。
痛みとお経が交互に僕をおかしくする。
もう一人も急に黙り込み、小言でブツブツ言っている。やばいのかもとか考えたが、自分が置かれている状況に囚われてていなくなっていたことにも気づかなかった。


「お前のダチを一人づつ…連れてくよ〜。」


どこからか声が聞こえたと思ったら屋根上から逆さになって飛び降りていた。
ピクピク痙攣を起こしていた為少しの間は意識があったんだろう。でもじきにそれも無くなって動かなくなった。
残ったのは僕と住職の息子だけだ。
真っ青な顔をした最後のダチは自分の親に電話をかけた。
「助けて。」って。
泣いてたな。

僕も腹を括った。
なんとしてもダチを死なせない。
台所から塩を持ってきて部屋の四隅に盛り、住職の息子と共にお経を唱え続けた。

しばらくしたら玄関から音がする。
ダチの携帯が鳴る。
どうやらダチの父親がやってきたようだ。
たすかったぁ〜。
正直思ったよ。
でもね?違ったんだ。
「開いてるよ。」
そう言ったのに入ってこない。
ここで思ったんだ。
状況はやばくなってるって。
錯乱しかけてるダチの頬を叩いて正気に戻し、父親に電話してもらう。電話に出れば大丈夫。
すぐ近くで音がした。
玄関だ。
ダチは盛り塩の中から出てしまい、父親の元に行った。ドアを開けた時、悲鳴が聞こえた。
ダチの声だ。
慌てて塩を手に向かうと父親が真っ赤な顔をしてその場に立っていた。
「なにしとる。しっかりせんか!」
半ベソをかいていたダチは泣きながら立つと言った。
これまでのことを全部。
したら父親が言った。


「お前のダチを一人づつ…連れてくよ〜。」


嬉しそうに言い息子の首を思いっきりひねった。
血の泡を出しながら息子は生き絶え、父親は壁に頭を打ちつけ続け、血だらけになって絶命した。
残されたのは僕だけだ。

慌ててこの場から逃げ出した。
そしてこの街からも出て行った。
逃げたんだ。

これでもう大丈夫。
そう思うようになった。
それ以降不気味な目に合わないように怖いものは見ないようにしている。
でも時々思うんだ。

僕は大丈夫??