友達同士で出かけた旅行。
ちょっと大勢になっちゃったけど8人だ。
部屋は3つ取ってある。
角の部屋をメインに固めてもらった。
だけどね?受付の人がちょっとだけ不安そうな顔をしていたのを誰一人として気付いてるものはいなかった。それだけ喋って興奮していたのだ。
隣部屋だからいつでも遊びに行けるね〜なんて冗談も言っていたのだが、この後世にも恐ろしい体験をするなんて誰も思いもしなかった。



この日は夏ということもあり、打ち上げ花火が部屋からも眺めることもでき特等席だーって喜んでいる友人は皆お酒を手に酔っ払っていた。
まぁ、20歳も過ぎれば何も言われなくなるが、飲み過ぎないようにと出かけるときに散々言われていたのだ。だから私は飲むのを控えていた。
花火も終わりに近づいた頃、友達の一人が夏だからって怪談話をしようって言い出した。この手のは作り物が多いから本気にはとってないのだけれど、話を合わせないと酔ってる友達が絡みそうでやなのであいづちだけを取るようにした。
その話はこんなふうに始まった。



夏の夜、1組のカップルが花で有名な大きな公園に夜にやってきた。なぜ夜かっていうと…いちゃつくためらしい。人目をはばかり、たまたま夜の公園は人がいないとS N Sで知ったのだ。ものは試しだからと2人でやってきたが、書いてあった通りにいないことに安堵していちゃつこうとした。だけどさ、木々の中で隠れてしようとしたら誰かが通る足音が聞こえてきたそうだ。慌てて身なりを整えて何食わぬ顔で木陰から出てきたが、誰一人としていなかった。ただ生暖かい風と地面に転がる球のようなものがあったので、子供の忘れ物かと思い取りに向かったら、それは人の頭だったと分かり悲鳴を上げる情けない彼氏。しかし、もっと酷いのはその場に彼氏を置き去りにして逃げた彼女かも…。
彼女が翌日彼氏のところに行ったが、鍵がかかったままだった。合鍵を持っていたので部屋に入ると部屋に帰った感じは無く、彼がいつも使っていたカバンもなかった。直ぐにあの公園に向かったよ。不安だったから。そしたらさ、人混みがある箇所にあって警官が立って立ち入り禁止のテープを貼っていた。
まさかと思いつつ現場に行ったらビニールシートに隠した何かが地面に横たわっていた。
「す、すいません。何かあったんですか?」
「ああ、ちょっとした不可解な事件だから入ってこないでね?」
「そこには何があるんですか?もしかして男性が倒れてるとか?」
「ん?君、何で知ってるの?詳しいこと聞かせて欲しいからちょっと来てくれるかな?」
関わるのがやだったから「いえ、用がありますから帰ります。」と言ったら警官が腕を掴んだ。
「君はまだ来たばかりだよねここに。何で知ってるの?知り合い?顔見て確認してくれないかなぁ?あっ、でも怖いか。」
「私…の知り合いかもしれないから来ただけです。でもまだそうと決まったわけじゃないし、帰らせてください。」
「顔見て確認だけ頼むよ。まぁ、恐怖の顔してるからわかりづらいか?もしかして探してるの彼氏とか?」
観念した彼女は見てみると言っておまわりに連れてかれた。
ビニールシートに覆われた大きな塊。
盛り上がり方からして体をひねってるのか?
「気持ち、落ち着けて見てね。酷いから。吐くならあっちで吐いてね?じゃあめくるよ?」そう言ってビニールシートを少しめくった。
その顔を見た彼女は悲鳴を上げた。
そして知った顔だとわかると「知ってます。」とだけ言って吐きに行った。
少しして戻ってきた顔は青ざめ涙を流していた。
「な、何でこんな目に…。もしかしてアレを見たから?でも私は助かったのに…。何で?」
「アレって何のことかな?何を見たの?」
「アレは…人の頭だった。しかも笑ってたんだ。頭だけだったのにだよ?分からない。霊ってやつ?その時彼氏とバラバラになったからそれ以降会ってない。」
「彼氏をその場に置き去りにしたと言うわけですか。ちょっと酷いですねぇ?」
「だっ、だって怖かったんだもん。彼氏も悲鳴あげてて頼りなくて…逃げるしかなかった。あの場にいたらどうなっていたかわかんなかったんだもん。」
「で、その結果がこれですか?本当に見たんですか?それを。」
頷きながら携帯をいじる。
そして写真の中の一枚を刑事さんに見せた。それは黒い塊のようなものだった。
鑑識を呼び、携帯の写真の解析を依頼する。
すぐその場で解析が始まった。
パソコンでいろんな文字を入力していると画面にいくつもの画像が現れては重なっていった。そして、最後の一枚があの恐怖の一枚だ。
塊の大きさ、位置から大体の場所が特定された。
それがここだった。
遺体の場所だ。
彼女は悲鳴を上げてその場にくずおれた。
警官達もこれには驚いていた。
そして………。




「あーーーーー!!なんか怖いじゃん。聞いててこっちが怖くなるよ。」
その時窓ガラスのそばにいた友達の1人が真っ青な顔をしてあり得ないと震えだした。
そう、それは黒い塊が窓ガラスに映り込んでいたからだ。
隣にいた友達も何かに気づき、携帯で写真を撮る。
そして気になる場所を拡大して見てみると…目を大きく開き、引きつった顔をしながら他の子に見せた。
やはり見えた。
嘘じゃなかった。
じゃあ何?話をしてたから寄ってきたとか?
あり得ないよ。
マジ勘弁。
写真を撮った子は携帯から写真を消すが、まだ震えが止まらない。
私も怖かったが、再確認したらまだ写真が残っていた。消しても消しても消えない写真。
もう友達もどうしたらいいのかわからず携帯をその場に置いて離れた。
「どうしよう…。その携帯解約したら?で、新しいのにしてしまえば問題なくない?」
「ホントにそうかな。」
「じゃあ、どうすればいい?わかるの?アンタに。」
「それは… …分かんないけど。」
「じゃあ口を挟まないで!」
「う、うん。」そう言うしかなかった。現に分からなかったから。
その夜はみんな眠れなかった。
なんせ部屋の音がガタガタとうるさかったから。でもある部屋以外の場所に移動するとピタリと止んだ。
そう、それは写真を撮った部屋だ。
その部屋だけ避けると静かだった。
それでも二手に分かれるというのも怖くて一部屋に固まってその夜を過ごした。
翌朝すぐにみんなで問題の部屋に行き、必要なものだけ持って部屋を後にした。
他の部屋もそうした。
そしてチェックアウトの時にポツリと喋ったら受付の係員が真っ青になった。そしてカウンターを後にして何処かへ消えた。
代わりに来た係員が対応してくれたが、昨夜の部屋のことを話すと黙り込んで真っ青になっていた。どうやら震えているようだ。
「どうかしました?大丈夫ですか?私…何か変なこと言いましたか?」
「あっ、いえ…。」
「まぁ、昨夜あった事を言っただけですけどね。もしかして何か知って見えるとか?」
そう言われると黙り込んでしまう係員。
これはもう知っているとしか思えない。とはいえ言いたくないものを無理に話させるのも気持ちの良いものじゃない。
ただこれだけは言っておいた。
「あの部屋…使わない方がいいですよ?何かわかんないけど…。」それ以上は言えなかった。
だって写真に写っていたのがまさか9人だったなんて言えない。
顔半分だけが映り込んでいたのだ。
皆恐怖を思い出す。


そして旅は終わる。
あの旅館、あれからどうしただろうなぁ?
まさか…人、入れたりしてない…よね?
あれは絶対に人の首に違いない。



取り憑かれたらどうなるのか…。
それ以降、怪談話をするのはやめた。また怖い目にあいたくないから。