△男が、保育園の年長組の秋…
×男が、誕生。

△男の事が心配で…
4日めには、退院。


そして…

嬉しそうに、私の膝に腰かけていた△男をどかして…
私は、泣き出した×男に、授乳を始めたの。

△男は、
フラフラと私達のまわりを回っていたかと思うと…
そばにあったバスタオルを、頭からかぶってしまった。

授乳を終えて、
私が、バスタオルをどかすと…

△男は、静かに、泣いていた。

△男は、
すべて、悟ったんだと思った。

「オレの時代は、終わった」って(笑)


△男は、サポート役にまわった。

苦手な言語能力を駆使して…
「×ちゃんが…×ちゃんが…大変!」

急いで、見に行くと…

×男は、血だらけ…


アトピーの×男は、
はめていた、ガーゼのミトンを外して、
痒いほっぺを引っ掻いていたの。

その事件以来…
△男は、×男の事が心配で…

今でも…

△男にとって、×男は…
ず~っと、守るべき弟なの。


家事、育児、家業の手伝い…
手一杯の私を…
△男は、サポートしてくれた。

×男が外して投げ飛ばしたミトンを拾って、私に知らせてくれる。

オムツ替えを始めると…
サッと、新しいオムツを広げてくれる。

見よう見まねで、
乾いた洗濯物を畳んでくれる。


「ありがとう」という言葉を…

心から…
△男に、言う「場面」が、突然に増えた。


そして…

×男が、ヨチヨチ歩きを始めた、ある日、
3人で、歩いていると…

向こうから、車が…

車は、手前で止まろうとしていたし…
×男は、私の手の届く所で、ヨチヨチしていたから、
私が、そのまま歩き続けていると…

△男は、
×男の前に走り出て…

両手を大きく広げて、
×男を守ろうとしたの。

その光景を見た時…

ちょうどその頃…
クラスメートについて行けない△男の事で、日々、悩んでいたんだけど…

そんな些細な事は、
どうでもよく思えた。

△男には…
「心」がある。

「障害児」と呼ばれていても…
小さな弟を守ろうとする「心」がある。

その「心」を持っている人は…
もう「幸せ」のパスポートを持っている。

自閉症の△男は…
抱きしめられる事は、嫌い。

でも…

心の中で…

何度も、
君を、抱きしめた。









裕子