今日は母の日

母は…
鎌倉の大きなお屋敷に住む、典型的なお譲さんだった。

結婚し、私が生まれても…
母の心は、ずっと、その鎌倉の実家にあったような気がする。

母の住む世界に反発して、飛び出して三十年以上…
母が亡くなって十年以上が経つ。

母の住む世界で生きて行けるような教育は受けたが…
生きる逞しさに、私は、欠けていた。

「借金苦」「息子の障害」
けして逃げる事なく立ち向かって行ったが…
弱い体は、蝕まれて行った。

それでも…

いつも、母ではなく、子供たちの方を向いて生きてきた。

子供たちのためなら…
なんでも、がまんできた。

お金がないのも、楽しめた。
手作りの服を喜んでくれる娘…
一緒に、お菓子作りを楽しむ、自閉症の長男…
昆虫が好きな次男と一緒に、震えるほど嫌いだった蝉取りもした。

子供たちのためなら…
小心者だったのに、学校に乗り込むようにもなった。
反対に、誰に対しても…
腰を低く、頭を下げられるようになった。

子供たちのためなら…
厳しい母でもあった。
子供たちが小さい頃は…
「危険な事」「相手を傷つけるようなこと」をした時は…
自閉症の長男であっても、お尻を、思い切り叩いた。

「勉強しなさい!」
じゃなくて…
一緒に、勉強した。

子供たちのため…子供たちのため…

母と仲直りをしないまま…
母は、逝ってしまった。

そして…
命を削るようして、取り組んできた…
私の「子育て」は、もう、おしまい。

巣立った雛たちを…
けして、呼び戻そうとは、思わない。
「親孝行」も、望まない。
「恩」も、感じて欲しくない。

自分の未来だけをみて…
たくさんの「幸せ」を感じて生きて行って欲しい。


母の日に…
母を想う。
「ごめんなさい」
あの世に行ったら…
まず、謝らないとね。

母の日に…
母の私を思う。
けして後悔は、していない。
母として、生きてきたから…





裕子