「ぶどう社」のⅠさん、NHKのTさんについて書きたい。


今日は「ぶどう社」Ⅰさんについて…


「ぶどう社」は神田にある小さな出版社。

小さいけれど、歴史は古く、40年も前から…

「障害というものから見えてくる真実」

をテーマに、筋の通った本作りを続けている。

「寝たきり老人のいる国いない国」

そんな「ぶどう社」の本を、目にした人もいると思う。


息子の「自閉症」が発覚した24年前は…

「自閉症」関連の本は本当に少なく、ネットもなく…

途方にくれた私は「ぶどう社」の本を取り寄せて、くり返し読んだ。

…一冊の「本」に救われた…


昨年、夏、余命を体感するようになった私は…

断られる事を覚悟で、ぶどう社に原稿を送った。

「自閉症長男の療育記録及び、乳癌、家族の事」


一ケ月後…

Ⅰさんからメールが…

「本にしましょう!」


待ち合わせの喫茶店に現れた、担当編集者のⅠさんは…

我が人生の中で…

これまで会った誰とも似ていない…初めてのタイプ…

アラフォーだけど…貫禄があり、はたまた、少年のように可愛くもあり(女性です!)


「持ち込み原稿を本にしようと思う事は、99%ありません。でも…南さんの文章はいい!場面が心に浮かんでくるようで…」


ウ~ん、確か、褒められたのは、それが最初で最後だったかナ~?(笑)


400ページの原稿を半分に煮詰め…また200ページ書いて、半分に煮詰め…

打ち合わせの度、Ⅰさんは、書き進めるヒントをくれる。

そして…

書いた原稿をメールで送ると、Ⅰさんから返信がある。

「スミマセン、今日は一日中、外なので…明日中に読んで、感想をメールします」

翌日…

待てど暮らせど、Ⅰさんからの返信はない。

待ちくたびれて寝る。

翌朝、メールボックスを開くと…

Ⅰさんからの返信あり

…受信時刻23:59…(笑)


Ⅰさんは、一見遊び人風だけど…

「本作り」という仕事に対しては、とても、誠実!

「編集」に「心」がある。

だから…

「私は思いのたけを、思うがままに書けばいい…だって、Ⅰさんが編集してくれるから…」


それでも、終盤には、キッチリ176ページに編集された原稿を前に…

「Ⅰさん、この2行、どうしても入れたいんですけど…」

「ウ~~ん、じゃ~どこかで、2文字減らして!」

「2文字ですか…?」

「そう2文字」

喫茶店の片隅で…

「2文字」を連発しながら、うつむいて考え込む二人

不気味なオーラが、立ち上っていた事でしょうネ


「幸せは私の中にそしてあなたの中に」

10/31「おはよう日本」の中で「本」がアップになった時…

私は、Ⅰさんとの日々を思い出して、目頭が熱くなった。

同じ時、Ⅰさんも、同じ思いだったと知った。


「よい本ですネ!」

そんなふうに、声をかけていただく時がある。

「拙い本で…」

私は、そんな謙遜の言葉を口にする資格がない。

だって、この本は、私一人の力では、とても出来上がらなかった。

この本は「ぶどう社」の本であり、「Ⅰさん」の本でもあるから…


本の奥付の片隅に、小さく書かれた編集者Ⅰさんの名前…

やっぱり、大事なものは、表にでないのかナ~?



メモ裕子