でかでかと目立つ、書籍の新聞広告を見た。

「自閉症」の発症が、後天的な原因によるものだという説だ。

以前にも、この広告を見て、イヤ~な気分になったが…またか!


「小説」と書いてあるが、そのすぐ下の説明には、

「登場人物は実在し、書かれている内容は真実だ」とある。

それなら、これは、学会の論文としてのエヴィデンスを持った説なんだろうか?


「癌」「自閉症」「難病」それらは、はっきりとした「原因」さえ究明できれば、「完治」への道が開ける。

だから、たくさんの専門家が、私達の目には見えない所で、日々、研究を重ねている。


この本を読んでみる気にもなれない。

とても、そのような重みを持ったものには、思えないからだ。


「言論の自由」は、守られるべき、大切な権利だ。


でも「神戸殺傷事件」の本など…

抗う事のできない無辜の人々を傷つけるような事は

「言論の自由」ではなく「言論による暴力」ではないだろうか?


私は一人の自閉症児の母として…

この「新聞広告」に傷ついている。


「自閉症」というものについて、何も知らない人々の中の幾人かは

この「広告」を見て

「ふ~ん、自閉症って、お母さんの育て方が悪いからなるんだ~」

「自閉症だと凶悪事件を起こすんだ。コワ~イ!」

等と思うかもしれない。


60年代~70年代…

自閉症児の母達は、育てにくい我が子と格闘し、同時に「自閉症の原因は母親の育て方にある」という二重の責め苦と戦ってきた。


その説から、やっと、解放されたのに、また…?


「自閉症スペクトラム」の人が、犯罪を起こせば…

「自閉症だから…」

でも「健常者」が犯罪を起こしても…

「健常者だから…」

とは、書かれない。


「報道」「言論」の持つ影響力は、あなどれないと思う。



南裕子