真夜中1時…
遅い仕事を終え、自室で一人静かに、晩酌を楽しむ夫…
開いたドアの前を、黒い影が横切る。
落とした灯りに、影のシルエットが浮かび上がる。
逆立った髪、震える杖…
「おそろしい…振り向くなよ」
夫の願いもむなしく…
「あ、あしが痛いの~~」
晩酌は中断され…
ひたすら妖怪の足を揉む。
そして…妖怪にむかい素晴らしい訓示をたれるのだが…
「むなしい…この妖怪には通じていないらしい」
翌日…
妖怪のバカ息子が遊びに来た。
昨晩、虫の息だったはずの妖怪は…
御馳走を作り…ニコニコとしている。
「なんなんだ?ウ~ム これが妖怪と呼ばれる所以か…?」
夫は妖怪から身を守るすべを考える。
居留守を使う…でも…妖怪は、外から入って来るわけじゃない。
家に帰らない…でも…ここはオレのうちだからナ…
しかし…
あの妖怪は誰かに面差しが似ている…
「誰だろう?」
「まさか……」
裕子