手話学習者の方々の中には
‘表現はまあまあなのですが、読取りが難しくて’と
言われる方が少なくないですが
それはあまり正しい認識ではないかと思います。
読取り、と言っても
音声に翻訳して出す、という事ではなく
理解するという事の読取りというレベルでいえば
手話表現の上達の速度と
読取り、理解度の速度でいえば
ほぼ理解する速度の方が早いというのは
言語の習得過程では当然のことです。
言語の習得過程については
またの機会にさせて頂いて、
今日は読み取り通訳について少し。
手話通訳者は、手話をそのまま理解するだけではなく
そこから音声日本語に変換し実際に音声にします。
右脳で理解した手話を、左脳で言語化すると言われています。
そしてその作業は一瞬で行う必要があるので
かなり脳が疲労する訳ですが
手話通訳者の習性として
どうにか文章の体裁を整えようとします。
それはある意味、必要なことでもあるのです。
聞きやすい日本語の文章にするという事は
何よりも大切で
たとえば、いくら単語レベルで手話が分かっていても
文章にした時に
きちんとした文章になっていなければ
読み取り通訳としてはあまり評価をすることはできません。
ですから
手話通訳者は手話の単語レベルで声に出すことではなく
ある程度、文脈を読みながら、適切な単語を選び
最終的にまとまりの文章として、アウトプットするという過程になります。
この辺りは
基本的な所です。
ところが、そのなんとか辻褄をあわせようとすることには
注意しなければならない現場がいくつかあります。
たとえば・・・
司法通訳や病院など
話者が病気や、なんらかの事情で正常に話ができていない場合などです。
話が噛み合わない・・
ん?これは私の読み取りが間違っているのか?と
不安になりながらも
その噛み合わなさを伝えるのも
また手話通訳の仕事なのです。
そこの見極めは
本当に難しいです。
私の場合は、まだまだ未熟者ながら
わりとご本人に確認しながら、整理しながら
場合によっては
ドクターや、関係者の方々に手話通訳者として
伝わっていないのか懸念も伝えながら
伝わっているけれども
反応が違うところにいっている、
それは手話が通じていないからなのか
別の原因なのかは
私自身に判断しかねますが・・と
伝える事もあります。
何が正解なのか、どうすれば良かったのかが
ありのままを伝えることの難しさ
自信を100%持てない
そんな現場も時折あります。
手話通訳者として
自分は何ができるのか
何をしなければならないのか、
正解は一つではない、
これで良かったと終わり!ではなく
心の中に自問自答もありながら
でも前を向いて
また次の現場へと向かうのです・・・。