昨日のブログで

お別れしたろう高齢者の方々を思い出し

ノスタルジックに浸っています。

 

そういうことで

今日はとても魅力的だった

Oさんのことをお話ししたいと思います。

 

手話通訳者としてというより

手話サークルや

ろう協の行事等で一緒だった思い出です。

 

私が手話通訳になった時には

Oさんはすでに高齢者でしたが

風貌がダンディだった為か、手話が魅力的だからか

性格か、理由は一つではなかったと思いますが

とにかく、とても口が悪かったにも関わらず

(手話がというべきか・笑)

女性にもてる方でした。

 

もちろん、私からすれば

Oさんは完全におじいちゃんなので

男性として意識したことは

一度もなかったですが

色気はある方でした。

 

Oさんの奥様は猫好きのとても大人しい方で

ろう協の集まりなどにはあまり参加されず

Oさんは行事等には一人で参加されていて

いつもまわりには取り巻きのようなおばさま方がいて

楽しいにぎやかな時間が流れていました。

 

Oさんに対する面白い見方のエピソードがあります。

ある時、ろう協主催の一泊旅行に参加しました。

Oさんや、ろう協の役員を中心に老人部の面々、

あの当時は活発にそういう催しがあった時期でした。

 

山梨県の勝沼でしたね、宿泊先のホテルのロビーで

参加者がそれぞれの場所で待っていたとき

 

Oさんの後輩の当時75歳くらいのKさんが

(Kさんも楽しい、かわいいおじいちゃんでした)

 

私に真顔で

‘新子!いいか、Oには気を付けろ!

 Oは女たらしだから、危ない、気を付けろ!’とか言うんです。

 

えっ?どうしたKさん

30代の私が80代のOさんに

惚れちゃうとか思っている?

襲われるとでも言うんか~い?と

心の中で、Kさんのその言葉に少し笑ってしまったのでした。

 

実際にOさんはとにかく口は悪いですが

いやらしいことをするとか、タチの悪い人ではありませんでした。

でも、どうもKさんには

若いころのイケイケの頃?の印象があるのか

それとも本当はそうなのか、

わかりませんが(笑)

KさんにはモテモテのOさんへのジェラシーも混ざっていたのか

また本当に私を心配してくれたのか

とにかく、Oさんは女に手が早いと思っていたようです。

 

 

でも実は私にはOさんは

周りがいうほど女に手が早いとか

変なことをするような人とは思えませんでしたし、

 

実際におばさま方からの人気も

Oさんは口でけっこうサディスティックなことをいうと

おばさま方が勝手にもりあがるというか

ファンみたいな雰囲気で

実際に不適切な関係になったということはないようでした。

 

せまい世界ですので

ほかのろう者で

実は××さんと△△さんが不倫関係でねぇなどと

えげつない話はなかったわけではないですが

 

Oさんはモテモテで

いつもは奥様のことも

周りには‘うちのブス!’とかひどいことを言っていましたが

なんかそれがただの照れ隠しのようにも

思えていました。

 

 

そして、数年後に

私のその感じ方は間違っていないと

わかりました。

 

Oさんの手話通訳に行ったときのことです。

終わって帰ろうとしたら

Oさんが

‘新子、ちょっと待って

    悪いけど、写真を撮らせてくれ’

と、言って

ポライドカメラみたいなのを

カバンから取り出したのです。

 

えっ?何?どうしてかと

伺ったら

 

奥様が最近、認知症みたいになってしまって

色々な人の名前を忘れてしまう

新子のことも話して、うんうんというのに

またすぐ忘れてしまう

だから写真をとって、名前を忘れないようにしたいと

必死に話されるのです。

 

話しぶりから

奥様の認知症の進行をなんとかとめたい

愛情がすごくすごく伝わってきて

とても切なくなりました。

 

やっぱりOさんは

とても奥様のことを

誰よりも愛していらしている。

そう思いました。

 

いつもはべらんめぇ調の手話が

元気なく

悲しげでした。

 

それから

1年後くらいに奥様が他界されて

Oさんは一人暮らしになられて

お身体の調子もあまりよくなかったようで

ろう協の集まりにも参加されることがなくなりました。

 

奥様がいらっしゃらないことで

生きる気力がなくなってしまわれたのかもしれません。

 

その後、Oさんは施設に入所されて

滅多にお会いすることができなくなりました。

ようやく今度、施設に遊びに行こうと

取り巻きのひとりだったおばさまと話をしていた矢先に

旅立たれてしまいました。

 

とても悲しいけれど

きっと天国で大好きな奥様と一緒になれて

喜んでいらっしゃるような気もします。