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神戸RANDOM句会

シニアの俳句仲間の吟行・句会、俳句紀行、句集などを記録する。

タイトルを付けて20句まとめるというスタイルで、先に「私の40句」-「蝶と遊ぶ」(2017年)、「蜘蛛の囲」(2019年)-を掲載させていただきました。その後、このスタイルで「街に咲く花」(2020年)、「虹」(2021年) を詠み、20句シリーズの句集にしました。

コロナ禍が続きますが、八十姉は元気に俳句と遊んでいます。

 

 

悠久の空たまゆらの虹掲ぐ

病む国へ神慮の虹と思ひけり

夕虹や仕掛け絵本のやうな空

警報の解けたる街に二重虹

豪雨止み安堵の街を包む虹

被災地のあたりか虹の片足は

子午線と交差してゐる二重虹

虹の輪を水平に行く機影かな

あの世との往き来は自在虹の橋

叡子師と椿子渡る虹の橋

 

虹にさへ涙腺緩む戦中派

二重虹奇跡信じて合掌す

昼と夜のあはひを虹のグラデーション

虹の色こぼれてハンディファンの色

お隣も虹を仰ぎてゐるらしく

虹消えて街の騒音立ち上がる

虹消えて地表に増えてゆく灯

二重虹見し幸せを写メールに

虹消えて夕べの風の身ほとりに

虹消えて戻る疫の世夕支度

 

神戸の東遊園地に

虹の足とは不確かに美しき という後藤比奈夫の句碑がある。神戸市役所に用事があり、句碑まで足を延ばした。今は亡き花時計の専門家矢木勉氏が建立に関られたと聞いていた。

句碑を問うて間もなく幸運にも虹に出会えた。駅近の我が家は近くにマンションが立ち並び空が狭く、月の出も虹も見えにくい状況の中で。私の心や身体がふっと軽くなるひとときだった。(2021)

 

 

ふらここへながみひなげし飛び越えて

時計草へ風の運んでゐる時報

縷紅草絡む垣根のうらおもて

あぶら虫薔薇の蕾の痒さうな

ぽたぽたと凌霄花の朱に染まる庭

よぢのぼる凌霄花の持つ視覚かな

かんばせを市民花壇に黄蜀葵

黄蜀葵夢もうつつも時の間に

蛇瓜に良き花言葉朝涼し

蛇瓜の赤きとぐろに夏の月

 

箒草に雨しぽしぽと降る日かな

ふところにほのとくれなゐ箒草

人工衛星観測時間女王花

露草の花のマジック朝の庭

露草のπのかたちの金の蕊

咲き終へて再び拝む露草に

橡の実の落ちて緩びし亀裂かな

橡の実のしかめ面して石の上

鴇色に染まる決意の酔芙蓉

白木槿たたむ落花もつつましく

 

天気がよく気分の良い日は短い散歩をする。近くに公園があり季節ごとの花や草木が楽しめる。嵐の翌日、橡の木の下で思いがけなく拾った橡の実。ハレハレ葉っぱの落葉を拾って来て土の上に置いていたら、葉っぱを縁取るように芽と根が出て来て今は鉢の中で青々と茂っている。

       

『植物は知性を持っている』という本を読んで以来、植物は『動かない』『感覚を持たない』というレッテルを外して植物と付き合っている。(2020)

 

 

蜘蛛の囲にじたばたと音動く闇

雁字搦めに息の根止める蜘蛛の糸

腸啜る蜘蛛の表情見えずとも

鮮やかな球団カラー黄金蜘蛛

黄金蜘蛛ソックスも又縞の柄

一つ囲に二匹居るはず蜘蛛見えず

振動にすぐ身構へて黄金蜘蛛

蜘蛛の囲に迫る殺気のひたひたと

獲物抱へラガーの様に走る蜘蛛

蜘蛛ジャンプきらきら光る命綱

 

逆さまに宙に浮く蜘蛛昼の月

風の日の蜘蛛己が囲に張り付きて

雨粒が描き出したる蜘蛛の網

雨粒の重さに弛む蜘蛛の糸

造化とは雨を宿せる蜘蛛の網

蜘蛛の囲に白き花びら二三片

蜘蛛の囲にみどりの翅の遺りをり

蜘蛛身軽網一枚に寝起きして

網はパオ蜘蛛の暮しの遊牧めく

蜘蛛の囲の跡形もなく消えてをり

 

 

跨線橋渡り切ったる春の蝶

中空にジグザグとある蝶の道

蝶飛べり空の起伏を楽しみて

青空に蝶の軌跡の点と線

飛ぶことに倦めば吹かれて風の蝶

蝶時に鳥より速き急降下

草原に沈みて長き蝶の時

帆のやうに翅傾けて風の蝶

対馬丸沈みし海に蝶放つ

なんじゃもんじゃの花に番の黒揚羽

 

麝香揚羽世界遺産の二の丸に

目の前を泰然とゆく夏の蝶

影先に着地してをり夏の蝶

汝の幼虫吾の油点草食ひ尽くす

食草に仮寝の揚羽星の声

胴曲げて曲げて産卵揚羽蝶

秋蝶の翅の蜆の欠けてをり

秋蝶を空の深井に見失ふ

冬の蝶命ぬくめる石の上

扁平に命たたみて蝶凍つる

 

写真:tukihi,タイトル:mimizu+Henri Rousseau(1844-1910) (2022年2月)