続き...
騎士の訓練と従者の仕事が始まって少し経った頃...
今日は従者の仕事で、午後の昼下がりの庭園...
「ねぇねぇ...」
「なんです?ロチュス様」
おやつの時間、今日はルイボスティーをカップに注ぎながら、やけに声を潜めるロチュス様に尋ねる。
「いつものおやつってどこで買ってるの?」
「私やレファンさんが作っていますよ。」
テーブルの上のロチュス様が突っついているシフォンケーキを見ながら答える。
「...クッキーも?」
「それは市販ですが。」
「どこで買ってるのかなぁ~って...」
ロチュス様の聞き方がまどろっこしい...。
レファンさんからロチュス様のわがままはなるべく控えるようにと言われてから、メイドさんの服を着たい・遊びに行きたい・あれしたい・これしたい...とロチュス様が言ってもそつなくかわしているため、回りくどいやり方をとっているらしい...。正直、遊びたい年ごろだし賛成したいのだが、お姫様となるとそうホイホイと軽々しく連れて歩けまい...。危険もあるだろうし...。
「メイドさんや私が買って来ていますが、それがどうかしましたか?」
「ん~と野外活動みたいな?...んくっ...街に行きたいなぁ~って。」
お皿の上の最後のシフォンケーキを食べながら話す。
「ダメですよ?ロチュス様は一国のお姫様なのですから何かあっては困りますし、それに今ではなくともお出かけすることもありますでしょう?」
「私は自由に街を歩いてみたいのよ~!」
と足をバタバタさせる。
「...申し訳ありませんが、できかねます。」
「むーー、サラのいじわる~」
ロチュス様はテーブルの上に両手を組んでその上に顎を載せ、頬を膨らませている。
__
おやつの時間がそろそろ終わるころ、廊下。
「...では、お部屋でお待ちくださっている間、この間のプリントを出していてくださいね。わたしは片付けてすぐに参りますので」
食べ終わったお皿やカップを乗せたワゴンを持ち話す。
「ええ、わかったわ。」
ガチャ...
ロチュス様が自室に入り、私は従者用キッチンへ...。
食べ終えたお皿やカップを洗う...
わかる...分かるんだけどなぁ~、その気持ち。
遊びに行きたいよね~。お姫様だからってなんで?って思うんだろうな。
私に出来る事があれば、出来るだけやらせてあげよう...。
さてと、行きますか。
キッチンから出て、ロチュス様の自室へ。
コンコンコン...ガチャ...
「失礼します。」
お部屋に入り、寝室兼勉強部屋...
...
ロチュス様のお姿が見えない。
お手洗いかな?
...
5分経つが戻ってこない。
「ロチュス様?」
お手洗いの扉を見ると、使用中ではない。
一応扉を開け、お風呂の中も見たが居ない。
ん?どこ行った?
急いで部屋から出て、当たりを探す。
レファンさん!...は外出中だっ!しかも遠出らしい...何で今日に限って!
...
一応思念を飛ばしてみたが、出ない。圏外なのか?
4階・3階・2階・1階...
いない...。メイドさんに聞いても見かけていないらしいし。
まさか...街?
さっき話していたロチュス様の顔が浮かぶ...。
嘘だぁ~~~~!!
自室に戻って従者とバレないように、このお城に来た服に着替え、急いで街へ!
…久々に賑わう噴水広場に来た。
えっと、ロチュス様は確かお菓子のことを話してたな。
前にセリーヌさん達と行ったスイーツ屋スゥクレへ行ってみる。
外から見たが、小さな子どもは見当たらない。
中に入ってくまなく探したが居ない。
雑貨屋さんも覗いたが居ない…。
あと行きそうな所は…おもちゃ屋さんかな。
宿屋がある通路のおもちゃ屋さんを覗いてみるとロチュス様ぐらいの子ども達が相変わらず賑わっていたが、それらしき子はいなかった…。
一応それぞれの店員さんに聞いたが、色んな子どもが出入りして分からないとのこと。
細い通路の小さなお店を覗いてみても居ない。
「あら、いらっしゃいませ」
店員さんが声をかけてきた。
「あっ…すみません、人を探していて…。ブロンドの髪で肩まである女の子は見かけませんでしたか?」
「…ん〜そうね、見かけて無いと思うわ。女の子かどうかは分からないけど、さっき茶色の上着でフードの被った子どもはいたけども…。」
「そうでしたか、ありがとうございます。」
居ないか…。どうしたものか。
すっかり夕方になり、辺りがオレンジ色に染まる。
急がなくちゃ!
ロチュス様が行きそうな場所を探して、一刻も早く!
通路には、行き交う人々で少し見えづらい。
子ども、子ども…。
人々をかき分けながら抜けた先は、貿易をしている屋台だった…。
時刻は17時30分。
もうそろそろ帰って夕食の準備をしなくては…。
はぁ〜っ…、ロチュス様〜。
「…ずいぶんとお疲れのご様子ですね。」
顔を上げると、そこにはロチュス様の従者になる前、どうしようかと悩んでいた時意味深な言葉を残していった旅の商人…えっと…
「えっと…、どなたでしたっけ?悩んでいた時にお会いした事は覚えているのですが…」
「僕は、ユニヴェールです、旅の商人の。」
「ああ、ユニヴェールさん、お久しぶりです。」
「なにやらお忙しいようで…。お探しの人はこちらですか?」
と、大きなポンチョをめくるとユニヴェールさんの背中から、ベージュのポンチョを羽織ったロチュス様がひょこっと出てきた。
「…っ!ロチュス様っ!?」
「サラ、ごめんなさい。」
「ああ、ロチュス様!よかった、本当に良かった…。」
思わず抱きしめていた。
「では、僕はこれで。」
「ユニヴェールさん、ありがとうこざいます。」
「僕は何もしてませんよ。」
そう言ってスゥ〜とユニヴェールさんは去ってというか影の中に消えていった。
「どれだけ心配したことか〜。どちらにいらっしゃったのです?」
「色んなお店を見ていたの…。少し見て、帰るつもりだったのだけど、迷ってしまって…。本当にごめんなさい。」
「もう、今度からは一人で出歩かないでくださいね?…早く帰って夕食にしましょう。」
「ええ…分かったわ。ねぇ…サラ。」
「はい?」
「…なんでもないわ、帰りましょう。」
ロチュス様と手を繋いでお城に戻り、いつもの日常に戻る。
続く…