Ritaのブログ

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ブログ小説

Rita ブログ小説  ~この作品はフィクションです~                           
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 ※小説の内容が複雑になる場合が多々御座います。

  不快に思われる方は、速やかに御退室願います。                                     

                                                                   

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「抱くとかそんな言い方はよしてくれよ」

「あの時の自分を見たか?俺はお前程じゃないが、なかなかのモンだったぜ・・・」

「やめてくれないか」

「あぁすまねえな。だが、俺はあの時本気でお前を抱きたいと思ったんだよ。咄嗟のことだったが上手く言えねえけど、例えばお前が女を抱きたいと思うのと同じような感覚なんじゃねえのか?」

「そこのウォッカを取ってくれ」

「飲み過ぎじゃねえのか」

「お前程じゃないさ」

「なぁお前、少しはゆっくりしていくんだろ?」

「ついでにライターも取ってくれ。お前も吸うだろ」

「ほらよ。酒と煙草ならいくらでもあるんだ」

と言って男はウォッカの瓶と煙草を顎でしゃくった。

「お前・・・近づき過ぎだよ」


「僕には難しすぎる」

「何もそんな細かく考えることはねえ。神経がピリピリして堪らねえ」

「もう一杯くれないか」

「フン、急いでる奴がよ、こんなとこで酔い潰れちまったら俺ぁ何するか分からねえぜ?」

「何もしないさ」

「どうしてそんなことが言える?」

「お前はいい奴だからな」

「そう簡単に人を信用するんじゃねえよ」

「でも今も僕は無事にこうしてここに居る」

「その後の保障はあるとは限らねえぜ」

「お前は嫌がる奴を無理矢理に押さえ付けたりはしなかった」

「さっきはしたさ」

「僕が男性とは関係を持たないということを知らなかったからだ」

「そうかな」

「そうだよ」

「同意が必要か?」

「・・・必要だな」

「なるほど、俺はお前を抱けねえってことか」



「まあな」

「お前の探してるヤツって一体何物なんだ?」

ノアは煙草の火を消しながら「こいつも少し貰うよ」と言ってガラステーブルの前に腰を下ろし、綺麗な方のグラスを選んでその中に少しだけウォッカを注ぎ込んだ。
そして一気に胃袋に流し込むと「僕は普通を探しているんだ」と言った。
そして「僕は白痴だ」と言って男のほうに向いた。
男は特別興味も無さそうに「そうか」と言ってウォッカに目をやりガラステーブルのところまでやって来た。

「こっちが聞きたいね」

と言って残りのウォッカを瓶ごと一息に飲み干して、更にまだ開けていないもう一本の瓶を開けたと同時に浴びるように喉の奥へと流し込んでいった。

「そんなもん俺が知るか」

「こいつは厄介だからな」

「何でそんなもんを知りたがる?そいつに答えなんかないんじゃねえのか?」

「何にでも答えはあるさ、俺は決めたんだ。諦めたりはしない。婆さんも言ってた、諦めたら何もかもおしまいだってね。僕はそいつの答えを見付け出すまで方々を旅して回るのさ」

「見付かりゃしないよ、そいつは抽象的な言葉だぜ。誤魔化してんのさ」

「誤魔化し?」

「そうじゃねえのか?良いも悪いも分からねえから相手や自分の何かを守るためにそんな言い回しをしてんだよ」

「普通ってのはどっちとも言えないってことなのか?」

「フーッそうじゃねえのか?俺にはそう思えて仕方ねえかな。考えても見ろよ、俺を見たって分かるじゃねえか?お前は俺をただの男だと思った。だが、そうじゃない。俺は男を愛する。でもお前は俺がそういう奴だとは思わなかった。何故かって?俺はごく普通に装ってるからだ。俺は男だけど女は抱けねえ」

ドアノブに手を掛けると、少しだけドアが開いた。

「おい、鍵が開いてるぞ。煙草を貰いに来たんだ」

と言いながらリビングの入り口まで歩いて行くと、ベッドの上に男はポツンと腰を下ろしてい
た。

聞き慣れない足音だったのだろう。

「お前じゃねえかと思ったよ」

と男は僕を見た時のままの表情で目線も変えず小さな声で呟いた。

「なぁ、煙草を貰いに来たんだ」

男は一瞬パッと喜んだが直ぐに力無く顎でクローゼットのほうを指した。

「お前も吸うか?」

僕はクローゼットから取り出した一箱から一本を抜き取り、火を点けようとその先端に火をあてたまま軽めに吸い込んでみた。
暫く振りのニコチンが肺に達する感覚をたっぷりと味わうと、直ぐに自分は以前のヘビースモーカーに戻っていくと確信した。
今度は更に深めに吸い込んでからその煙草を男に差し出した。
男は黙ってそれを受け取ると、僕以上に深めに吸い込んだ。

僕は男の脇に腰を下ろすと新たにもう一本の煙草に火を点けた。
二人は暫くの間黙って煙草を吸い続けていた。

「なぁ、お前。急ぐんだろ?」

男は俯いたまま火を消しながら僕に聞いてきた。
「おい・・・泣いてんのか?」

男はさめざめと涙を流していた。
ノアは脱いだ衣服を掴み捩れた首のタオルを解くと自分の腰に巻き付けて男の脇を通り抜け、そのままリビングへと戻って行った。
急いで着替えを済ませると直ぐに男が部屋に入って来た。
ノアが見ると諦めたように「行っちまうのか?」と力無く問い掛けた。

「当然だろ?自分の身は自分で守らないとな。お前に世話になったことは恩にきるけど、それ以外のことは・・・」

「何だよ?」

「分かってて聞く奴だな、僕はもう行くよ」

「俺も行きてぇ」

「冗談じゃないよ、危ない奴だな」

「俺は何も怖くねえぞ?」

「お前が一番危険なんだよ。お前なんかと一緒にいたら今に隙を見て好きなように・・・」

「なあ・・この辺りは危ねえぞ、俺みたいな奴がウヨウヨいるんだ」

「ここは男色の溜り場か?」

「お前もそうだと思ったんだよ、男一人でブラつきやがって。俺はてっきり・・・」

ノアは首を横に振り「じゃあな」と言って出た行った。

が、しかし男のことが少し気掛かりになっていた。

〈 あいつ、悪い奴じゃなさそうだけど僕とは世界が違う。しかし初対面の空きっ腹の僕なんかに残りのチーズを分けてくれたりして・・何だかんだ言ってたけど、自分のベッドで寝てた僕を朝まで起こさずに地べたに転がって寝てた・・・あいつは襲って来なかったぞ。でもあの野郎!!僕の下半身ばかりを弄りまわしやがって・・・だけど、結局は何事も起こらなかったじゃないか。・・・そういえば何故僕はあの時、差し出された煙草を断ったりしたんだろうか?本当は吸いたくて堪らなかったはずなのに・・・今度、もし誰かが僕の目の前で煙草を差し出したとしたならば、例え相手が誰であろうと僕はそいつに手を伸ばしているに違いないであろう。そうだ、僕はもう一度だけ戻ってあいつの様子を見たら煙草を貰い、礼を言ってからまたここに来ればいいんじゃないのか。そうだ、そうしよう。老婆の時の様に後悔はしたくないからな 〉

ノアは踵を返し雑居ビルへと戻り、急ぐように三階まで駆け上って行った。

通路の奥まで来ると僕は息を弾ませたまま入り口のドアをノックした。

この時の行動と考え・・僕は今になって思えばこんな行動をしたのも、ただ自分自身が寂しかっただけだったからだと思う・・・






「僕・・・シャワーを浴びたいんだけど、その馬鹿げた手をどうにかしてくれないか」

やっとのことで言葉を発すると男は、

「その前にコイツをどうにかしたほうがいいんじゃねえのか?」

とノアのそれを力強く握り締めた。

「僕は、違うから」

「だろうな、だがコイツはそうじゃねえらしいぜ」

「どけよ」

「フン・・コイツに聞いたらどうなんだ?」

「お前・・僕が不利なの分かってて・・言ってんのか?」

「確かにこの状況じゃな。なぁ、怖がることはねえぜ」

「分かるだろ?僕、そんな気ないんだ。馬鹿にするなよ・・」

「俺が馬鹿にしてるように見えるか?俺、女は知らねえんだ」

「その手を離せよ、お前も男なら分かるだろ?・・コレがどういう意味なのか」

男はノアのそれを一瞥し、

「心と体は違いますなんて言うんじゃねえだろうな、俺には分からねえな。心は体の一部なんじゃねえのか?」

と呟いた。

「どけよ」

「無理だ」

「後が酷いぞ・・」

「かまうか」

「・・・頼むから僕から手を離せよ」

ノアは悲願していた。

男は何も答えなかった。

ノアはついに苛ついて、大声で怒鳴りつけた。

「聞こえただろ?今すぐ僕からどけよ!!」

バスルーム全体に響き渡ったノアのその声に、男はサッと彼から手を離し少しばかり後ずさりをしながら小さく震え俯いた。

僕はそんな男の様子に不思議なものを覚え、そして少しの哀れみを感じた。
ノアはハッとして自分の物に目をやり、驚きを隠せなかった。

〈畜生・・何だってこんな時に・・・〉

男はフンと鼻を鳴らすと、ノアの首の掛けたタオルを捻り、自分の右手と一つにしてノアの動きを封じた。

男の右手はノアのそれにそっと触れていた。

ノアは男の近すぎる顔に向かって

「お前・・・そうなのか?」

と言うのが精一杯だった。

「おい、お前、タオル持って行けよ。その辺濡らすんじゃねえぞ、なぁ」

ノアが戻って来なかったので、

「全くしょうがねえなぁ・・」

とブツブツ言いながら男はクローゼットの中からタオルを引っ掴むと、それを首に引っ掛けてバスルームへと向かった。

「おい、お前タオル忘れてるじゃねえか」

と言いバスルームのドアを勢い任せに引き開けた。

ノアは素っ裸だった。
形良く整ったバランスの良い肉体と剥き出しになったノアの下半身が今、男の目の前にあった。

ほんの一瞬だったが、バスルームの中に妙な空気が流れた。

ノアは「悪いな」と言って男の首にあったタオルに目をやると、男はそのままタオルの両端を片方ずつ掴み上げ自分の首から脱ぐように外すと、その輪をノアの首に掛けグッと引き寄せて来た。
ノアは暫く目を閉じてからゆっくりと頭を持ち上げ、ベッドから手を伸ばしてガラステーブルの上のグラスを選んでウォッカを注ぎ込むと、それを一気に疲れた体内へと流し込んだ。
喉の奥から熱く太い息を吐き出しもう一度ウォッカをグラスに注ぎ込むと、先程と同じようにまた一気に飲み干していった。
疲れた体と急激なウォッカの熱で直ぐに気怠くなってきたノアは、ベッドの上に仰向けになると吸い込まれるように深い眠りに落ちていった。

バタン、という音がして目を覚ましたノアは、一瞬「ん?」と思ったが、直ぐにここが何処なのか思い出すことが出来た。

「お前は相当なもんだよ」

ノアはゆっくりと体を起こしながら浮腫んだ瞼を男のほうに向け、

「何が?」

と言葉を発した。

すると男は呆れて、

「お前、寝すぎでよ、俺ぁ地べたに寝転がって一夜を明かしたんだぜ。全く酷いもんだよ、お前の寝相の悪さって奴はよ。なぁ、俺がシャワーを浴びて戻ってみりゃあベッドの上のもんがあちこちに飛び散らかってやがる・・・せめてもと毛布を一枚引っ張ろうとした途端に俺の腹に蹴り入れてきやがってよ。夜中じゅうは何だか魘されてるみてえでうるせぇし、なぁ、どけよ、俺は眠るんだ。お前、何ならシャワーでも浴びてこいよ。なぁ邪魔するんじゃねえぞ、俺は眠いんだ」

と溜め込んでいた言葉を一息に吐いてきた。

「シャワーあんのか?」

「フーッ出て左だ、そこのタオル持って行けよ」

「・・・ありがとう」

そう言うと、ノアは部屋を出て行った。


「僕、腹が減ってるんだ。何か食い物が欲しいんだけど近くにやってる店無さそうだし、金はあんまり無いけど・・・食べた分はちゃんと払うからさ、何か少し分けてくれないかな」

「金だって?」

男は言うと、銜え煙草のままクローゼットの脇にある白い小さな冷蔵庫の扉を開けた。

「こいつで我慢してくれ」

と、一塊のモントレージャックをノアに向けてほおり投げた。

「ありがとう、助かるよ。それで幾ら払えばいいかな」

ノアはズボンのポケットの中に手を入れ何枚か金を掴んだ。
男はそれを一瞥すると、

「黙って食えよ、それと・・・その手を出したらどうなんだ」

と哀しげに言うのでノアは

「悪いな」

と答え握っていた金から手を離すと、ポケットからそっと手を出した。

男はノアにウォッカを勧めると、短くなった煙草の火を無造作に揉み消してリビングから出て行った。

ドッと疲労が襲って来た。

ノアはモントレージャックを食べ終えると、遠慮無しに散らかったベッドの上の物を脇へ押しやり、その中からクッションになりそうなものを掴み出してそれを枕にし、広くなったベッドの上に倒れ込むと声を漏らして十分な伸びをした。